2019年3月9日土曜日
取引疑義調停改革
組織からサービスを受け、対価を支払う。その対価の支払いに、代行サービスを使う。代行サービスは更に代行サービスを使っている。これが、今の金融取引の実態なのだが、上手く回っているときは良いとして、そうでないときには困ったことになる。
クレジットカード会社の引き落としで疑問が出たとき、その会社が代行サービスだったときがそうだ。手軽に問い合わせることができず、また引き落とされたことに対して停止したり疑義を申し立てる機能が弱いと感じることが多々ある。
これには、契約と支払いが電子的に一対一対応していないことに一因がある。もちろん定期購読のようなものはあるのだが、これにしても個々の支払いは包括契約に基づくものであって、それが「包括契約である、どんな契約である」というのが分かっていれば問題は無い。これが今は曖昧だ。
ブロックチェーンのようなものでも、まだ包括契約はカバーしていないし、そもそも支払い行為しか追っていない。スマートコントラクトにしても、電子取引のみに閉じていては完璧ではない。ここを完璧にすることは可能だし、それほど難しいわけでもない。
クレジットカード決済、銀行送金、PayPal、仮想通貨、電子マネー、これら全てにおいて、ここは完璧ではない。これを行うために、次のような仕掛けを考えてみる。
まず、改ざん不可能な契約書と送金証明書が必要である。これを見れるのは、原則として契約当事者と送金者(送り側、受け側)である。契約・送金各々に代行者がいた場合、その代行者も閲覧可能とする。もちろん、係った全ての国の捜査機関は、疑義があればこれを閲覧できる。
この契約書と送金証明書は、改ざん不可能、消去も不可能でなければならない。ブロックチェーンはこの保管には適しているが、必ずしも必須ではない。ここではその方法については問わないことにする。
スマートコントラクトと異なるのは、実世界が絡む契約では、どうしてもその契約実行を電子空間だけで完結できないところだ。つまり、契約と送金が証明されても、契約の履行は証明されない。例えば紛い物を送り付けられたり、そもそも何も届かない、建築契約なら途中で放棄される、よく調べてみれば買ったはずのものに別の抵当権が付いている、などだ。逆に、難癖を付けられる可能性だってある。
契約履行証明は、契約先が契約書と送金証明書に紐付けて発行するのが望ましいが、それでも疑義がある場合は第三者調停が必要となる。つまり、契約書、送金証明書、契約履行証明書の三点にIDを付けて改ざん不能な形で保管しておき、調停第三者がどちらかの申請により閲覧できるようにする、というのが良いことになる。
調停第三者は、そういった調停を多く記録しておいて、統計的にどちらが正しいかについて判断し、見解を提示する。例えば過去に多くの調停が発生した者(トラブルが多い者)の方が疑わしいと考えるし、証明書以外の証拠を多く提示した者なら信頼できるだろう。もちろんそれには拘束力はないので、見解に従わないと分かれば即裁判に持ち込めるようにする。
具体的に例を挙げると、契約書はAmazonの購入手続き、支払いはクレジットカード明細、契約履行は宅配業者の配達証明、となるわけだが、この各々が紐付けられているというのがミソだ。各々に単純に番号が振ってあって、その相互接続ができている、というだけでもよい。それならシステムをそれほど弄らずに対応できる。このレベルではまだ「改ざん不能」とまでは言えないが、少なくとも直ちに追跡ができることにはなる。
調停第三者は、まだ日本では本格的に稼動していないが、例えば弁護士が組織化して新しいビジネスとして立ち上げることもできるはずだ。これは例えばAmazonなど複数の通販業者と連携する(単独だと逆に疑義が起こりかねない)ことで、広く薄く経費を徴収すればよい。これは広く言えばAmazonマーケットプレイスの信用調査を兼ねることにもなる。ここが優秀ならトラブルは減り、信用もまた上がるというものだ。
ここまで手続きを簡単にすれば、決着が素早くなり、社会の効率化ができる。またこれは、契約の良質化に繋がるはずだ。即ち、契約不履行や詐欺の類は減少するだろう。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
注目の投稿:
富士山噴火への備え・再考
以前にも https://spockshightech.blogspot.com/2017/10/blog-post_2.html という投稿をしたことがあるのだが、もう少し状況を詳しく知ることができないか、調べてみた。 首都圏の対策としては、『首都圏における広域降灰対策...
.jpg)
人気の投稿:
-
屋根に超音波振動装置を取り付けておく。これによって屋根と雪の間の結合が破壊され、雪が滑り落ちやすくなる。これが題記装置の原理だ。角度によっては放っておいても落ちるだろうし、そうでなくても楽に雪下ろしができる。 まあ超音波でなくて低周波でも良いのだろうが、超音波の方が簡単...
-
一国における貧富の差が余りにも拡大して手が付けられなくなった時に、第二の通貨を発動する、という手が考えられる。お互いの使い方や交換に制限を掛けてやることで、第二通貨が貧乏人の間で主に廻るようにして、独立した(仮想的な)経済圏を作ってやるのがこの目的だ。 低所得層は第二通...
-
ハクキンカイロの発熱原理を調べていて、これを防災用(キャンプ用でも良いのだが)の湯沸しに使えないかと考えた。 普通、キャンプではガスコンロを持っていく。だがあれは裸火を使うから、熱効率は悪い。これに対してハクキンカイロの仕掛けは、白金触媒を適切な場所に配することで、極...
-
「人はなぜ悪に憧れるのか」と「人はなぜ正義に憧れるのか」をGoogle検索してみたところ、前者は素直にヒットするのに後者はひねくれたサイトしかヒットしなかった。どうやら人は悪に憧れているようだ。 前者のサイトを読んでいると、様々な解釈が出てきて面白い。だが、検索前に自分...
-
ディーン・ケーメン氏が発明した浄水器「 スリングショット 」の原理は、いわゆる蒸留である。つまり水を沸騰させて水蒸気にした後、冷やして水に戻す。汚水と蒸留水の間で熱交換を行うことで効率を上げている。 日本では、防災用の浄水器としては中空糸膜や逆浸透膜が殆どだ。これと蒸留式には...
-
不気味の谷というのは人間に似せようとするから起こるのであって、Pepperやaiboには存在しない概念だ。日本にはアニメキャラという秀逸な文化があるのだから、顔にしても動きにしても、そういった一つのカテゴリとして「抽象化ヒューマノイド」(言葉が適切かどうかは分からないが)と...
-
3.11で原発の危険を甘く見ていたように、次は噴火を甘く見ていたと後悔するかもしれない。今の知識を振り返ってみる。 過去の富士山噴火の規模を見ると、溶岩や噴石などの被害はもちろん近隣で発生するとして、広範囲に火山灰が積もる。予測によれば、関東でも数cmは積もる。この量で...
-
Googleがローカルニュース記事を作成するソフトウェア開発に資金を提供した 記事を見ていると窮余の策にも見えるのだが、考えてみるとむしろ好ましいのかもしれない。今まで、ローカルニュースは地方紙の領分であり、全国紙ではローカルニュースは1ページとか、ごく少数しかなかった...
-
FacebookのAIが、英語を使いながらも人間に理解できない文法でしゃべりだし、そのAIが停止された、と言う話が話題になった。その会話を実際に見てみたが、確かに気持ち悪い。この気持ち悪さ、どこかで感じたことがある、と思って思い出してみたら、眉村卓の小説に度々出てくる「産業...
-
コンクリート住宅を3Dプリンタで作る、という試みは、世界中で行われている。しかし日本では、鉄筋なしのコンクリートだけの住宅は認可されない。地震が多い日本では、揺れで簡単に壊れてしまうからだ。コンクリートは圧縮に強いが引っ張りに弱い。鉄筋はその逆だ。鉄筋コンクリートが使われる...
0 件のコメント:
コメントを投稿