2017年9月23日土曜日
Google Glassの指示通りに動く人
「労働者の流動性確保が必要」
竹中某などはその先鋒だと思うが、個人的には反対だ。正確に言うなら、言いたいことは分かるが無理筋だと思う。
そう思う理由には、二つの要素がある。一つは、新しい職業には新しい職能が必要だ。そのためには学習が必要であり、新しい職業は古い職業より高度な職能が必要な場合が多いだろう、ということ。
例えばフロアスタッフで考えてみる。昔は手書きの伝票と現金のレジしかなかったが、今なら注文端末の操作は必須といって良いだろう。増えていく決済手段への対応も、そのトラブル処理も必要だ。無線LANを整備しチェックイン機能を理解し、検索エンジン対応やポイントカードやぐるなびクーポンやtwitterでのつぶやきも必要、クレーム処理を間違えると昔よりペナルティが酷いなど、仕事をする上での必要な知識の量はどんどん増えている。
もう一つは、流動性を求めるということはイコール自分のところでじっくり教育するつもりはない、ということであるからだ。日本の終身雇用は、そういった職業訓練をじっくり出来る利点もあったわけだが、流動性が高ければ教育のモチベーションは上がらない。
完全自由主義なら、これは自助努力で何とかしろというだけになる。すると、その教育は、(意欲だけではなく経済的な)余裕がある者だけの特権になり、格差は広がり、貧困層は増えていく一方になる。時代に合わせた職能を得るための(無償での、ないしは有給での)教育期間が得られないからだ。
現在ハローワークの連携などで行われている職業訓練校が、これの隙間を埋めていることになっているはずだが、そこでの脱落者も多いし、そもそも枠は狭い。求められるスキルが高くなれば落伍者が増えるのは当然のことだ。つまり、職業訓練校を強化する(期間を延ばす、対象職種を広げる、無償化など)ことに一定の意義はあるものの、それえ解決できるわけではない。
そうすると、例えば昔ならフロアスタッフを何とかできる程度の知識レベルの人は、今では知識不足で出来ないわけだ。人の知識レベルはそう簡単には上がらないから、最低限の仕事でもできない、という人の割合が増え、平均賃金は下がり、生活保護も増えていってしまう。
これらの解決策として考えられるのは、「人でなければできないが、その能力の上限に歯止めがある」という職業を意図的に増やすことだ。単純に言うなら、機械の支援により人が動く仕事である。主には対面業務がそうだが、実務であっても当てはまる。倉庫のピックアップなどはそれだろう。
単純化して言えば、「ボットの指示通りに喋る人」「Google Glassの指示通りに動く人」だ。そしてそういった職業を、ある程度の比率や数で強制する。それも、大企業になるほど強制力を強くする。
例えばとび職。ロボットがとび職を上回る運動能力を得られるようになる遠未来であっても、一定の人数を雇用することを義務付ける。もちろんそのとび職はGoogle Glassを常に装着しており、その指示通りに動く。むしろ、それを使わずに独自の判断をすると叱られたり、監督が注意を受けたりする。例えば銀行窓口。手元のボットがワイヤレスイヤホンで指示をした通りに喋らないと減点される。もちろん一字一句までは気にされないが、間違いを喋ると訂正が入ったりする。
それでも最低限の知識は必要だが、これなら人の労働需要は確保できる。但し最低賃金は職業別に何らかの保障が必要である。本来なら全部機械にすることでもっと安くできるところを無理矢理高くすることになるため、企業にとっては負担になる。不正が横行しないように監視も必要になる。
こういった「保護された労働者」の割合は、障害者雇用義務などと同様な位置付けとなる。障害者の割合はそれほど急激に増えないだろうが、こちらの方は急激に増やしてやる必要がある。全従業員の何10%がこれ、などとなる可能性も、充分に考えられる。
そして、Google Glassに従っているだけでよい、というところまでAIを進化させるのにはまだ時間が掛かる。暫くの間は苦境は続くだろう。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
注目の投稿:
ASIの発達と決定論
世の中の話題はAGIを通り過ぎてASIに進んでいる。AGIがGeneral IntelligenceならASIはSuper Intelligence、即ち人類を遥かに超えた知性ということらしい。 2045年にシンギュラリティが起きると予測したのは、人工知能研究の世界的権威であ...

人気の投稿:
-
「生成AIはミーハーである」の回でも少し触れたのだが、生成AIの回答は一次的には誤っていることが多い。それを指摘してAIが回答を修正していく様を見て楽しむ、というのが最近のマイブームだ。 どういう指摘をしているのか、と自己分析してみると、興味深いことに陰謀論者との議論とあま...
-
日本共産党が消費税減税案についてのサンデーモーニングの批判的なコメント(財源を示せ)に対し「財源を示した上で提言している」という反論をしている。そこで同じく、Grok3に計算してもらった。 日本共産党の提言は、2025年4月16日のものの他、幾つか出ている。そのおおよその方向性...
-
以前チラっと書いた、表題の分析の結果を披露しておく。 まず全体像について生成AIと議論した。結果として、その大まかなシナリオとは、 いわゆる減反政策によって、市場におけるゆとり分が減り、ここ数年は需給バランスがタイトになっていた。 農水省は減反政策は止めたと言っているが...
-
免震技術の一つに、「エア免震」というものがある。地震が発生すると、ホバークラフトのように地面から浮き上がる、というものだ。 http://www.airdanshin.jp/ なかなかよいと思うが、普段は浮いていないわけだから、例えば故障していないかどうか確認す...
-
近年の世界的な右傾化、自国第一主義化について、その原因を生成AIと討論しながら考えた結果、そういう結論に達した、というお話。 まずトランプが未だに支持されている理由について議論したのだが、その理由はアメリカ白人低学歴層の貧困化だという。この白人貧困層は、人数的には数千万人と規...
-
色々と生成AIと議論しているが、それに関して最近気付いたことがある。 最初の応答については、あまり深く考えずに世間の評判を基に答えるのだが、それには往々にしてウソ大げさが混じっている。それに対して指摘をし、更にそれを繰り返すことによって、だんだんとそのウソ大げさを理解し、マト...
-
https://jp.techcrunch.com/2018/03/17/2018-03-14-mit-gadget-puts-multiple-artificial-organs-into-a-paperback-sized-connected-system/ 実験の...
-
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E8%AA%9E%E3%81%AE%E9%83%A8%E5%B1%8B チューリングテスト に対する反論とも言える思考実験だ。両者の概要はここでは省略する。Wikipe...
-
古くは仮面ライダースナックやビックリマンチョコ、最近では万博パビリオンの時間指定チケットやマクドナルドのちいかわグッズなど、何かと話題になっている転売の是非について考察してみた。これももちろん生成AIを使って、なかなか面白い結論が出た。 最初は万博場ビリオンについて議論したのだ...
-
生成AIに色々な疑問を聞いては楽しんでいるのだが、最近少々面白い発見をした。 景気対策として消費税減税や廃止を唱えている人は多い。素人だけでなく政治評論家や政治家自身にも多く見られる。だがそれは本当に景気の足しになるのだろうか。多くの人は施策のコストや長期的効果に言及していない...
0 件のコメント:
コメントを投稿