2017年2月10日金曜日

5Gの先


電波は有限だから、この先幾ら通信事情が良くなろうともデータ転送の上限は存在する。もしユーザの通信量がどこかで頭打ちになり、電波に未だ余裕があれば別だが、次から次へと出る欲を満たせなくなった時に何が起こるか。そしてそれはどのくらい未来で、通信量の上限はどの辺りにあるのだろうか。
まず、5Gの無線通信についてドコモが出しているホワイトペーパー
によると、その目標は屋外で1Gbps、屋内では10Gbpsを目指しているという。また遅延は1ms以内を目指している。同時接続数は100倍くらいになる。
1Gbpsと言えばもう光ファイバーの速度だから、もし実現すれば有線接続は不要、とまで言い切れるだろう。だがここには穴があって、コストに関しては何も言っていない。ドコモの10GBプランは1万円もする一方、光ファイバーは5千円で使い放題だ。幾ら通信速度が速くても、これでは使えない。
で、現状1Gbpsで満足できるのかというと、例えばNetflixの4K画質の推奨速度は25Mbpsだそうだ。これが8Kになってもせいぜい4倍、つまり100Mbpsなので、1Gbpsは充分に余裕を持って流せる。今のスマホに4Kや8Kの流れが来るとも思えないが、もし来たとしても対応できることになる。
更に、これを3DやVR対応にすることによって、もう数倍の帯域が必要になる、ということも考えられるが、3Dなら2倍、VRなら画角が増えるにしてもせいぜい8倍だろう。更にこれらは屋外では使えない(危ない!)ので、速度としては充分に余裕があることになる。
一方、IoTが普及することも考えられる。これらが大量の動画を垂れ流すことがあるとすれば監視カメラだろうが、さすがに常時垂れ流すというのは考えづらい。既に人感検知や画像解析の技術は進んでいるので、そんな無駄なことはしないだろう。また、一度ネット空間にデータが来てしまえば、その後の分析などは有線で行われるはずだ。監視カメラ以外で小さいものがいくら大量にあろうとも、1Gbpsの帯域を使うようなデータが発生するとは思えない。
他に考えられるのは、動画放送やVODが普及して、大量の動画チャネルが生まれることだ。今のCATVやCSと違って、設備さえあれば野良でもできるから、そういったものが大量に飛び交う可能性はある。だがこれも、放送ではなく通信になるので、見る側の数、つまり人間の数が上限になる。今とさほど変わるとも思えない。
機械学習でも大量のデータが行き来するが、これは必ずしも無線を通す必要はなく、最初(指示)と最後(結果)だけでよいはずだから、やはり無線空間は圧迫しない。
8Kより上、例えば16Kとか32Kとかがその先にあるのかというと、これまたハッキリしない。ただ、VRであれば広い画角が求められるので、16Kや32Kというのはあり得る。それでも無線で屋外というのは考えにくい。
映像以外で大量の情報量が必要になるものは他に考えられない。例えば触覚や嗅覚など他の感覚を全部付けても、その百分の一にも満たないで足りるだろう。個人が原発内部のコンピュータシミュレーションをするとも思えないが、したとしても無線で大量のデータをリアルタイムにやり取りすることはないはずだ。
何時の時代でも、その予想を超える応用や新しい需要は発生したものだからなんとも言えないが、「今のところ」で考えると、5Gの先が必要となる必然性はまだ見えない。

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