2017年9月10日日曜日
Excel方眼紙の問題
何かと議論の多い問題ではあるが、なくならないし減らないと思う。この問題の本質は、否定派の人にはなかなか理解してもらえない。
その大きな理由は、「需要とスキル」、これに尽きる。否定派の言いたいことは概ね分かっているつもりだ。入力しにくい、再利用しにくい、生理的に気持ち悪い。自分ならこう作る、もっと上手く作ってやる。それは分かる。
問題なのは、作る人も使う人も、スキルが高い人は少なく、低い人は多い、というごく単純な理屈だ。Accessを使え、HTMLを使え、InfoPathを使え、OSSを使え。それに対する答は、「無理!分からない!」だ。Excel方眼紙を作る人は、Excel方眼紙を作る能力はあっても、セルの結合の仕方を知らなかったりする。また、Accessは当然別に調達する必要があるが、Excelは手元にあってもAccessはない。OSSのインストールが禁止されていたり、そもそもインストールの仕方も知らないし、どんなソフトがあるかも知らない。Wordでセルのデータを取り出してExcelに渡す方法も知らない。
そんなのは知っている人に作ってもらえば良い。だが知っている人が近くに居ない、プロに頼もうにも予算がない、調べている時間もない、自分で勉強しようにも知恵が廻らない。そんな中で、Excel方眼紙に出会って「これだ!」と飛びつく。多くの場合はそんなものだ。
入力フォームの需要などは、どんな組織でもそれなりにあるものだ。だからどうしても総数は膨大になる。多数の人が係わることになり、平均的なスキルは低くなる。そんな中でもExcelは普及しているから、これに飛びつくというのも分かる。それが「望ましい状態とは言えない」と言えるのかというとそうでもない。なぜなら、望ましい状態にするにはスキルが必要で、個別にはともかく、平均的に(それだけのために)スキルを上げるためのコストは相当のものだからだ。
このコストは、組織化の際にも言えることだ。「このフォーマットは広く展開するのでそれなりの品質にするのだからちゃんと作るべきだ!」と一組織人が思ったとしても、どうせ上に上げるルートで潰されてしまうだろう。であればその時間の無駄の方が大きい。だから酷いと分かっていてもExcel方眼紙で作る。現実なんてそんなものだ。
つまり、否定派の理想を実現するためのコストは意外に大きく、放置する方が楽だから無くならないのだ。それは現場レベルでの最適化の結果なのであり、個々の事例を取り出してああだこうだと言うのは(門外漢の)技術者の暇潰しに過ぎない、と考える。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
注目の投稿:
こんなキュレーションメディアがほしい
SmartNewsやGunosyなど、いくつかのキュレーションメディアをインストールして使ってみて、やっぱりダメだと削除する、ということを、数カ月毎にやっている。なぜ数ヶ月毎にやっているかというと、進歩しているかもしれない、使えるようになっているかもしれない、と淡い期待を寄せ...
人気の投稿:
-
骨梁とは、骨の内部に存在する網の目ないしはスポンジのような構造のことだ。この構造によって、骨は頑丈なのに軽量でいられる。類似の構造としてはアルミ発泡材があるが、あれはどちらかと言えば消音や軽量化が目的であり、骨のような(建築用語で言うところの)構造材としての用途とは少し違う...
-
ディーン・ケーメン氏が発明した浄水器「 スリングショット 」の原理は、いわゆる蒸留である。つまり水を沸騰させて水蒸気にした後、冷やして水に戻す。汚水と蒸留水の間で熱交換を行うことで効率を上げている。 日本では、防災用の浄水器としては中空糸膜や逆浸透膜が殆どだ。これと蒸留式には...
-
屋根に超音波振動装置を取り付けておく。これによって屋根と雪の間の結合が破壊され、雪が滑り落ちやすくなる。これが題記装置の原理だ。角度によっては放っておいても落ちるだろうし、そうでなくても楽に雪下ろしができる。 まあ超音波でなくて低周波でも良いのだろうが、超音波の方が簡単...
-
書籍「糖質疲労」「脂質起動」がベストセラーになっているらしいというので、少し読んでみた。そこに書いてあったことでいくつか気になったことがあったので、これをネタに生成AIをイジメてみようと思い、会話してみた。 その疑問とは、いわゆるベジファーストへの反論である。 まずベジファー...
-
高市新総理がかつて主張していた「スパイ防止法」。巷でもスパイ防止法の制定を望む声は強いのだが、調べてみるとそんなに単純な話ではない。特に、世間のイメージと実態はかなり異なっていることが分かったので、ここでメモしておく。 まず、「スパイ防止法がないのは日本だけ」とよく言われて...
-
生成AIを使って作成されたイラストに対する極端な非難が相次いでいる。そのどれもが、ちょっと行き過ぎに思える。例えば、事前にAIであることを知らせているもの、絵を描いている本人が確認し承諾したものまでも非難されている。なぜこんなに過剰な反応をするのだろう。単にノイジーマイノリティの...
-
ハクキンカイロの発熱原理を調べていて、これを防災用(キャンプ用でも良いのだが)の湯沸しに使えないかと考えた。 普通、キャンプではガスコンロを持っていく。だがあれは裸火を使うから、熱効率は悪い。これに対してハクキンカイロの仕掛けは、白金触媒を適切な場所に配することで、極...
-
あるいは家庭用自販機、とでも言おうか。自宅のすぐ脇にあって、品揃えが少数多種、単に飲み物だけでなく、生鮮品や惣菜などもラインナップに加え、複数台並べて簡易コンビニ的に使用する。 自販機コンビニと似ているが、大きく違うのは次の通りだ。 品揃えはカスタマイズできる。 ...
-
免震構造については過去いくつか提案しているが、これの新しい版である。 以前、難燃性の油の上に浮かべた船の構造を提案したことがある。あれの砂版である。つまり、砂のプールを作っておいて、その上に浮かべるというものだ。砂が抵抗となって振動を軽減する。 ただし、油や水と違って砂の...
-
通常のマットレスのコイルは円柱状に展開されるが、これを山型に展開するようにすると、潰れるときは渦巻状になり、完全に潰すことができる。キャンプに使われる簡易マットにこれを使うと、持ち運びに際しては薄く、使うときは快適なマットが作れるのではないか。 キャンプ用のマットとして...

0 件のコメント:
コメントを投稿