2017年9月19日火曜日
音楽プレイヤーの未来
AppleがiPod shuffleとiPod nanoの終焉を発表した。カセットの時代からポータブル音楽プレイヤーを使ってきた身としては、時代の区切り、郷愁のようなものを感じる。
iPodが出てきた頃から、音楽プレイヤーの主流は半導体メモリになることは容易に想像できた。そしてそこから類推すれば、それはどんどん小さくなっていくが、ディスプレイや操作スイッチの大きさには限りがあるからそのトレードオフが必要、というのもまた自然な考えだった。iPod nanoが出てきたとき、もうこれ以上小さくしても意味がないと思ったのだが、shuffleが出てきたときの割り切りには感銘したものだ。
さて、今後は音声操作が可能になる他、耳の穴に入るBluetoothイヤホンもあるくらいだから、Bluetoothイヤホンへの付加価値追加という形が事実上最小であり、それ以上小さくすることには意味がない。ただ、UIについてはまだ発展の可能性がある。
幾つか考えられるが、例えばGear VRの付属コントローラーのように、コントローラーが別になっている、というものが考えられる。イヤホンのリモコンに毛が生えた程度のものを無線にして、ポケットに突っ込んでおく。操作と連動してその操作を音声で追認識する。
また、音声操作はGoogleアシスタントやSiriの延長として操作するのではなく、イヤホン単独のものに埋め込まれる方向性があり得る。今でもスマホで音楽を聴きながらランニングしている姿はよく見かけるが、あれはあれで結構重いしケーブルがぶらつくのも邪魔だ。それこそウェア以外はイヤホンだけ、というのが理想だろうからだ。
他に考えられるのは、Google Glassとの連動だ。完全なVRグラスだとコンテンツを見るのが優先になってしまうが、Google Glassのようなながら視聴なら、グラス(メガネ)の操作や、映像による操作補助が期待できる。
だが、もっと凄いことができそうな気がする。Spotifyには、最初にちょっと走ると、そのペースに合ったテンポの音楽を再生する、という、ランニング用の音楽リストがあった。元々、Spotifyの無料版は、個別のタイトルは選べないが、完全にランダムではなく、個人の好みを反映する。であれば。
キュレーションメディアでは、個人が興味を持って読んだニュースから個人の好みを推測して、新しいニュースを選ぶ、という機能がある。音楽にも同様なことはあり得るが、こちらはもっとシチュエーションに左右されるもののはずだ。上のランニングがよい例である。つまり、従来型の好み検出に加え、シチュエーション検出を合わせて最適な音楽を流す、という機能があってよいはずだ。
上のようにランニングというのは分かりやすい。多くのフィットネスソフトは、振動センサや加速度センサで歩行、サイクリング、ランニングをしていることなどを検出する。もしスマホを持ちながらであればGPSが入るから、その移動速度や周囲の天気は加えてインプットにできる。勿論個人のスケジュールや曜日、普段の生活パターンまでもデータとして入れられるならどうか。
例えば目が覚めたときには爽やかな曲、家で勉強しているときにはアップテンポで音声のない曲、就寝前には雨だれの音、夏にドライブしているならスカッとする曲、渋滞しているときにはさだまさし(?)、人が話しかけてきたら自動で消音。そういった選択を自動で行ってくれたとしたら、人は殆ど操作することなく、一日中イヤホンを耳に掛けていられる。
これなら、新しい音楽の聴き方として有望である。音楽を聴く時間は増え、音楽生産者は潤い、個人は操作の煩雑性から解放される。曲の選び方にはサービスプロバイダの個性が出せるから、真っ当な競争ができる。
多くの音楽配信サービスの次のプレミアムとして、充分考えられるのではないか。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
注目の投稿:
ダイナミック租税とその指標
今の法律では、税率は一定の計算式で表されるが、そのパラメータは固定である。需要と供給のバランスによって商品の価格を変えるダイナミックプライシングというのがあるが、あれを租税にも適用してはどうかと考えてみた。 納税者の声をベースにして様々な租税や補助金を自動調節して、どこか一箇所...
人気の投稿:
-
ハクキンカイロの発熱原理を調べていて、これを防災用(キャンプ用でも良いのだが)の湯沸しに使えないかと考えた。 普通、キャンプではガスコンロを持っていく。だがあれは裸火を使うから、熱効率は悪い。これに対してハクキンカイロの仕掛けは、白金触媒を適切な場所に配することで、極...
-
科学者、医者等であっても発言が必ずしも科学的とは限らない。無自覚ならまだ可愛いが、むしろ素人を煙に巻く悪意すら感じることもある。 量的議論がそのひとつであることは言うまでもないが、もっと以前の問題として、論理が破綻していることの多さがある。 そのひとつとして、ス...
-
新型コロナウィルスへの対応で、医療機関の防護服やマスクが足りないことが話題だ。ゴーグルは違うが、その他は使い捨てであるところがネックになっている。作っても作っても、消費の方が激しい訳だ。しかし考えてみれば、そもそも何で使い捨てなんだろう。細菌兵器用の防護服は使い捨てではない...
-
ガートナーが出しているハイプサイクルによると、生成AIはまだ幻滅期の手前にいるらしい。つまり今後大きな幻滅を経て実用域に進んでいくことになる。その幻滅とは、人間なら当たり前にできることでまだ生成AIにできないことが多く分かってくることによる。そしてその幻滅期を乗り越えるのは、...
-
時代が進むことで、昔のSFが奇異に思えるようなことはよくある。抑揚のないコンピュータ音声や、わざとぎこちなく歩く人間型ロボットなどは、もはや過去の遺物である。スタートレックシリーズに出てくるトリコーダーもその一つだ。 トリコーダー本体、また医療用プローブを手に持って...
-
生成AIを使って作成されたイラストに対する極端な非難が相次いでいる。そのどれもが、ちょっと行き過ぎに思える。例えば、事前にAIであることを知らせているもの、絵を描いている本人が確認し承諾したものまでも非難されている。なぜこんなに過剰な反応をするのだろう。単にノイジーマイノリティの...
-
卓上カレンダーのようなものを机に置いておいて、必要に応じてテレビ電話やフォトフレーム、緊急通報など、家で必要とされる様々な機能を集約する機械を考えてみる。 これは、従来は電話やFAXのような位置づけだったものだ。これら以外にも一家に一台の情報機器は考えられるので、それを切り替え...
-
コロナ禍ではあまり本ブログを更新しなかったが、この間は陰謀論が跋扈した時期でもあった。コロナは存在しない、ワクチンは危険、アビガン買いだめ、マスクは意味がないなど、実に様々な陰謀論が飛び交った。 この手の人は今だに存在しており、体感としてはむしろ増えている。それも、身の危険を...
-
自分の知る限りでは、VRChatのワールドで青空文庫が読める図書館があったのと、N高の教室メタバースくらいしかマトモな例がないのが、メタバース内で本を読む方法だ。本や書類がメタバース内で苦も無く読めるようになれば、電子書籍も含めて全部メタバース内に落としてしまいたい、とすら思っ...
-
映画と言えば、今でも娯楽のジャンルの一つとして確立したものではあるが、近年では衰退の兆しがある。そのたびに3DやCGなどのテコ入れが入ってきたわけであるが、ここにきて更に新しい提案ができるようになった。それがタイトルにあるインタラクティブ性の導入である。 とは言っても、...
0 件のコメント:
コメントを投稿