2017年9月6日水曜日
サイバーダインと地球温暖化抑制
パワーアシスト(サイバーダインのような)が、介護ではなく一般的になった時代を考えてみる。
まず最初の予想は、「介護ビジネスの衰退」だ。足が弱っていたり、極端な話足がない人でも、健常者と同様に歩けるようになれば、車椅子は不要になる。そうすると、段差の解消や車椅子用トイレ、電車や自動車への昇降用道具なども不要になる。防水になれば入浴補助も要らないだろうし、トイレの手伝いも不要だ。病院にも歩いて行けるし、料理も自分で作れる。となれば、精神的な要介護状態(認知症、リハビリ)を除けば殆どの人は自立できるようになる。家のバリアフリー改造よりもこちらの方が安く済むなら、そうする家も増えるはずだ。
次は、「肉体的にキツい状態の許容」だ。例えば電車の立ち席が増えたり、建設現場での使用が増えたりする。あるいは買い物カートが不要になったり、肉体的なレジャー(スポーツ)が活発化したり、ということも考えられる。もっと地道には、坂のきつい土地柄でも難なく歩けるようになると、地価に影響するかもしれない。また、車やバイクを持つモチベーションが減るため、空前の徒歩社会が来るかもしれない。もっと地味な話、家の整理整頓や掃除が進むかもしれない。
次は、「AIとの結びつきでの自動化」だ。例えば、電車のホームドアが不要になるかも知れない。危険回避のため、電車が来ていないのにそちらに歩いていくことが自動的に抑制されるからだ。また、体調が悪くても、医者に歩いていけたり、自動車を運転して行けたりする。行き先を指定して、体が動くに任せていれば、ルートを考えずとも自動でそこに行けるようになるかもしれない。
また、今のサイバーダインはマジックテープで留める仕様だが、そのうち外骨格になるかも知れない。日頃からモビルスーツに入っているような状態だ。これなら締め付けがないし、内部にエアコンを効かせれば何時も快適でいられる。密閉型なら泳げたり、溶岩の近くまで来て観光できるかもしれない。もっと身近には、雨が降っても傘を差さずにすむから、雨の日のお出かけが苦にならなくなる。
今のサイバーダインは電動だが、駆動時間は短い。だがガソリンエンジンで置き換わるとは思えない。パワーアシストは屋内でも多く使われるから、水素エンジンか燃料電池になるはずだ。そして換気はより重要になる。外骨格型の普及具合にも拠るが、エアコンのパワーは強力なものが必要になり、換気技術も発達するだろう。
サイバーダイン型の一方で自動運転やロボットによるアシストという未来もある。だからここまで極端になることはないだろうが、サイバーダイン型には実は大きなメリットが一つある。以前議論した「移動に掛かるエネルギー」の話だ。上で「空前の徒歩社会」と書いたが、この議論と合わせて考えてみると、人が移動するのに掛かるエネルギーが大幅に(恐らくは1/10以下)減ることになるのだ。
サイバーダインのエネルギー効率が相当に悪いとしても、自動車の重量より人間+サイバーダインの重量の方が遥かに軽いから、その移動エネルギーも遥かに小さい。結果的に、同じエネルギーで移動できる量は10倍以上になる。もちろん自動車よりスピードは遅くなるが、走れるのであれば、都会ならドアツードアではそれほど差は広がらないはずだ。
つまり、パワーアシストの普及で徒歩社会が実現すれば、移動のためのエネルギー消費は大きく減る。これは地球温暖化の解消に貢献することになるのだ。都心部で車の量が半分になることを想像してほしい。それだけで充分空気は綺麗になり、ヒートアイランドは解消し、二酸化炭素は減少することになる。
パーソナルコミューター(一人乗り自動車)でも良いかもしれないが、こちらはそれなりに嵩張るし、階段は使えない。ここを見越した上で、サイバーダイン型パワーアシストの研究を大いに加速してもらいたいものだと思う。
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