2017年9月28日木曜日
蓄電池電力平準化網
NEC、多数の蓄電池を活用した周波数制御技術の実証試験を開始
「周波数制御」とはあるものの、実態としては電力平準化に通じる実験だ。これを見ていて思ったのは、いわゆる再生可能エネルギーに限らず、広く平準化に貢献することが報酬となるような電力体系というのは考えられないだろうか、ということ。
通常、電力需要は昼にピークを向かえ、深夜早朝に掛けて低下する。電力は溜めることができないから、その需要に合わせて発電量を調節する。これを担うのが水力や火力だ、というのが教科書的な説明だ。これに再生可能エネルギーが繋がると、風は気まぐれ、太陽は雲に隠れる、などと更に変動は大きくなる。これを調節するためには膨大な蓄電池が必要で、現実的ではない。
だが、近年の蓄電池の技術進歩も無視できない。何とか蓄電池が買えれば、深夜電力で充電して昼間に使うようなオプションは選べるようになってきた。現状ではまだコストパフォーマンスは悪いが、マンションや地域でレドックスフロー電池を買う、というような事業には、少し光が見えてきたように思える。
もしこのような蓄電池が多数普及して、自分の分の消費程度なら蓄電池で賄える、となれば、逆に発電所は運転の調節をする負荷が減り、その分を再生可能エネルギーへの対応に向けられる。あるいは、それらの蓄電池は深夜電力だけでなく、地域の再生可能エネルギーの緩衝材として使われ、電線の使用も平準化することになる。更に行けば、電力平準化は地域電力網の仕事になり、発電所は動きたいときに動く気まぐれ運転で充分、という未来も想像できる。
これは結構凄い未来だ。広域に分散した蓄電池と網制御ソフトが電力平準化を担当するというのは、インターネットやビットコインのような自立分散型の社会になる。電力料金すら相場取引になって、発電で儲けたい者と蓄電池で儲けたい者の思惑が相場を生み、適正化される。電力自由化の一種ではあるが、中央集権ではないところがミソだ。
従来の大規模発電所も共存できる。ここが作る電力は元々安いが、発電量調節をするコストが不要になるので従来より更に安くできる。その代わり、メンテナンスの際にはスッパリと止まる。一方でその隙を狙う中小発電業者が出てくるなども考えられるし、ピークにのみ発電しようとする業者も出るだろう。
もちろん好き勝手に発電してよいわけではなく、オークションなどがあるのだろうけれども、蓄電池電力制御網を前提にするならその切替には細かな注意が不要だから、その分のコストも安くなる。
この網にはもう一つ、重要な利点がある。大規模災害時でも極端な停電が起きにくく、またもし起きても場所が限定されたり復旧が迅速だったりする可能性が高くなる。これもインターネットと似た特徴であり、将来的に検討に値する技術ではないかと思う。
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