2024年10月31日木曜日

フレキシブルシティ構想

 


少子高齢化への対応として、行政コストを大きく減らすために有効なのがコンパクトシティである。街の範囲を限定してそこの行政サービスを充実させ、そこ以外の行政サービスを低下させるものだ。

インフラや警察消防など、行政が用意するインフラの保守コストは、サービス範囲に人が少ないほど割高になる。過疎化・少子高齢化で人口が減少し、更に生産年齢人口比率が落ちてくれば、納税による歳入も減るので、インフラの維持コストが深刻になってくる。これを防ぐのが目的である。

だが、知る限りでは成功したコンパクトシティはごく少数だ。コンパクトシティを作っても、そこに移り住んでくれる人が少ないからだ。

日本には居住地自由の原則があり、これは憲法で保証されていると解釈されている。このため強制的に移住させることはできない。また、日本では土地は所有できるが、国や自治体は原則として買い取ってくれない。だからコンパクトシティ化で価値が落ちた周辺の過疎地域に家を持つ人は、なかなかその家が売れない。また、過疎地の行政サービスを大きく低下させることは、日本流の「大きな政府」との相性が悪く、なかなか思い切ったことができない。

また、引っ越し自体が大仕事である。端的に言えば間取りが違うから、全てを持っていって納まるかどうかが分からないからだ。同じ平米であってもレイアウトが違えば家具が入らないとか、梁が邪魔だとか、細かい問題は出てくるものだ。一つ一つ全く違う間取りから間取りへ移動する必要、エレベーターがない、細い階段など特殊な家が多数ある実態、そういうものが自動化や単純化を阻み、値段を釣り上げる。

人がもっと気軽に引っ越しできるようでないと、コンパクトシティはうまくいかない。そしてコンパクトシティ内とて事情は同じで、その中でもフットワーク軽く引っ越しできないと、やはりコンパクトシティ内で同じことが起きてしまう。

例えば、小学校の近くに家を買ったと喜んでいても、子供は成長して何れは中学高校と進学していく。いつまでも小学校の近くに住んでいてもメリットはないのだが、家を買ってしまうとなかなか動けない。そして中学校の近くにしか空きがないところに小学生を持つ家族が入居したりする。このお互いは交差しながら通学するのだが、これは移動時間の無駄と言える。

もし簡単に引っ越しができる環境があるのなら、コンパクトシティはもっと効率化するし、過疎地からコンパクトシティへの誘導ももっと進むはずなのだ。そしてこれは個人の家に限らず企業のオフィス、更には行政サービス拠点などでも同じである。

そこで考えるのが、国や自治体が土地や建物を所有し、個人に所有権を認めない代わり、とんでもなく住みやすい「街」を作り出してしまうことだ。これをフレキシブルシティと命名してみる。

フレキシブルシティは、職住学地域、工場農場地域、娯楽施設、それらを結ぶ自動運転車通路、で構成される。その大きな特徴は、職住学地域における規格化された間取りと自動物流である。

職住学地域について説明すると、8x10mの部屋が大量にあり、それが廊下やデッキでつながっている建物が延々と連なっており、その前には200〜400mトラックを有する運動場がやはり連なっている。

8x10mということは80平米だが、これは夫婦+子供二人の住宅としてはやや大きめの贅沢構造だ。また学校の教室としてみると、殆どの学校は7x9mなので、十分に広い。事務所としても、20人程度までの事務所としては十分である。

つまり、人口構成や企業の状況などによって、それらの部屋をフレキシブルに割り当てて使う、というのがそのコンセプトだ。学校の教室、住居、サテライトオフィス、役所の出張所、小規模店舗、飲食店、医療施設、警察、クリーニング店などを、その人口構成に合わせてフレキシブルに適用する。これによって、職住学接近が為される。

同じ8x10mの部屋であれば引っ越しは容易なので、例えば5年に1回大規模なレイアウト見直しをして、それに合わせて一斉に引っ越しをするようなルーチンを作る。こうすることによって、都市は常に最適化された状態になる。

例えば、ある企業が急激に業績を伸ばして従業員を増やしたら、隣の部屋の人に移動してもらってそこに事務所を作る、といったことができる。採算が悪く撤退した企業や店舗があれば間を詰めてもらうこともできるだろう。

部屋は賃貸になるのだが、通常の借地借家法に基づく賃貸では、この引っ越し強制は不可能である。定期借家権でもダメだ。このため、「居住権はあるが場所は貸主(自治体)の指示に従う」という新しい借家権が必要である。

またこの部屋には教育用のプロジェクタが2台設置されている。前後の白板兼スクリーンに投影するもので、これは各家庭や事務所が好きに使って良い。これで大画面投影で遠隔事務所を繋ぐこともできるので、オフィスの大きさが制限されていたとしても、コミュニケーションを良好にすることはできるだろう。

大画面スクリーンと通信が最初から配備されている前提では、打ち合わせにしても教育にしても、遠隔で行うことは容易になる。例えば、複数の教室で教師一人が対応することも可能だし、特別講師を遠隔で招くこともできるだろう。これは家庭でも同じで、遠隔地に住む両親と常に繋いでおくようなことは可能だ。

工場農場勤務や、娯楽施設に行く時には、自動運転車を使う。自動運転車は建屋の3階から発着するので、徒歩の人を妨げることはなく、信号もなく、渋滞も関係ない。自動運転車も所有ではなく、自治体主導のシェアリングである。

家庭と事務室では作りが大きく異なる、という異論はあると思う。ここでは主にキッチン、風呂、トイレの問題となるのだが、これは各部屋に上下水道管及び換気管を2セットづつ事前に配管しておく。教室にはドアが二つあるが、この近辺に配置しておいて、風呂・トイレ・キッチンは移設可能にする。また共用部にもトイレは用意する。なお、キッチンは電気式に統一する。ガス管は配置しない。

この部屋の大きさは一人二人暮らしには広すぎるので、その場合は半分のところに仕切りを設置して二部屋として使用する。

娯楽施設はモール形式にして、店舗の栄枯盛衰もフレキシブルに対応する。但し普段の買い物は、職住学地域の小規模店舗で済ませる。開放感を得られたい場合や大きな店舗での買い物のみが対象である。テナント料の調整によって、大規模店が一方的に有利になることのないようにする。

これらを貫く自動運転車は、人用と物流用の二種類がある。このうち物流用は、各部屋への自動受取に対応していて、一定のサイズ制限の下、完全に自動で荷物を送ることができる。

受け箱はデフォルトでは一部屋毎に二つ(ドア毎に一つ)である。この受け箱に自動倉庫を連結することは可能で、店舗や事務所等ではこれを利用する。冷凍冷蔵は、自動運転車側では対応するが、受け箱では対応しないため、在宅時のみ受取可能である。

また、工場農場地域に物流センターがあり、各建屋の各階には小規模の自動倉庫がある。これらは一時ストックとして機能する。物流センターは、フレキシブルシティ内外の物流の中継地となる。

全世帯・全事務所・全工場・全教室で自動物流が可能という前提により、フレキシブルシティ内では様々なことが自動物流前提で動く。これは大きな特徴である。

まずは買い物。冷蔵・冷凍・常温と分けて箱に詰め、自宅指定で送れば、後は手ぶらで帰れる。ネットスーパーのように時間指定して家で待つ必要はなく、常温が先行して自宅に届き、家族が帰ってきたら冷蔵と冷凍が届く設定になっている。また、ショッピングモールに行って、先に買い物をしてから遊ぶこともできるなど、時間もフレキシブルに使うことができる。

また、自動倉庫はストックとしても機能するので、例えば季節の服などは自宅に置かず、自動倉庫に追い出してやることができる。これで部屋を広く使える。

また引っ越しもこれを活用できる。大型家具以外はまずこれに載せていったん物流倉庫に収め、大型家具のみ手配して、家具配置後また荷物を自動で取り寄せる、といった手順で引っ越しが完了する。この時、通函ではなく家具兼用の箱に入れておけば、箱を積み重ねるだけでよいので更に簡単である。冷蔵冷凍も大丈夫だから、引っ越し日程に合わせて冷蔵庫をカラにする必要もない。

また、頻繁な引っ越しに適した家具もリースないしは販売することが考えられる。キャスター付き、折りたたみ、分解簡単、規定サイズ内、あるいは自動運転車による牽引が可能な家具を作れば、荷造りせずに引っ越しが可能になる。

この物流の仕掛けはゴミ捨てにも応用できるため、ゴミ回収も24時間可能である。但し生ゴミは原則ディスポーザーで対応する。その他の燃えるゴミ燃えないゴミ資源ゴミは、専用の通函で送るようにする。専用通函は匂い漏れのない密閉容器であり、また返還される前に洗浄される。

工場農場でもこれはフル活用される。例えば、部品ストックや半完成品が同じ仕掛けで自動倉庫に取り込むことができるので、自動倉庫を工場の一部として使用できる。

フレキシブルシティを魅力的にする施策は以上の通りだが、これ以外に過疎地の人がフレキシブルシティに移り住む動機として、次のような施策が考えられる。即ち、過疎地の土地を手放してフレキシブルシティに居住する者は、その居住権を相続できるようになると共に、自治体(フレキシブルシティ)が手放す土地を買い取るようにする。自治体はその土地を整理して、工業や農業、あるいは自動倉庫に転用する。

2024年10月30日水曜日

生成AIアレルギー


生成AIを使って作成されたイラストに対する極端な非難が相次いでいる。そのどれもが、ちょっと行き過ぎに思える。例えば、事前にAIであることを知らせているもの、絵を描いている本人が確認し承諾したものまでも非難されている。なぜこんなに過剰な反応をするのだろう。単にノイジーマイノリティの問題だというのは一つの考え方だが、なぜそのマイノリティは過剰にノイジーなのだろう。

大きく考えると、まず第一に、

https://spockshightech.blogspot.com/2024/10/ai_01917150723.html

のところでもちょっと触れたのだが、「作品タダ乗り」への反感が大きい、ということが考えられる。第二に、人間が描いたものだと思ったらAIだったということに裏切りを感じている人もいるようだ。

タダ乗りへの反論は以前にしているので、ここでは後者を考えてみる。そこには二つの可能性がある。一つは、自分が知っている(贔屓にしている)特定の誰か(イラストレーター)の作品に似ているから、その人の作品だと誤解してしまった(誤解しがち)というもの。もう一つは、単純に人間の描いたものだと思っていたらAIだった、というもの。前者は著作権の問題であるが、上のように本人が承諾しているなら問題ない。そうでなければ著作権違反で、この問題ははっきりしている。問題は後者だ。

ここには一つの偏見がある。人間が描いたイラストとAIが描いたイラストではAIの方が価値が低い、というものだ。

確かにAIは、人手で描く何百倍もの速さで一定の品質のものを生み出すことができる。だからといってその絵の価値が低いわけではない。同じ質の絵は同じ質の感動を生み出すものだ。

そうではなく希少価値のことを言っているのなら、確かにその通りだ。AIは大量に高品質のものを生成できるので、絵一枚当たり幾ら、と値段を付けてしまえば、確かにイラストレーターのそれよりは大幅に安くなる。だがそれは工業製品と同じく、大衆化、普及という価値も持っているのだ。我々は毎日、大量生産によって人手では到底作り得ないモノ、あるいは人手では高価で買えないモノを、日常的に使っている。それは間違いなく「恩恵」である。

ハンドメイドにこだわりたい人は高いカネを出して買えば良いが、その人が大量生産品を否定するのは間違っている。イラストに工業的大量生産品は今まで無かったからそういう偏見も生まれるのだろうが、時代は進んでいるのだ。それは認めるべきではないか。

今後の生成AIは、イラストレーターのだれそれに似ている絵も描けるし、誰とも似ていないオリジナルの画風も作れるようになるだろう。そんな中で、従来の意味でのマンガ家やイラストレーターは姿を消していくかもしれない。でもそれは消滅するという意味ではなく、道具としてAIを使いこなす作家が増えてくるという意味だ。これからのマンガ家は、自分の手で絵を描く必要はない。AIに描かせるが、そのタネやプロンプト、AIの学習やカスタマイズで望みの絵を描くのだ。それは十分にオリジナルであり、タダ乗りなどではない。絵としての価値も十分にある。

似たようなことは、既に音楽業界で起きている。ゲームのBGM等では既に、音楽生成AIによる曲が多数蔓延っており、そのことは誰も気にしていない。従来の意味での作曲家編曲家は徐々に減り、一方で音楽生成AIを使いこなす作曲家編曲家が増えていく。その過程で音楽の質は平均的に高くなり、全体量としても増える。それを俯瞰してみれば、音楽業界は発達したと見ることができる。同じことが今イラストで起きているに過ぎない。

今後、静止画のみならず動画までがAIで生成される時代が来る。世に出る殆どの音楽、絵、動画、文学が、生成AIの作になる、という時代までが容易に予想できる。そんな中での生成AIアレルギーは、結局「ラッダイト運動」に過ぎないのではないだろうか。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ラッダイト運動

ラッダイト運動に参加した労働者は、結局職を失った。だが多くの労働者は、時代を見据えて頭を切り替えた。既得権にしがみつくだけの頭の硬い連中は、結局は滅びるしかないのだ。

2024年10月29日火曜日

電脳メガネの普及とメタバース


Metaが発表したOrion。メガネタイプでありながら広視野角と無線接続を実現している点、非常に興味深い。当分製品化の予定はないそうだが、これがあったらMR・ARは飛躍的に使いやすくなる。正に「電脳メガネ」の世界の到来だ。

従来のVRゴーグルと違うのは、普段から掛けていて必要な時にすぐ使える点だろう。こうなるとそのニーズも変わってくる。そういうものを考えてみたい。

  1. 何といってもメッセージや電話・テレビ電話の概念が変わってくるはずだ。つまり、視界の正面で不透明になるテレビ電話は使い勝手が悪いので、視線左ないしは右に避け、また半透明で背景はデフォルトで消してしまうものになる。こちらの映像もカメラはないので全てアバター、つまり相手の映像も最初からアバターだ。つまりアバターがデフォルトになる。
  2. 多対多の会議では、既にMicrosoft Meshが実現しているような形態が進化するのだろう。VR世界にアバターが集まり仮想テーブルを囲むような形式だ。この場合でも完全なVRではなくMRになるので、現実のテーブルをある程度反映するようなものになるだろう。
  3. MRよりはARが主体になる。マンナビはその最たるもので、行き先を指定すると曲がり角で曲がる方向に矢印が出る。また知人と会ったらその情報を引き出し、顧客との相対では顧客感情を常にAIが検知し適切なアドバイスが出る。
  4. コントローラを握ることはあり得ないので、音声操作とジェスチャーが主体になる。Orionでは手首に筋電センサが付いていたが、これもデフォルトになるだろう。常に着けておいて、必要になったら使うのだ。視線追跡もデフォルトになるだろう。
  5. また、ジェスチャーはある程度標準化してもらわないと困る。今のところ汎用のOSと言えるものはMetaのHorizon OSしかないが、ここでの標準は皆準拠して欲しい。Appleのようなゴリ押しは止めて欲しい。
  6. 電脳メガネで出てくる情報は、スマホで言えばアプリよりは通知、ウィジェットに近いものである。ゲームは殆ど無いだろうし、アプリの機能もそれほど多くはないはずだ。
  7. また、天気予報、ニュース、スケジュール、店舗の割引クーポンやポイント、地図やマンナビ、電子書籍といったカテゴリ毎に、表記はある程度取りまとめる必要があると思われる。
  8. 歩いている時にキーボードを使うことはあり得ないが、座っていれば可能性はある。折りたたんでスマホ程度のサイズになるBluetoothキーボードは既に存在しているが、これが広く普及するだろう。またこの時には正面にスクリーンが出ることができる。会議も、座って行う場合には、従来のように正面に4分割画面が出て、というようなUIは可能と考える。
  9. 遠い将来ならともかく、例えばこれが5年後に製品化したとしたら、バッテリの保ちはせいぜい2時間だろう。屋外で長時間使う前提のため、無線給電も不可だ。ということは、バッテリ交換式ないしはポケットに入る急速充電器のようなものは必要だろう。
  10. 電脳メガネで出てくるような仮想ペットや、呼べば現れる仮想執事のようなメタファで、AIエージェントを呼び出すようになるだろう。
  11. 一部のVRアプリでは既に実現しているが、手元にステータスウィンドウとメニューを表すような仕掛けが定着するだろう。
  12. スマホやスマートウォッチを持ち歩く理由がほぼ無くなる。これらは衰退すると考えられる。
  13. 表示に通知が多すぎると鬱陶しいので、メタファによる通知は増えてくるはずだ。これは以前にもhttps://spockshightech.blogspot.com/2017/08/mr.htmlで紹介した。そこには広告もさりげなく入ってくるだろう
  14. 殆どの人が電脳メガネを掛けている時代には、逆に言えば看板や表札、交通標識のようなものは不要になる。全てをMR、ARで表示すれば良いからだ。これらは景観以外にも費用や耐震性の問題があるので、実物は無い方が良い。特に観光地では、余計な広告は排除して景色をじっくり楽しむのに適している。逆に必要なのはWiFiなどの通信機構だろう。
  15. もっと言えば、掛け時計やカレンダー、テレビといったものも不要になる。更には書籍の類も電子化してしまえば良いので不要。チケットのようなものも不要。リモコンの類も不要。ペンやホチキスなどの文具も多くは不要になる。世の中はかなりスッキリする。ただ、これはその周りの職業が無くなることも意味しており、手放しで喜べるものではない。
  16. 子供の装着がどれだけ可能かにも依るのだが、本が電子化されることで教科書・ノート・参考書などを持ち歩く必要が無くなり、タブレットもノートPCも不要になる。持ち歩くべきは雨具や運動着などだけになるため、学校の行き帰りはずいぶん楽になるだろう。ランドセルは衰退するかもしれない。
  17. MRによる教育コンテンツのリッチ化が期待できるため、学問全体で底上げが図れ、特に子供の知的レベルは大きく向上する。人類がより賢くなれる。
  18. メガネにどんな生体認証が付くのかだが、ツルに仕込む指紋認証、虹彩認証、網膜認証が考えられる。となると、メガネを掛けていれば本人認証はできるので、会員証や鍵が無くても自由に出入りできるドアができたり、支払いも契約もメガネで完結するようになるだろう。
  19. お互いがお互いを直ぐに知ることができるため、例えばクルマでスピード違反で捕まって、その場で免許証を見せろとか車検証を見せろとかを言われることは無くなる。もっと言えば捕まるとか止めるとかも不要だ。スピード違反を検知した時点で点数が引かれ、逃げ続ければ免停になり、更に放っておけばどんどん罪が重なっていく。初対面でも秒速で名刺を交わすことが可能だ。受付における用紙記入や会員証の提示なども必要ない。どんどん用件に入っていける。
  20. ウソがつけない点も重要だ。消防署の方から来ました、と言ってもすぐにバレるし、オレオレ詐欺も不可能。それでも犯罪は無くならないだろうが、難しくはなるだろう。
  21. VR前提の世界だと、部屋から一歩も出ずに世界旅行すらできるイメージだが、MR/ARの場合は現実世界が主で、仮想世界は従になる。今まで通り出歩いて、ウインドウショッピングをすることもできるはずだ。ただ、家に帰れば(今のものより更に優れた)VRゴーグルがあるとも考えられる。MR対VRは、どちらか一方が完全に勝つのではなく、使い分けるものになるはずだ。つまり普段は電脳メガネで、家や会社でしっかりやりたい時にはVRゴーグルを掛ける、といったものである。
  22. VRゴーグルと電脳メガネを両方、家族の人数分だけ揃えるのは大変なはずだ。値段にもよるが、多くの人は電脳メガネを優先するだろう。VRは金持ちの趣味、MRは実用、という棲み分けが起きるかもしれない。
  23. 電脳メガネが普及している時代、(視力補正のための)メガネは使い勝手が悪い。必然的にコンタクトレンズの普及度合いが増えると考えられる。眼内レンズも安くなるのではないか。
  24. スマホと比べると電脳メガネはUIとして優れている。電子機器の普及度としては、スマホ超えが期待できるように思う。これは障害者や高齢者の普及度が上がることを意味しており、国民総電子化を目指すことができる。
  25. Orionのフレームには、大量の電子機器が埋め込まれている。Orionはウエリントン型だが、今後もフレームレスタイプは原理的にもあり得ないし、(視力補正のための)メガネのような形のバリエーションはハナから期待できない。これはファッション重視の人には耐え難いはずだ。とすると、誰もが電脳メガネを常に掛けているという世界ではなく、人によって掛け外しをする世界になっていると想像する。となると、気軽に掛け外しができるような機構、例えばメガネチェーンとかウェストバッグのようなものが普及するかもしれない。

さあ、10年後にどれだけ当たっているだろうか。結果が楽しみである。

2024年10月28日月曜日

辛さの国際規格


長いタイムレンジで見ると、世間は段々と辛いもの好きになっているように思える。外食でも惣菜でもそうだが、なんでもないものにも唐辛子や胡椒が過剰に入っていて辛くなってきてきており、一方で元々辛いものは更に辛くなっている。段々と辛くないものを探すのが難しくなってきている、という言い方もできる。

外食や惣菜に限らず、CookDoやカレールー、パスタソースのような調味ソースは世の中に色々と出ているが、そのどれもが辛い。辛いものが苦手な人にとって、それは生きづらいとすら言えるのではないかと思う。

せめて食べる前買う前に辛さが確認できればとも思うのだが、多くの食品には書いていないし、書いてあるものでも商品ごとに基準が異なり、「甘口」と書いてあってもその辛さは違う。メーカーなりの基準はあるのだろうが、消費者に言わせればそれはかなり不親切だ。

洋服のサイズは段々と国際基準に合わせる方向に向かっており、これは良いことだ。食品の辛さについても、せめて国内では統一してほしいし、できれば世界で統一して欲しい。

辛味成分の含有率を調べればすぐ分かる話なのだから、そんなに難しい話ではないはずだ。ただ洋服と違って上限は難しく、一般レベルとマニア界隈を一つの指標にするのは難しいだろう。なので数値を表現するのが良いだろう。

最初の数段階は一般向けと定義する。指数0は辛味成分なし、指数1は乳幼児レベル、指数2は小学生レベル、指数3から7くらいまでが一般レベル、それ以上はマニア向け、などと、分かりやすい基準にしてもらいたい。

そして同じ基準で、外食や惣菜にも表記が欲しい。これで辛いものが苦手な人でも生きやすくなるだろう。

2024年10月25日金曜日

木密地域対策


以前、

https://spockshightech.blogspot.com/2018/11/blog-post_26.html

という投稿をしたことがあるが、耐震補強ではなく移住と再開発をしてはどうか、と考えてみた。

要するに建て替えである。耐震性の弱い木造住宅密集地域(木密地域)の特定の区画を、耐震マンションで置き換える。通常と違うのは、これを公費でやるところだ。住民は丸儲け、但し土地は接収となり、マンションの部屋の権利に置き換わる。

タダで住宅を与えるようなものだ、ケシカラン、とも言い切れない。もしそのマンションに何らかの防災機能を設けるとしたらどうだろう。例えば1階はガレージにして非常時には一時避難場所の指定を受ける、屋上までの階段を外側に作って津波避難タワー兼用にする、並べるように作って防火壁として機能させる、貯水タンクを持って放水に役立てる、備蓄倉庫を設ける、自治会などの集会所を兼用する、防災トイレを設置する、などとすれば、半分公共施設のようなものだ。近所の防災拠点として機能し、実際にも被害を低減でき、死者負傷者数を減らすことができるなら、その価値はあるはずだ。費用を出す意義もあるだろう。

費用対効果が気になるところではある。住居4〜6棟くらいのスペースを、6階建て20室程度のマンションで置き換えたとして、費用はざっと5億円程度。このうち10室を販売すれば、今なら5億円くらいは回収できそうだ。自治体の負担はそれほど無いのではないか。

2024年10月24日木曜日

ポイントアプリを撲滅せよ

 手元のスマホには大量のポイントアプリがインストールされているが、殆ど使っていない。その都度インストールしたかどうかを思い出して、時には忘れていて、アプリを必死で探すが見つからず、検索で見つける羽目になる。

カードをアプリにしたのは店の都合もあるのだろうけど、殆どのアプリには独自機能はほぼ存在しない。ポイントIDのバーコード表示と広告、たまに来店ポイントの付与機能、せいぜいその程度だ。

こういう店舗毎のポイントを細々とインストールするのはもう嫌だ。汎用ポイントアプリを作ってそこに統合して欲しい。それがVポイントとかPontaとかいう汎用ポイントならそれでも良いが、今の店舗毎ポイントは独自にやりたいのだろうから、そういう汎用アプリを一つ作ってやれば良い。要するに最初に店舗情報を入れて登録してしまえば、後はその店舗に入れば自動でその店舗用アプリに変身してくれるモノだ。

店舗はGPSで検出しても良いし、QRコードを読ませても良いし、Bluetoothで検知しても良い。最初の登録も、既に入っている他の店舗が一つでもあれば、転記できるようにしておけばカンタンにできる。この初期登録は、顧客が逃げる要因の一つになっているので、その点でも有利である。

問題は、誰が作り誰が管理するかだ。店舗から少しづつ徴収するのが王道ではあるが、これは店舗側の加入動機を減らす。なのでここは、店舗の利用者に対する広告費を充てると良いだろう。その店舗に入るとその店舗専用アプリに変身するので、ここでその店舗の広告を表示するのである。これは本来の目的なので、受け入れられやすいと思われる。

一番最初の登録だけは手間だが、これは従来のアプリに比べて何も変わらない。インストールして初期設定をすれば、その店舗にはいるのだから店舗情報がプラスされて、そこからその店舗のアプリになる。二店目以降は、ただアプリを開くだけでよい。それでいて店舗毎にポイントが加算されるから、囲い込みの役割も果たせる。誰も損をしない、究極の使用法だと思うのだが。

2024年10月23日水曜日

シンギュラリティと「場」の概念

 


ガートナーが出しているハイプサイクルによると、生成AIはまだ幻滅期の手前にいるらしい。つまり今後大きな幻滅を経て実用域に進んでいくことになる。その幻滅とは、人間なら当たり前にできることでまだ生成AIにできないことが多く分かってくることによる。そしてその幻滅期を乗り越えるのは、そういうことができるようになるか、そういうことを回避することができるようになるか、となる。

今の生成AIにできないこととして、「以前に自分が言ったことを忘れてしまう」というものがある。例えば「XXはできますか?」と聞いて「できます」と答えたのに、「じゃあやって」と言うとできなかったりデタラメを返したりする。また、回答がこういう観点で間違っているから修正して、と言っても、謝りはするが前と全く同じを返してくる、といったことがしばしばある。

これをアーキテクチャで修正するには、言葉の順序のレベルだけでなく、相互の会話のレベルでフィードバックループを構築する必要がある。つまり、生成AI自体を複数置いておいて、会話単位でフィードバックを掛けるのだ。生成AI自体は複数のニューロンのブロック(塊)を相互接続したものだが、その相互接続済みの生成AIをまた複数並べて相互接続する、といったものになる。

さて、シンギュラリティの鍵となるのは、アーキテクチャをAIが自分自身で変更することだ。現在そのアーキテクチャを持っているAIはないが、上位のAIが下位のAIのアーキテクチャを修正するような仕組みは既に出来ている。もう少し方式を工夫すればできそうな気がする。

その工夫とは、脳の機能である「シナプスの伸び」である。脳は、同じ学習が繰り返されるとシナプスが伸びていってショートカットのようなものが出来上がるが、これはつまりニューロン同士の接続そのものが変わるということだ。これに対して、今のAIのニューロンは、接続は固定で、重み付けのみが変わる。

この違いは何かというと、AIのニューロンの場合は、接続がないニューロン同士では絶対に今後繋がることはないので、ショートカットが不可能である。かといって、最初から全部繋いでおいて重み付けだけで対処しようとすると、組み合わせ爆発が起こって実現不可能になる。脳はこの問題を、粘菌のような仕掛けで回避しているのである。組み合わせ爆発を避けつつショートカットを模索するのが、脳の賢い(?)ところという訳だ。

シンギュラリティにおいても、ニューロンの数を増やすのではなく、このような「ショートカット」を構成する仕組みがあれば、同様のことができるのではないかと思う。これができれば、ニューロンとしては単体のフラットなものを作っておいて、進化させることによって前述の「塊」ができ、更に塊同士の経路ができて、勝手に(今までは人が考えていた)構成が出来上がる。

このためには、ニューロンの「(仮想的な)物理的な位置」と、「ショートカットの動機となる回線(の塊)の関連付け」が必要である。

肝になるのは後者である。例えば今のTransformerの個々のモジュールと相互接続は、人間が考えたものだ。これが自然に形成されるようにするには、「ニューロン同士が近いほど相互接続しやすい」「ニューロンが塊を形成したことを感知する」「ニューロンの塊同士の因果関係(どちらかを刺激するともう一方が反応する)を感知する」といった仕掛けを施せば良い。

このための仕掛けとしては、物理学における「場」の概念を取り込むのが良いと考えている。

場とは、例えば重力場、磁場、電場という意味での「場」である。つまり、ニューロンが発火したらそこには「場」が生じ、場の状態自体が俯瞰して見られるのだ。その場の強さの時系列的比較を通じてシナプスを伸ばしてやるようにすれば、上に上げたような計算機的アプローチより簡単に作れるのではないかと思う。

これともう一つ必要な仕掛けは、脳のランダムな「摂動」である。初期のニューロンは、放って置くとどこも反応しないので、最初のフィードバックに時間がかかる。これに対し、脳がある程度勝手に動くような仕掛けを取り入れておくと、フィードバックも速くなるはずだ。

これを説明すると、赤ちゃんは最初、手の動きを目で見て、手の存在を自覚する。そのうち自分の意思で手を動かせることに気づき、次第に思い通りに動かすできるようになっていく。この時、最初の手の動きは摂動である。ある程度ランダムに動いているところを見せて、それを目で自覚し、今度は意思を入れるとより大きく動く、ということが分かれば、そこに回路が形成される。これを繰り返すのである。

このアーキテクチャ、即ち①多次元位置情報を持つニューロン、②ニューロンの発火を物理的位置情報に転換する「場」、③場の情報を基にニューロン同士の接続を促す仕掛け、④以上の動きを活性化するための摂動、これらが備われば、シンギュラリティを起こす新たなAIになるのではないか、と考える。

2024年10月22日火曜日

メタバース内でマトモに本を読む方法


 自分の知る限りでは、VRChatのワールドで青空文庫が読める図書館があったのと、N高の教室メタバースくらいしかマトモな例がないのが、メタバース内で本を読む方法だ。本や書類がメタバース内で苦も無く読めるようになれば、電子書籍も含めて全部メタバース内に落としてしまいたい、とすら思っているのだが、現実はなかなか難しいようだ。

何が難しいのだろうと考えてみると、①UIの問題、②画面の解像度の問題、③権利(著作権など)と互換性、くらいに分けられるのだろうと思う。これを順番に考えてみる。

まずUIの問題だ。Meta Quest 3など、殆どのVRゴーグルは、コントローラを両手に持つ方式だが、これだと握るトリガーが2つしかなく、細かい操作ができない。また、コントローラの位置を把握する精度も不十分で、ジェスチャーでのページめくりのような細かいことはできないので、ポインターとボタンでめくっているのが現状だ。このため、本の途中から開くとか、パラパラめくるとかいう操作ができない。もしやるならそれに専用のジェスチャーなりボタンなりを割り当てる必要があり、それは自然なメタファーではない。

画面の解像度について考えると、Meta Quest 3では、視野角が110°、角解像度(1°当たりの画素数)が25PPDだそうだ。一般人の視野角は180°、また視力1.0に相当するのが55PPDだそうなので、全然足りていない。25PPDを50PPDにするには、単純計算で画素数が4倍必要だが、流石にそれは難しいだろう。さっさとレーザー式にするべきだ。だがレーザー式はまだ研究段階で、市販されているものはたぶん殆ど無い。

権利問題は、例えばAmazonで買った電子書籍をMetaのHorizon Worldsで読めるか、あるいはそれとKoboで買った電子書籍を両方持ち歩けるか、同じ操作で読めるか、というものだ。電子書籍をメタバースに持ち込むこと自体にまた新たな許諾が必要だし、ましてや他社の書籍となれば同じには扱えないだろうというのは、素人でも想像がつく。スマホやタブレットでもAmazonとKoboは別アプリだ。ちょっと大人げないとは思う。

これらの問題は、一気に解決することはない。このため、最終形態としての理想は語るにしても、その中間形態を考える必要がある。例えばコントローラの完全撤廃は今後数年では実現しないだろうから、コントローラ前提にするならUIを統一すべきである。また画像の解像度が上がらないなら本の方を大きくすべきだろう。

権利問題に関しては、複数のVRリーダーを搭載する方向になるだろう。だがもう一つ裏技はあって、Webブラウザで読むようにすれば、ある程度は解決できるはずだ。今でもWebブラウザはあるのだが、本のように手で持ってというレベルにはなく、視界を防ぐ巨大スクリーンになっている。壁の掲示板を読むようなもので、またURLを指定するなど決して使い勝手は良くないが、まあ当面はこれで凌ぐことになるのかもしれない。

2024年10月21日月曜日

メタバースの不満:パスワード

様々なメタバースアプリをインストールしては試しているのだが、大きな不満がある。パスワードの扱いだ。

新しいアプリを入れるごとに新しいIDを作成する必要があることが多いのだが、そこでパスワードを入力するというのが頂けない。VRゴーグルを被っているので、その新たなパスワードがメモできない。あるいはメモしておいてそれを入力しょうと思っても見えないのだ。多くのアプリは新規登録画面でパススルーを使えないし、パスワードマネージャーも無いので、覚えておいて入れるか、鼻の隙間から覗き見するなどをしなければならない。これは酷い。

あらかじめスマホで登録して、VRゴーグルでのログインを連動させるとか、パスキーにしておいて認証を飛ばすような方式にすべきである。また、

また、キーボードは基本的にソフトキーボードになるのだが、これをどうやらアプリ毎に独自に作っているようだ。となると、そのアプリのIDとパスワードならまだ許せるのだが、Googleアカウント連携でログインしたい時、あるいはWebブラウザからAmazonにログインするときなど、そのアプリがキーボードを用意しているので、ここでパスワードを盗まれる可能性がある。

ここはOSで管理して欲しい。というか、OSの管理であることがはっきり分かるようにして欲しい。アプリの中でパスワードを打ちたくない。あるいは前述のパスキーを使うべきである。

2024年10月18日金曜日

DAPPSサーバレスと省電力

 


ここで言うサーバレスとは、Amazon AWS Lambdaのようなファンクションサービスである。つまり、オンラインサービスに関数を登録しておいて、使いたい時に呼び出すというものだ。ここで、その関数はいくら呼び出しても構わない。つまり、サーバ資源の容量を気にする必要はない。故に「サーバレス」という訳だ。(もちろん課金は掛かる。)

このサーバレスをDAPPSの上に載せてやる。当然ながら、実際にファンクションを実行するのはDAPPSを搭載したコンピュータ群だ。各々が別の思惑でサーバレスを使っていれば、使うタイミングはズレるはずだから、俯瞰して見れば計算機資源の平準化ができる。

クラウドサービスと何が違うのかと言えば、いわゆるDAPPSの強みとして、特定のメーカーや国に依存しなくなる点、ゼロ知識で使える点、大規模災害などのアクシデントに強い点が挙げられる。DAPPSでクラウドサービスを構成するというのも考えられなくはないが、そこまで計算機資源を空けておくというのは考えづらい。もしそれがあるなら、どちらかというと計算機資源の提供で儲けようとする輩だろう。それはそれであって良いサービスだが、ここで狙うものとは違う。

さて、単にDAPPSで実現するだけでなく、その実行マシンをある程度制御できたとしたら、面白いことが起きる。

以前Googleが考えていたシステムがあって、それは実行マシンを常に夜の地域で動かすような制御を行うというものだ。つまり、日中にデータセンタを動かすと、需要も多いし放熱も大変だが、地球の裏側で実行すれば計算機資源に余裕が生まれるし、冷却もやりやすくなる、というものだ。

この考えを応用する。DAPPSの仕組みとして、現地時計を基に、夜間に割当優先度を上げてやることで、これは簡単に実現できる。そうすると、これだけで二酸化炭素排出量の削減に貢献できる。

ファンクションというベーシックなサービスに特化すれば、複雑になりがちなDAPPSも作りやすいだろうし、軽量にできるだろう。その上にDBなりミドルなりをファンクションベースで構築してやれば、複雑なシステムもそのうち搭載できるようになるはずだ。

2024年10月17日木曜日

AIと著作権

 


AIの学習に関する著作権の問題は、実は日本が一番先進的だったのだが、欧米の動きを受けて後退している。学習のためにオープンな著作物を使うことに許諾や対価は必要ない、というのが従来の立場だったところ、オプトアウト(許諾制)にして対価も払うべき、という方向に変わりつつある。

個人的には、対価は不要と考えている。つまり文化庁の旧来の見解が正しいと思っている。なので今の動きは残念に思う。なぜかについて、以下に説明しよう。

文化庁の基本的な考え方は、学習段階ではAIはまだ何もしていないのだから不要、というものだった。AIは学習の段階では何も出力していない。もし何か出力したものがあるのなら、更にそれが既存の著作物に似ているなら、当然これは著作権侵害の対象になりうるのだが、何も出していないのに許諾や対価を得る根拠はない。AIの内部に情報は確かに溜まっているが、溜まっている(だろう)から対価が必要という理屈にはならない。そしてもちろん、出力に対してはいちいち著作権侵害の確認は必要であり、場合によっては対価は発生する。自分としてはこの考えに賛成である。

これに対し、米国脚本家組合のようなところが強硬な反対をしていて、米国では学習の段階で対価を発生させる潮流ができている。日本がこれに倣って見解を変えようとしているのだ。また日本でも作家等が同様の見解を出していて、それに同調するという意味もある。

彼らが言うには、AIの学習は「知識知見等へのタダ乗り」だそうなのだが、繰り返すがそれは出力に対して権利行使すべきである。学習の段階で主張するのは根拠がない。

なぜなら、人間の学習だってAIのそれと同じだと考えるからだ。つまり、人は生まれてから今までの間、絶え間なく大量の著作物に接してきた。自分が書いているこの文章はあくまでも自分の考えで書いているが、これだって過去の大量の著作物を学習した結果として出力しているのである。であるなら、彼らは(著作物には触れた)全人類に対して対価を要求すべきではないだろうか。

人間の学習では対価を要求されず、出力でのみ要求されるのに、AIで学習に対価を要求するのは整合性が取れない。これが自分の考え方である。

ただ、これは一方で、DVDレコーダーにあった私的録音録画補償金を彷彿とさせる。つまり、録画行為はそれだけでは著作権侵害とは言えず、しかし個々の録画の著作権侵害をいちいちチェックするのは事実上不可能だから、広く浅く補償金として徴収する、という発想だ。AIは何れ出力をするが、それをいちいちチェックするのは不可能だから、学習したことが確認できた段階で補償金として徴収する方が簡単ではあり、こちらにはそれなりの道理がある。

だから、私的録音録画と同様の「補償金だ」と言うならまだ理屈は通る。だが「タダ乗り」という今の言い方ではとても納得できるものではない。

学習の段階で課金すると、学習自体にコストが生まれる。これは端的に言えば技術の発展を阻害するものだ。研究段階で、つまり世に出ず世間から料金を回収する目処がない状態で課金されてしまうことになるからだ。これだけで日本が世界に遅れる要因になりかねない。

もう流れは止まらないのではあろうが、自分としては学習段階での課金には断固反対である。

2024年10月16日水曜日

メタバースと物理法則

メタバース上の「モノ」、例えば衣服やアクセサリやオブジェ等は、ワールドをまたいで、あるいはメタバースプラットフォームをまたいで使うことはできない。これを解消すべくMetaは協議会のようなものを開いているが、その成果は未だ現れていない。以前も主張してきたが、プラットフォームとワールドという二段階で世界が分断されている現状は、望ましくない。更に言えば、服のような「形だけ、色だけ」のアイテムではなく、ウォレットや契約書、書籍、あるいは電子機器のような「機能性のあるアイテム」には、全く互換性は無いと言って良いのが現状ではないかと思う。

二次元の画面ではなく三次元の空間を扱うメタバースOSは、全面的にUIを乗っ取るべきではない。メタバース空間自体はあくまでもOSが管理し、アイテム類はOSの上で並行して動く複数のミニプログラムとして存在すべきであり、そのミニプログラム同士でもデータのやり取りを(位置ベースで:近づく、触れる)できるようにするのが正しいのではないだろうか。そしてそのUIとAPIを標準化して、開発ツールとして開放するのだ。そうすれば複数のワールドを渡り歩いて使えるようになる。

そして、メタバースにおけるAPIやUIは、現実世界のメタファを引き継ぐべきである。なぜならそこは3D空間であり、現実世界の模倣だからだ。既存のPCのAPIのように、何のメタファもない状態でAPIを作ってしまうと、自由度がありすぎて互換性が無くなってしまう。これに対してネジには物理的規格があるので世界中で通用する。物理の法則は勝手に作れないから、APIとしても自然に大人しくなり、結果として互換性は増すことになるはずだ。

そこで本提案では、その仕様として①物理法則、②電気、③光学、④情報、を規定するものとする。つまり、メタバース上の「モノ」には物性や電気的特性等を付与し、そこを通じて他の「モノ」と連携するのだ。

従来のコンピュータのUIやAPIは自由度がありすぎ、相互接続が困難だったが、物性なら誰でも知っているし法則も少ない。例えば複数の歯車を組み合わせて時計を作るとか、建材を加工して家を建てるといったことが可能になる。電気で言えば、銅線を巻いてモーターを作ったり、電球を作ったりができるようになる。

情報で言えば、近接通信を設定してお互いがウォレットを近づけると操作可能状態になり、送る側が金額を指定して送れば相手のウォレットに送金される、といったことが可能になる。

契約書の作成については、両者が契約書を手に取り、双方が署名を許諾すると、その場で署名済みの契約書が作成され、両者のアイテムボックスにコピーされるようにするのが良いと思われる。また、契約書に紐づくスマートコントラクトが設定できるようにするのが良い。例えばアイテムの販売なら、モノの所有権の移動と対価の支払いがセットになっている必要があるが、これが契約書に書かれていれば、契約の成立と同時にそれらの処理が自動で行われる。

なお、ステータスウィンドウのような投影画像は、モノではないとみなし、空中に浮かんでいて良い。

こういった法則に基づいてアイテムを作れば、メタバース上のアイテムは、素材の組み合わせによって急速にリッチになる。現実の世界でもできていたように、メタバース内でPCの自作とかモデルガンの改造とかも可能になるだろう。ルーブ・ゴールドバーグ・マシンだって夢ではない。

但し、どこまでも現実世界をシミュレートする必要はない。例えばニュートン力学は模倣しても良いが量子力学まで踏み込む必要はないし、摩擦ゼロとか電気抵抗ゼロとかのいわゆる理想状態も想定して良いだろう。物理的な存在の加工精度や誤差もゼロにして良い。そうしないとモノの動きの計算が複雑になってしまう。

2024年10月15日火曜日

マイナンバー時代のオンライン投票


 日本は未だにオンライン投票が(ほとんど)できないが、エストニアのようにほとんどオンライン投票になっている国もある。なぜ日本ではオンライン投票ができないのだろう、と調べてみると、①脅迫・懐柔、代理投票、成り済まし投票などへの懸念、②クラッキングや悪意による投票データの改ざん、③誰に投票したかがバレてしまうプライバシーへの懸念、が主なものらしい。だがこれらは何れも日本固有の問題ではなく、エストニアでも何ら変わらない。つまりその懸念自体は大きな問題ではなくて、そういった懸念への国民感情こそが違いなのだろう。

さて、日本でもマイナンバーカードが普及し、既に8割近い人がマイナンバーカードを所有している。マイナンバーカードないしはスマホによるマイナンバー認証を前提としたオンライン投票は、技術的にはかなり現実味を増してきているのではないかと思う。いやそれでも不正は云々という人もいるだろうが、それ以外の行政手続きが既にマイナンバー認証でオンライン化している現在、投票だけ特別扱いする理由にはならないと考える。プライバシーの問題に関しても、匿名化の技術は幾らでも存在するし、改ざんの問題に至っては電子化というよりは国の信用の問題だろう。

事情のある人は従来通り投票すればよい話であるし、投票所に電子端末を置いておいて、マイナンバーカードだけ持ってくるということも可能だろう。アプリ自体も、WebのURLを示してPWAで動かすか、あるいはAndroidでもiPhoneでもインストールせずに実行できるInstant Appsという機能があるので、投票のホームページや投票会場でQRコードを示せば済む話だ。何も難しいことはない。

選挙活動もネットを中心にするように移行すれば良い。

  1. 選挙カーは禁止とし、街頭演説のみ許すようする。(選挙カーの移動中は無音必須とする)
  2. ポスターもオンラインにする。従来ポスターが貼ってあった場所には、QRコードを設置する。
  3. 各候補に選挙用ホームページを提供する。中身は政見放送と同様、検閲はされる。
  4. 政見放送も、テレビからネットに移してしまう。時間制限も緩める。検閲は引き続き行う。
  5. 電話勧誘は禁止し、メールやSNSによる勧誘を解禁する。但しSMSはダメだ。またオプトアウトは必須とする。
  6. ネットCMも解禁する。もちろん審査制とする。物量作戦は禁止、また他の広告を圧迫する程度を抑制する。
  7. 新聞広告、新聞への折込は、従来同等レベルの制限で継続する。

未来の選挙とまでは行かず、今すぐにでもできることばかりである。そして選挙費用も大幅に削減できる。国民、候補者、政党、何れにも得だ。なぜ進めないのか、まるで分からない。さっさと進めて欲しい。

2024年10月14日月曜日

包摂Webアプリ


 以前提案した包摂タブレットに搭載するべきWebアプリは、従来型のアプリでは足りないだろうとと思っている。その機能とUIについて考えてみる。

その必須機能とは、先ず第一に、タブレットへのタッチや文字入力(ソフトウェアキーボード、手書き入力)だけでなく、音声入力や画像入力(カメラ)でも対応でき、出力も同じく音声や画像でできること、である。また、振動によって盲の人にも対応できるべきであろう。入力もタッチ(モールス符号など)や外部キーボード(盲用キーボードなど)でできるべきだ。要するに、全ての障害者に対応すべきである。

第二に必要なのは、固定したメニューを順番に選んでいくのではなく、ユーザの曖昧な要求から適切な手続きを選択する方式にすべきだ、ということだ。ちょっと分かりにくいと思うので詳細に説明すると、まず従来型のアプリでは、メニューは階層構造になっている。ハンバーガーボタンから第一のメニューを選び、そこから更に細分化していって、といったような手順で、最終的な手続きに進める。そうではなくて、トップメニューでフリーフォーマットで希望を聞くと、それに合致しそうな手続きの候補が選び出され、曖昧な場合は追加質問で絞り込む、という方向にすべきである。

従来型階層構造メニューの欠点は、各階層のどれに属するかが想像しにくい手続きがあることだ。なので階層を間違えるとまた戻らなければならず、階層が複雑であればあるほど望む手続きに辿り着くのが困難になるのだ。また階層化メニューは、健常者にはそれほど抵抗がなくとも、障害者には途端にハードルが高くなる。これも望ましくない。

だから、最終的な手続き画面のみをDB化しておいて、その手続きの属性を記述した上で、AI検索で顧客の要望を分析して導き出すのである。

この機能とUIは、包摂タブレットには必須であるが、一般的なアプリやWebサイトにおいても極めて有用であり、国や自治体に限らず多くの団体に真似してほしいものだ。

2024年10月11日金曜日

コロナ禍の陰謀論と情報教育

 

コロナ禍ではあまり本ブログを更新しなかったが、この間は陰謀論が跋扈した時期でもあった。コロナは存在しない、ワクチンは危険、アビガン買いだめ、マスクは意味がないなど、実に様々な陰謀論が飛び交った。

この手の人は今だに存在しており、体感としてはむしろ増えている。それも、身の危険を感じるほど増えているように思う。ある程度以下であれば笑い飛ばしたり無視したりしていれば良い話なのだが、これを真面目に語っている人がある程度以上増えてくると、それが世論となってしまい、マトモなことを言っている人が逆に疎外されてしまう。さすがにこれは危険である。

一般的に言って、陰謀論の多くは誤りである。だが例えば、月着陸はウソだとかいうものについては、直接的な国民への害はない。これに対し、コロナ関連については人の命に関わるものであり、つまりは陰謀論を信じてしまうと人が死ぬため、明確に害悪である。これに危機感を感じ、私はあちこちで陰謀論者と議論をしてきた。彼らは自分の考えの誤りを認めることは無かったが、沈黙する(反論を止めて去る)ところまではいった。多くは内心では考えを改めてくれたのだろう、と勝手に信じている。

だが、コロナ発生からもう4年も経っているのに、過去に否定済みのものと全く同じ理屈で全く同じ陰謀論を唱える陰謀論者は、後から後から出てくる。これには流石に疲れる。彼らは以前の議論の記録など知らないし、読めと言っても読まないから、また一から同じ議論を進める必要がある。面倒なことこの上ない。

まあ、後から出てくる陰謀論者は言わば新人であり、彼らにとっては新発見なのだろうから仕方がないことなのだが、こちらからすれば同じことの繰り返しであり、気力の継続にも限度がある。これは個人のボランティアではなく、学校教育で何とか対処して欲しい事柄である。

情報の科目がようやく受験科目になった。そこで大学入試センターの「情報I」模擬試験を見てみたのだが、いわゆる情報リテラシーに関する問題は1問も見つからず、がっかりした。プログラミングも統計処理も大事だろうが、情報リテラシーを教える方が遥かに重要ではないだろうか。確証バイアスフィルターバブルエコーチェンバー生存者バイアスチェリーピッキング疑似科学敵対的メディア認知悪魔の証明、統計情報の正しい読み方、論理学の初歩、といったものをしっかり教える方が、人生においては遥かに必要なことだと思うのだ。

プログラミングができたとしても、陰謀論を信じてワクチンを接種せず、その結果としてコロナに感染して命を落とすようでは困る。いや、困るどころの話ではなく、個人的にも国にとっても多大な損失である。そしてその陰謀論がはびこってきたのは、情報過多の時代に合わせて情報リテラシー教育をすべきところを怠ってきた、教育の責任ではないだろうか、と思うのだ。

今からでも遅くはないので、情報の教育の半分は情報リテラシーに充てるべきだ。残りの半分は、従来のものを圧縮して教えれば良い。文科省の皆様には、ぜひ検討して頂きたい。

2024年10月10日木曜日

終日運用を想定したVR環境

 朝起きてから寝るまでの大部分の時間をメタバース空間で過ごすと仮定した際、各家庭にどんな機器を設置すれば良いかを考えてみる。

現在のところ、VRゴーグルの連続稼働時間はせいぜい2時間である。これを16時間程度に伸ばすには、極端な省電力化か、連続的に給電するか、しかない。省電力化の方法として期待されているのはレーザー網膜投影だが、これはまだしばらく時間が掛かりそうだ。よって当面は給電方式になる。

給電には有線と無線があるが、有線だと手を動かした時に引っかかるので、ここでは無線を考える。後述する無限軌道デバイスから給電してやるのが良いだろう。数m級の無線給電の技術は、実験では色々とされているが、まだ実用化(商用化)はされていない。これは汎用を目指すからこうなるので、VRゴーグル専用とすることで認可は取りやすくなるはずだ。

また、VRゴーグル自体の性能ももっと向上させる必要がある。主には解像度と視野角がまだ足りない。これらを増やせば計算能力も必要だが、これは後述するようにVRゴーグルから外出しすることが可能だ。

次に無限軌道である。歩く走るといった運動をするためには無限軌道が必要だ。市販されているものでは、滑りやすい靴を履いて半球状の台の上を歩くというものがあったが、これは足元が不安定だし、地面の形が平面にならないので好ましくない。

ディズニーが実験的な無限軌道を作っているニュースがあったが、あのようなものが良いと考える。また上の(滑る)市販品の直径はせいぜい1mくらいだったが、人間の運動範囲を考えると1.5〜2mくらいは必要だろう。

無限軌道は必ずしもキャタピラである必要はなく、例えば大量のベアリングを並べてモーターで回すとか、表面を超音波モーターにしてやるなど、幾つか考えられる。個人的には超音波モーターに魅力を感じる。

次に体の動きだが、手首足首にトラッキングツールやマーカーを着けて無線で把握するというものは市販されている。また手にコントローラーを持つ前提のものも多いが、これは止めるべきだろう。

無限軌道デバイスがある前提なら、その無限軌道デバイスからカメラで撮影すれば、トラッキングツールやマーカーは不要なのではないか。つまり、無限軌道デバイスの周辺に複数のカメラを埋め込んでおけば良いのではないか。下から見上げることになるが、見下ろすところはVRデバイスのカメラでできるので、下半身の動きを補強することでバランスがとれそうな気がする。

最後だが、椅子やベッド、テーブルの類をどうするかだ。1日中立っているのは疲れるし、事務作業は椅子に座ってキーボードを叩く、ないしはペンで書く、といった作業が必要だろう。

このためには、無限軌道デバイスをベッドぎりぎりに設置しておいて、寝る時にはそこへ移動する、というのが正解だろう。これで寝るのと座るのはできる。椅子の高さや硬さが調整できないが、これは妥協する。

机だけは解決策がないので、いったんゴーグルをMRモードにして、リビングの椅子とテーブルに移動してから改めてVRモードにする、といったことが必要だろう。キーボードやペンもリビングに置いておく。

ここまでのところを整理すると、①無線給電に対応したVRゴーグル、②無線給電と姿勢検知カメラを内蔵した無限軌道デバイス、これらさえ開発できれば、従来のVR体験にも増してかなりの体験ができることになる。②はAC接続だから、CPUを載せてVRゴーグルの計算の一部を肩代わりすることも可能だろう。これはVRゴーグルの軽量化、低消費電力化に貢献するので、一石二鳥である。例えば無線給電だけでなく無線LANも内蔵させてペアリングしておけば、①からはセンサのデータを飛ばし、②からは計算結果としての左右の眼の動画ストリームを流すだけで済むので、①はかなり小さくできるだろう。

これは今の8万円のVRゴーグルだけの体験よりは遥かにリッチになるので、①②セットで30万円くらいでも売れると思う。もちろんコンテンツの充実は前提だが。

2024年10月9日水曜日

国民生活統合保障制度とプライバシー

ベーシックインカムには反対である、と既に述べているが、社会的にはあまり支持されないものだろう。社会主義の匂いを感じる人もいるだろうし、国が制定する設定生活レベルの低位安定も不安になる。

もし「金銭配布で済ませる」という枠組みを維持したまま社会保障の新しい形を考えるとすると、「オプトアウトによる自動的な保障」が良いと考える。つまり、拒否しない限りは有利になる保障は自動で受けることができる、何も考えなくて良い、というものだ。これなら既存の社会保障はそのままで、手続きのところだけ変えれば済むので、現状から大きな逸脱は起こらない。例えばライスステージの各々による支出の変化にもある程度追従できる。(児童手当など)

健康保険証を提示しなくても健康保険が適用され、後期高齢者になれば自動的にルールは入れ替わり、高額医療費も自動で適用される、・・・ というものである。自動でマイナンバーに紐づいた口座に自動振込される。その内訳を見ることはもちろん可能で、マイナポータルにログインすればよい。

年金の受給年齢をフレキシブルにするなどというものについてはデフォルト値を決めるだけでよい。もちろんそのデフォルト値を変えることは可能だし、変更可能な期限やその選択肢の説明なども通知は行く。バーターになるもの(医療費控除とセルフメディケーションなど)は各々資産の上でユーザに有利なものが選択される。生活保護相当より給料が低い場合は、自動的に生活保護相当との差分が支給される。もちろん生活保護自体の捕捉率も100%だ。

従来の社会保障の多くはオプトインだったので、複雑な手続きや期限があり、使い勝手が悪かった。また生活保護相当者の捕捉率は、わざと低く抑えられてきた。こういうものを解消するのだ。

ベーシックインカムと名付けてしまうと、個人の事情に関わらず一律支給というイメージが付いてしまうが、日本人はこれは好まないだろう。従来の「特別扱い」を維持しつつ支給するには、このようにするのが良いと考える。これを仮に「国民生活統合保障制度」と名付けることにする。

このためには、国民の属性を必要なだけ収集する必要がある。つまり、収入があればその全てを、家族がいればその全てを、病気や障害があればその全てを、当然年齢を、国に知られる必要がある。

これはいわゆる名寄せの危険に対する不安を呼び起こすことになるが、各々は、例えば収入は税務署に、家族構成は自治体に、病気や障害は社会保険庁などに、既に知られている。そしてそれらを基にした補助金の類を既に提供されている。なのでそれは「漫然とした不安」なのだが、もしどうしてもというなら全ては自治体(基礎自治体)に提供し、国には提供しないとするのが妥当であろう。また、職員によるプライバシー侵害には強い罰則を設けるのが良いだろう。

プライバシーの懸念を盾にオプトアウトを断るか、国や自治体を信じて楽になる道を選ぶかは国民の意思次第である。

2024年10月8日火曜日

電子契約の保管


 今後電子契約が増えていくと、その電子契約書の保管場所は問題になってくると思われる。というのは、今のコンピュータストレージはけっこう壊れやすいものであり、長期間そのデータを保持するのは意外に困難だからだ。

例えば、Google Driveに入れていれば良いだろう、などと考えているのでいれば甘い。Googleアカウントはある日突然BANされる危険があるし、操作ミスでうっかり消してしまう可能性もある。1年アクセスがないとアカウントが凍結され、更には消滅してしまうかもしれない。自宅のPCなどは更に危険である。ストレージが吹っ飛ぶ事故は日常茶飯事に起きているからだ。

基本的には個人の責任とはいえ、電子契約の保管は、実は紙の書類を保管するよりよほど考えてやらないといけないモノなのだ。

必要なのは以下のようなものだ。

  1. オンラインストレージであること。
  2. IDは国が管理する法的な根拠を持つものであり、作成も消去も行政手続きが必要なものであること。
  3. 無料であること。
  4. アクセス制御や署名手続きのUIを持つこと。
  5. 法的根拠のある書類の保管に限ること。
  6. 一度アップロードしたら容易に消去できないこと。
  7. クラウド側で多重化やバックアップなどを行い、数十年単位で消えないことを保証すること。
  8. 国際的な互換性を持つこと。
  9. プライバシー、セキュリティを十分に保てること。
  10. 最上級のサイバー攻撃耐性を持つこと。

こう考えると、マイナポータルを拡張するのが最適なのだが、どうもこの議論は全然進んでいないようだ。こういうインフラを国が用意してくれないと、電子契約もなかなか進まない。早急に検討してもらいたい。

一方、ブロックチェーンを使うというアイデアもある。DAPPSでストレージを作っているものは幾つかあるので、ここに保存するというものだ。

ただ、現在自分が知っているDAPPSの中では、自分の希望に叶うものはない。その条件とは、

  1. どこまでも無料であること。
  2. オープンソースであること。
  3. 既に稼働しており、ある程度の人数が使っていること。
  4. IDが汎用であること(特定の企業に依存しないものであること)。
などである。大抵のDAPPSストレージは、容量見合いで金銭を要求するものばかりだが、これはダメだ。容量見合いで計算機資源を要求するものであれば理に適う。こういうものが出現してくれれば良いのだが、誰か作ってくれないだろうか。

2024年10月7日月曜日

行政SNS


 電話番号に基づいたSNSを汎用化して規格化し、行政からの通知をこれに統一するアイデアについて述べる。

この目的は、郵送による通知を無くし、全てをデジタルで完結させることにある。もちろん無くすと言ってもそれは個人単位の選択であり、郵送を続けても良い。

メールではなくSNSを使う理由は、SNSは電話番号に紐づいているため、信頼度が高いためである。メールは制限なく幾らでも作り廃止できるが、電話番号は簡単には改廃できない。これは受信先の識別という意味もあるが、送信元の身元を確認するという意味も含まれている。ユーザの下には怪しいところからのSNSも来るので、正しい送信元であることを確認する必要があるのだ。

そこで、あらかじめ信頼できる送信元は自社の電話番号を登録しておいて、そこからの送信である時のみに特別なマークを表示するようにするのが良いだろう。

そのSNSには用事の概要とURLが書いてあって、更にはそのURLはユーザユニークであり、それをクリックすれば必要な手続きが開始できたり情報が読めるようになっている。URLをクリックすることは開封通知として認識される。

行政からの通知の電子化には色々な方法が考えられる。マイナポータルに統合するのは一番簡単だろうが、これにはどうしても国の指示に従わなければならず、小回りが効かない。自治体が思い立ってすぐに動けるこの方式は、所詮過渡期のものではあろうが、当面は極めて有用であろうと考える。

2024年10月5日土曜日

アルミガラス外枠の家

 

次のような建築を考えてみた。話は非常に単純で、

  • ガラスとアルミだけで作った、外枠だけの建物を建てる。
  • その内側に改めて家を建てる。

というものだ。

いったいこれが何になるのかというと、まず外枠をアルミとガラスだけで作ることで、半永久的にノーメンテで環境を整えることができる。どちらも錆びず朽ちない素材だからだ。そのためにも、例えばシリコンシーラントやゴムパッキン、(アルミではない)バネ座金のようなものすら使ってはいけない。あくまでもアルミとガラス、これだけしか絶対に使わないで済むよう、工夫をする。これに伴って、ガラスとガラスの間などに多少の隙間ができるのは許容する。

その中に家を建てるのなら、寒暖差と風雨の大幅な緩和が為されるので、家自体の耐候性が弱くても良いのだ。例えば屋根のシーリングがいい加減でも、あるいはなくても問題ない。殆どの雨は外枠が遮ってくれるからだ。断熱性も弱くていい。家と外枠の間に(あまり動かない)空気があるからだ。つまり、家の作りを簡素化できるのだ。例えば壁がなく殆ど窓の家を作れる。

現代の家は、透湿フィルムや断熱材など複数の層が重なった複雑な構造になっている。これは建築費を上昇させ、解体時の廃棄物の分別を難しくする。これは設計の難易度も上げるし、地球環境にも宜しくない。特に、屋根が大幅に軽くできることは、耐震性の向上にも貢献する。簡単に作れ簡単に壊せる家は、これからは望まれるものだ。

また、家の外壁や屋根は10年ごとに保守が必要だが、アルミガラス外枠の家には必要ない。外枠は水洗いだけで良いし、内側の家の外壁や屋根は風雨にさらされないので、従来よりもずっと長く保つだろう。これらは保守費の低減に貢献する。

家の外壁をアルミ・ガラスで作ってしまえば同じではないか、と思われるかもしれないが、少し違う。今回想定している外枠と家の間の空間は、庭になる。その庭も風雨に晒されないので快適に過ごせる。台風の日でも庭弄りができるし、洗濯物干しもできる。その干渉空間は十分に広く、家の中に匹敵する快適さがある。また、家の外壁をガラスで作ってしまうと、どうしても風雨は完璧に凌ぐ必要があるため、コーキング材は必須になる。このコーキング材の寿命は短く、保守間隔は5年になってしまう。これは一般的な外壁の保守間隔よりもかなり短い。一方本提案では、外枠と割り切ることでコーキング材を省略し、保守間隔を数十年単位に伸ばすことができる。

ガラス壁のメンテナンスは、美観を維持するという意味では面倒である。しかし近年ではロボット掃除機が発達しており、むしろこういった割り切った外壁のほうがロボットを使いやすいだろう。

2024年10月4日金曜日

メタバース前提の社会はどう変わるか

 

メタバースが主流の社会では、外出の機会が極端に少なくなる。これによって、大きなダメージを受ける業界が出てくる。それは大雑把に観光業と交通・運輸業、飲食業である。観光にはゲームセンターや映画館、大型ショッピングモール、スポーツ関係なども含まれる。また、雨具の需要も減るだろう。こういう業種は、メタバース内での類似の仕事に業種転換することを強いられるだろう。例えばメタバース内に観光施設を作り、入場料を取るなどだ。

それでも外出が必要となる機会としては、①対面が必須の業務、②本物の運動、③医者に掛かること、④メタバースに飽きて本物に触れたくなる、くらいだろうか。

①としては、介護業務や医者・看護師、デリバリーや宅配業者などが考えられる。また②に対応するコーチや④に対応する観光業者なども考えられる。③については、殆ど家の中にいれば感染症に掛かる心配はない一方、運動不足、日照不足、食事の偏りは懸念される。医者に掛かる回数が増えるか減るかは微妙なところである。

一方で、宅配やデリバリーは今以上に発達する。これに対応すべく、宅配に適した構造は進化するだろう。それは端的には宅配ロッカーの進化だ。ロボットカーによる自動配送に対応した宅配ロッカー、冷蔵や冷凍に対応した宅配ロッカー、また階段を登れるロボットカーなどによって、ドアToドアでロボットで完結するデリバリーも出てくるかもしれない。

次に、メタバースの性質からくる細かい問題について議論する。

メタバース内ではアバターを使う。アバターの自由度は現実のファッションの比ではないため、街を歩くアバターの奇抜さには慣れが必要だろう。またビジネスコードも新たなものが必要になる。背広にネクタイ七三分けはもう古いが、獣人や無用にセクシーなアバターはやはりビジネスには相応しくない。どのへんがセーフ、どのへんがアウト、というのは徐々に合意を積み重ねていく必要があるだろう。

また、メタバース内ではワープ(ワールドへのジャンプ)が可能なため、場合によってはプライバシー侵害になったり驚かせてしまったりする懸念がある。ワープ/ジャンプのマナーについても議論がされることになるだろう。これはワールドに「入口」を作っておいて、そこにしかジャンプしないようにする、というのが落とし所になるだろう。また、誰でも入れるのではなく、ある程度の制限が類型化されると思われる。誰でもOK、連絡先に登録している人はOK、リクエスト可能にする、指定した人だけOK、チケットの発行、入館料を取る、家族だけOK、誰もNG、などだ。

メタバース内では、通勤や通学など、移動の時間は殆ど必要ない。このため、従来より自由時間は増える。それを全て労働や勉強に振ってしまうのは勿体ないし、健康にも悪い。このため、国レベルで時間の使い方には制限を掛けて欲しい。今の労働基準法のようなものを拡大して、労働メタバース(勉強メタバース)、睡眠、食事・トイレ等、自由時間の上限下限を制定し、自動で監視する。副業してもサービス残業をしても全てバレる。また勉強も、同じ勉強時間での比較をするようにすれば、受験地獄には陥らない。これもメタバースだからこそできることである。

次に、メタバースでの体験が現実の体験より優れているところについて考えてみる。

メタバース内での全ての人の行動は、メタバース空間提供業者が完璧に把握することができる。またその人のIDを厳密に管理することで、そのIDが誰かも即時に分かる。このことから容易に想像できることは、メタバース内での犯罪やイジメ、それに準ずるトラブルは、現実世界に比べて大いに減るだろうということだ。

例えば、現実の世界で旅行をすると、ホテルや飛行機の都合で日程が制限されたり、予約が一杯で希望するところに行けない、旅行会社がミスをして、あるいは雲隠れして旅行ができない、現地でスリや強盗に遭う、接客がなっていない、混雑していて満足に見れない、暑い寒いなど、様々なトラブルが待ち受けている。下手をすれば病気になったり怪我をしたり、命を落とす危険すらある。

これらの問題は全て、メタバースの世界では起こりにくいし、モノによっては起こり得ない。どんなに人気のスポットでも交通手段が予約でいっぱいになることはないし、病気や怪我をする心配もない。トラブルが起きれば直ちに相手を切って、次に進むことができる。

これは旅行に限らず普段の生活でも同様である。迷惑行為をするご近所さん、タバコのポイ捨て、学校でのイジメやネグレクト、そういったものはメタバースでは起こらない(ようにすることができる)。問題が起きれば証跡を辿れば直ちに分かるから、訴えれば即事実が確認され、対応できるからだ。100%バレる犯罪をする人などいないし、もしいても確実に修正される。その意味で、メタバースは現実世界より安全である。

また、メタバース上には資源問題も食糧問題もないため、メタバース上での戦争や国際紛争は起こりにくい。起きるとすれば宗教や思想信条の対立だが、メタバース上で武力行使をするのは基本的に不可能である。自分のワールドやアバターを他人が破壊することは、そもそも許されていないからだ。もしそれが起きるとすれば、現実の社会において国がメタバース業者に圧力を掛けることだろうが、これはもう現実社会の問題であって、メタバースはそのとばっちりを受けているに過ぎない。一方で言論は大いにやってもらって構わない。

メタバースでは、距離の概念が希薄になるだけでなく、言語も自動翻訳が掛けられるため、言語上の障壁も少なくなる。これによって国際交流は現実世界よりもずっと簡単になる。これは相互理解を深め、ひいては国際紛争を減らすことに繋がる。戦争の最も大きな動機は、お互いの無理解だからだ。

メタバースでは、学習効果が高くなる。紙の教科書に比べてタブレットによる電子教科書のほうが学習効率が高い、ということは既に証明されているが、これがメタバースになれば更に立体的な視覚効果が使えるので、学習効果が更に上がることは間違いないと考える。これは学校の勉強だけでなく、社会のあらゆる学習場面で効いてくる。このため社会の進歩の速度は一層進むと考えられる。

逆にメタバースのデメリットを考えてみると、匂いや味はほぼ伝わらない。観光旅行で現地の食事を食べることができないというのは、人によっては致命的だ。もちろん通販と組み合わせて疑似体験することはできるのだが、自分で調理や解凍などをする必要があるのは興ざめである。またメタバースは視覚を主に使っているため、盲の人には殆どメリットがないと思われる。

運動不足になりがちというのもデメリットだろう。例えば短距離走をメタバースで行うのは無理がある。砲丸投げやり投げ、テニス野球、鉄棒鞍馬吊り輪新体操など、メタバースでは困難な競技はごまんとある。

これらより、人がメタバースに留まる時間について、公共の視点から何らかの制限が掛かる可能性はあるだろう。例えば週休二日としてその二日は運動や外出を勧められる、等だ。

2024年10月3日木曜日

サイコパスの増加に関する仮説

 

石丸某とか斎藤某とかの言動を見ていると、どうも人間の通常の思考回路から離脱しているような屁理屈を、方便としてではなく本気で信じているかのように見えるところがある。巷の分析ではサイコパスの疑いが濃厚だそうだ。こういう人が立て続けに出てきたことには、象徴的な意味があるのではないかと思う。

まず、サイコパスという言葉は正式な医学用語ではない。では医学的にはどう言うかというと、「反社会性パーソナリティ障害」というのだそうだ。略してASPDという。

https://ja.wikipedia.org/wiki/反社会性パーソナリティ障害

これをざっくり言うと、通常と著しく異なる発想や行動を取る(パーソナリティ障害)もののうち、その発想や行動に反社会性があるもの、ということになる。そしてパーソナリティ障害には他にも「依存性」「強迫性」「不安性」「瞑想性」など多数あり、特定の一つだけでなく多数が重なっていることもある。

サイコパスの場合、自分を守るあるいは自分の欲求を満たすためなら倫理や法律を無視しても構わない、という根本がまずあって、ここから嘘をつく、他人を騙す、そのごまかし方、屁理屈のこね方が上手い、更に他人の(主に心の)痛みに対する共感力が無い、といった特徴がある。だから相手がいくら傷ついても自分は平気、傷つけることを厭わない。

この「嘘」だが、事実を捻じ曲げるという方向もあるが、屁理屈とも言う通り、論理を捻じ曲げるのも彼らの得意である。一見正しそうだが実は間違っている論理というのは世の中に多数あるが、サイコパスはこれを(知った上でかどうかは分からないが)巧みに使いこなす。

事実の捻じ曲げ方のテクニックとしては、「多数ある情報のうち、自分に都合の良いものだけつまみ食いする」いわゆるチェリーピッキング

https://ja.wikipedia.org/wiki/チェリー・ピッキング

行為がよく使われる。斎藤某の場合は、議会満場一致で不信任になったのに、「辞めないでください」という高校生の一通の手紙を頼りにまた選挙に出ようとしている、といったことが挙げられる。前長野県知事の田中康夫氏は、斎藤某と同じく議会で不信任を受けた後に選挙で知事に返り咲いたが、このケースは田中氏が「議会には嫌われているが民衆には好かれている」という事実を見据えたものだった。今回の斎藤氏は民衆にも明らかに嫌われているので、冷静に考えれば落選は確実と判断すべきところ、そういった量的な分析ができていない。

チェリーピッキングと似た行為として、恣意的な論理展開がある。「論理展開における前提条件についてのチェリーピッキング」を行い、自分に都合の良い論理だけ主張する、というようなものが代表的だ。

人が会話をするとき、あるいは議論をするときでさえ、論理的に完璧な因果関係というのはなかなかない。その背後にある条件が変われば因果関係は弱まるし、逆転することすらあり得る。だから議論をするときにはその前提条件に常に注意する必要があるのだが、それを意図的に無視すれば自分の都合の良い論理展開ができる。

石丸某が職員と議論している動画で、石丸氏との会話より先約があった別の人との会話を優先させたことに対して職員を問い詰める、というものがあった。ここで石丸氏が駆使した手法がこれである。優先順位の付け方における原則とその前提条件の扱いを、意図的に捻じ曲げたものだ。

より上位の上長との会話を優先させるのは部下としては当然だが、それは先約がない場合の話である。この時は先約があったので、その先約と上位上長たる石丸氏のどちらを優先すべきかについて職員は石丸氏に尋ね、石丸氏が「いいですよ」と言ったので先約を優先した。しかし彼はそのことを後からなじったのである。前述の映像では、上位上長との会話を優先すべきという原則論のみを展開し、職員が「いいですよって言いましたよね」と何回も言っているのに、それを無視して原則のみを言い続けていた。当然会話は成り立たない。

大局的に見れば、ツマラナイ押し問答を繰り返して時間を浪費するよりも、さっさとしたかった会話をすべきだ。だが彼は、自分が後回しにされたことが気に食わなかったので、屁理屈をつけて職員を非難することでスッキリしたかったのだろう。目的が個人レベルの粗末なことであり、それを達成しても市民の役には立たない。時間の無駄であるし、今後の職員の心象は悪くなって結局自分に不利になる。当然、彼自身も含め、誰のためにもならない。公人しかも首長としての仕事の優先順位の付け方として根本的に誤りである。

ちなみに、この2つのテクニックは陰謀論でもよく使われるので、知っておくと役に立つだろう。

さて、私は最初に「象徴的な意味がある」と言った。

https://spockshightech.blogspot.com/2017/09/blog-post_17.html

https://spockshightech.blogspot.com/2019/05/blog-post_8.html

https://spockshightech.blogspot.com/2017/01/blog-post_8.html

このような投稿を過去にしているのだが、そのどれもが「ストレスの増加」を原因として、その結果として「不寛容」「右傾化」などが起きているのだが、「サイコパスの増加」もこの一つとして数えられるのではないだろうか。つまり、幼少期に強いストレスがあって、彼らはそのストレスへの自己防衛としてサイコパスになったのではないか、と思うわけだ。

サイコパスの特徴である「自己中心的」「共感力がない」というのは、別の視点から見れば精神的な自己防衛とも考えらえる。だから、ストレスが大きい社会ではそういう人が増えるというのは因果関係として納得できる。

彼らは、その強いストレスのお陰で自分に対する自信を失っており、相手との協調協力は始めから行うつもりがない。支配か服従かしか選択肢がないと思っているのだ。そしてもちろん服従するつもりはなく、支配する側に回ろうとする。それが自我を保つための全てなので、そのためには何でも許されると思っているのだ。

右傾化も不寛容も同様で、やはり心理的な視点からは自己防衛と言える。それらと同列なのではないか。つまり、強いストレス社会において、ある人は不寛容に、ある人はサイコパスになり、あるいは右傾化する。陰謀論者も同列だろう。そしてその数が多くなれば、首長にもそういう人が目立ってくる、というわけだ。

世の中が不寛容社会になり右翼やサイコパスが世間に増えてくれば、それを(優しく)咎める人も減る。教育の効果も落ちるだろう。そういうものが負のスパイラルを描いているのではないだろうか。

この仮説が正しいかどうかを検証する必要があるかどうかは分からないが、ストレスが低い社会を目指すというのは、この仮説に限らず現代社会が進むべき方向性だろうと思う。

とここまで調べたところで、改めてサイコパスの環境依存性について調べてみたところ、サイコパスには遺伝的要因が大きいということが分かった。ガックリである。

2024年10月2日水曜日

メタバース警察

 

メタバース内でも犯罪は起こり得る。既に問題になっているのは、メタバース内での集団レイプ事件だ。アバターだからといって精神的被害がない訳ではない。実際に発生した事件では、現実の警察で捜査が行われている。

現実の警察が動くことがあるとしても、メタバース上で犯罪が起きてから実際に行動するまでは長く時間が掛かり、多くの証拠は失われてしまうだろう。だがメタバースは全てコンピュータ上で動いているので、犯罪が起こればシステム側がその証拠を確実に抑えることは可能である。例えば誰のアバターがどこにいてどんな行動をしたかは、証跡を取れば分かる。だからメタバース上の犯罪捜査や抑止は、メタバース空間提供業者の中で専門の組織を組んで、これに当たるべきである。

この組織は常時メタバース上に待機しており、ユーザの「110番」(通報)を受ければ秒速で現地に飛び、被害者と加害者を各々別の隔離された空間に飛ばす。そして各々事情聴取すると共に証跡を取り、裏付けを確認する。そしてそのレベルに応じて注意、ID停止、ID剥奪、警察への通報等を行い、被害者には裁判に必要な証拠を提供する。マスコミへの公表等も行う。

通報を受けずとも、犯罪発生率の高いところは巡回したり、犯罪のパターンを調べておいて証跡から自動警告するような仕掛けも作ってほしい。逃れようのない証跡が常に残るので、犯罪の抑止は現実よりずっと簡単なはずだ。

このためにも、IDは公的な身分証明書と対応させ、ブラックリストも作っておくべきだろう。ID作成時の契約条項にも、当然これらは書いておく必要がある。

2024年10月1日火曜日

全てAIが対応します


星新一のショートショートで、今でも覚えているものがある。全ての人の肩には鳥が留まっていて、その人が本音を言うと、鳥が当たり障りのない言い方に変換して相手に伝えてくれる、というものだ。今、生成AIがメールの下書きをしてくれているのを見ると、正にこれだな、という感がある。

肩に鳥というのは寓話であるが、これがアバターならもはや完璧だ。人がメタバース上で交流するようになれば、この鳥は完全に隠れた存在となり、もはや相手には鳥がいることが分からない。言葉もそうだが、態度も表情も全て、AIが一枚噛んだ状態で接するしかないことになる。

メタバース上のコミュニケーションでは、この問題が付いて回る。相手が実はAIだった、というものも含めて、相手の本当の人格が分からず、自分の人格も他人には分からない。メタバース上で友人になったり恋人になったりしても、それが本当の相手とは限らないわけだ。

今の時代、メタバース上でカップルになった人はそこそこいるらしいが、それは容姿のみしか隠していない。将来上記のようなAIが実用化した時、言葉も態度も全て隠した状態で相手を好きになったとしても、それは本当のことなのかどうか。これは社会問題になるだろう。

その先には、「生身の人間が一人づつ殺されてAI人格に置き換わっていく」といったSFも書けるだろうし、「生身の人間との相対は全てAI人格になり、人格を磨かずとも人は幸せになれる」という籠の鳥状態の人間が多く出てくることも予想される。そういう世界では人同士が生身で会う機会が極端に減り、これは人口減に直結するが、社会はAI人格で回るのでそれが問題にならない。そして本物の人口はどんどん減っていき、人類は穏やかなる滅亡を迎える、というシナリオを書くことも可能だ。

上のシナリオで、人類が穏やかに滅亡するとしても、その個人個人は全く不幸ではない。むしろ世界の誰でも理想的な生き方、死に方ができて、幸せこの上ないはずだ。戦争も起きないし、動物の絶滅もないし、地球環境は維持できる。人類以外にとっても、それは理想ではないだろうか。

それは人類にとって、マクロで見ると防ぐべきなのかもしれないが、ミクロで見ればその幸せを取り上げることになる。大衆は賛成してくれるだろうか。滅亡を他人事として自分が幸せなら良い、という人が大部分ではないだろうか。事実をAIに隠されることも含め、これらは真面目に考えるべき問題である。

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