2017年9月26日火曜日
会社組織型大規模ソフトアーキテクチャ
一人の人間が覚えられる知識、処理できる仕事の上限は、ある程度限られている。その能力が十倍違うことはあっても、一万倍違うということは考えにくい。でも計算機モデルではこれはあり得ることだ。それは素晴らしいことなのか、それとも違うのか、ちょっと分からなくなってきた。
人間は、物理的なサイズが閉じているし、脳の大きさも似たようなものだ。成人であれば、倍半分違うということはない。言葉を喋るスピードが4倍違うと、多くの人は聞き取れなくなる。では仕事が多くなったらどうするかというと、人を増やすのが従来のビジネスモデルだ。
計算機だって同じではないか、と言えば、そうではない。プログラムの規模にはモデルによって何万倍もの開きがある。もちろんモジュール分割して開発するわけではあるが、その境界は曖昧で、いかようにも作ることができる。これは、物理的な限界がある人間とは違う。
問題なのは、そのような超高速・超巨大なシステムを構築するのが、ほかならぬ人間自身であるというところだ。つまり、全体の複雑さが、既に人間が管理する(開発する)能力を超えてしまっているのではないだろうか。
人間なら、部署を分け、各々にマネージャーを配置し、進捗状況などを常時監視する、いわゆる管理職が居るはずだ。仕事が複雑であるほど管理職の比率は増え、様々な視点から管理をする。だが大規模プログラムにはそういう視点がない。マネージャーが居らず全員が実務者、というのが今のプログラムと言える。
まったく居ないわけではない。プロセス監視、機器の故障監視、通信集中の監視、マルウェアの監視といった汎用の監視システムはある。だが、ワークフローの途中でハンコを押す、業務の内容を熟知したマネージャーソフト、というのは見たことがない。課長、部長の区別も勿論ない。
何を言いたいのかというと、大規模プログラムにおいては、人間がしているように、ソフトウェア上でも実務者とマネージャーに別れた監視の概念を取り込むべきではないだろうか、ということだ。そしてその各々の複雑さは人間個々の理解を超えない範囲に止め、複雑さの増大に対してはマネージャーの(数の)増加で対応する、というものだ。
概念自体は簡単で、従来の業務ソフトを分割して、内部でワークフローを作り、チェックポイントでマネージャーソフトの承認がないと先に進めないようにする。勿論却下された場合の対応方法もプログラミングする必要があり、これは従来なかった概念なので新たな開発になる。一方でマネージャーソフトは当然ながら新規開発である。
判断の基準は、個々の業務に間違いがないかどうかは勿論だが、統計的にその処理が妥当かどうか、だろう。例えば特定の処理が異常に多くないか、申請者が怪しい人物でないか、極端に金額や数値が大きくないか、など、どちらかと言えば「常識」を持つものになる。そしてこれらはAI的なソフトになるのではないだろうか。
こうすると、人間としてのマネージャーが一人のAIマネージャーを教育(学習)し、監視しながら徐々に自動化の割合を高めていく、という形になる。これなら実務者が人からソフトに変わっても同じ対応ができるし、ノウハウは会社(AI)に溜まることになる。マネージャ相互の優秀さもちゃんと個性が出るので、それらを比較してより向上させたり、評価に使ったりできる。
マネージメントの量が増えれば人も増やさなければならない。これなら実務者がソフト化しても管理者側に廻ることができ、また管理者が増えることで処理可能数が増え、人を削らずに業務を拡大することができる。
このアーキテクチャでは、ソフトウェアが幾ら大規模になってもソースは大規模にならない。AIマネージャーの初期状態は皆同じであり、事業立ち上げ初期には(プログラマやPMではなく)業務経験者が多数必要になる。もしソフトに不具合があっても被害が大規模になることはない(人間の管理者がチェックするため)。ベンダにノウハウが移ってしまってベンダロックインが生じることもない。費用の問題を除けば(検討していないので)、どちらにとっても良いシステムであると言える。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
注目の投稿:
ロボットシェアリング&困窮者向けジョブマッチングモデル
近い将来、AIやロボットが発達することで、労働者の仕事が奪われる事態が起きる。頭脳労働では一部業界に既に起きている(イラスト、音楽等)が、これが肉体労働にまで進んでいく。例えばレストランのフロアスタッフは既にタッチパネル注文や配膳ロボットにより侵食されており、他にも徐々に複雑な仕...
人気の投稿:
-
高市新総理がかつて主張していた「スパイ防止法」。巷でもスパイ防止法の制定を望む声は強いのだが、調べてみるとそんなに単純な話ではない。特に、世間のイメージと実態はかなり異なっていることが分かったので、ここでメモしておく。 まず、「スパイ防止法がないのは日本だけ」とよく言われて...
-
たつき諒氏の予言が話題になっているので、私も一つ予言をしてやろうかと思う。 2025年7月5日を中心とした前後1週間(計2週間+1日)の間に、日本の太平洋岸を震源とする、最大震度6強以上の地震は、起きない。 地震予知三原則である①地域の特定②時期の特定③強度の特定、何れも満...
-
古くは仮面ライダースナックやビックリマンチョコ、最近では万博パビリオンの時間指定チケットやマクドナルドのちいかわグッズなど、何かと話題になっている転売の是非について考察してみた。これももちろん生成AIを使って、なかなか面白い結論が出た。 最初は万博場ビリオンについて議論したのだ...
-
高市首相は安倍氏と同じ積極財政論者で、就任直後からその方向に舵を切っている。プライマリバランスゼロ目標を事実上反故にし、戦争でもコロナでもないのにいきなり17兆円もの補正予算を組んだ。ちなみに安倍総理が初年度に打ち出した補正予算は10兆円であり、それと比べても突出している。 こ...
-
世の中の話題はAGIを通り過ぎてASIに進んでいる。AGIがGeneral IntelligenceならASIはSuper Intelligence、即ち人類を遥かに超えた知性ということらしい。 2045年にシンギュラリティが起きると予測したのは、人工知能研究の世界的権威であ...
-
「生成AIはミーハーである」の回でも少し触れたのだが、生成AIの回答は一次的には誤っていることが多い。それを指摘してAIが回答を修正していく様を見て楽しむ、というのが最近のマイブームだ。 どういう指摘をしているのか、と自己分析してみると、興味深いことに陰謀論者との議論とあま...
-
生成AIを使って作成されたイラストに対する極端な非難が相次いでいる。そのどれもが、ちょっと行き過ぎに思える。例えば、事前にAIであることを知らせているもの、絵を描いている本人が確認し承諾したものまでも非難されている。なぜこんなに過剰な反応をするのだろう。単にノイジーマイノリティの...
-
一時期流行したベーシックインカムもいったん廃れたが、完全に潰れた訳ではなく、一部の市民や政治家は諦めていない。また何度も復活するだろう。そしてまた萎むだろう。 世間がベーシックインカムに反対する理由は主に財源と配分であろう。MMT信者のおバカ提案は論外だが、そうではない真面目な提...
-
ハクキンカイロの発熱原理を調べていて、これを防災用(キャンプ用でも良いのだが)の湯沸しに使えないかと考えた。 普通、キャンプではガスコンロを持っていく。だがあれは裸火を使うから、熱効率は悪い。これに対してハクキンカイロの仕掛けは、白金触媒を適切な場所に配することで、極...
-
クルド人と地元の人たちとのトラブルに見られるように、日本で外国人排斥運動が起きている。 世の中は近年、融和より対立を好んでいるように見える。その代表は右翼対左翼で、トランプや安倍のような対立を煽る風潮の流れを汲んでいる。生活保護者への批判、女性女系天皇、憲法改正などでも同様の...

0 件のコメント:
コメントを投稿