2017年2月22日水曜日

今、できないこと


長年技術ウォッチを続けていると、自分の予想が外れることはよくある。それを振り返ってみることは、将来への予測の精度を高めることにもなる。技術に関していうと、タイトルの「今、」というところが凄く重要になる。
時々、科学的にはトンデモな記事が出てきては話題になる。永久機関がその代表的なもので、ここ数年でも3、4件は目にしている。こういったものは「永遠に実現不可能」なものだ。これに対し、今は不可能だが将来的にはできるようになる、というものもよくあり、また多くは実現しない。
それを分類すると、次のようになる。
  1. 技術の進歩が予想外に遅い、または多額の費用が掛かる
  2. 社会構造や法律を変える必要があり、その変更に対する抵抗が大きい
  3. 開発者(先行特許取得者)に技量がない、あるいは金儲けに走って訴訟合戦になるなどしてメジャーになれない
  4. 普及に関し卵と鶏の関係があり、且つ開発者に資本力・調整力がない
  5. 競合に負けて潰される
半導体音楽プレイヤーが出てきた初期、市場は混沌としていたが、勝者はiPodだった。この理由は技術的なものではない。もちろん使い勝手も技術のうち、という考え方もできるが、決定的だったのは、CDの取り込みではなく、音楽制作会社の多くが参加したことだった。これは4.の例だ。
セグウェイの失敗は2.に当たるだろう。DVD普及の陰には3.による他形式ディスクの失敗がある。NCがNetPCに潰され、結局NetPCが普及しなかったのは5.に当たるだろう。
さて、問題は1.だ。例としては電子ペーパーのカラー化・大画面化がある。キャノンのSEDテレビもそうだ。もっと緩いものしてはプラズマディスプレイもある。これを性格に見極めるのは難しい。特に技術が最先端であればあるほど、素人にはそれが難しいものなのかどうか分からない。
技術の解説は、専門雑誌などを見ればそこそこ解説されている。自分もそれを読むのだが、それでも見極めは難しい。もしかしたら開発者の技量や会社の体制まで見なければならないのだろうか。そうであれば外部からの予測はそもそも困難だ。
だが、これも「本質的に難しい」というものと、「他の技術の進歩によってこちらの進歩も加速される」というものがある。今、電子ペーパーのカラー化は難しいが、本質的に難しいのではない。例えば材料工学がAIの支援で進歩することが貢献するということもあり得る。
趣味は未来予測ではなく夢想なので、2.~5.を詳しく考える気はないのだが、1.だけで考えても、例えばAIを大々的に投入するならそれなりの資本力が必要だから経営判断も必要、となると、2.~5.を考えざるを得ない。そんな中で上手く予測(夢想)が当たるのが嬉しい。
未来予測の中でも、上の「本質的に無理/難しい」のか、「他の技術の進歩によってこちらも進歩し得る」のかを見極めるのは大事なのだが、ここを混同する解説者も多いので注意が必要である。永久機関は論外としても、難しさにもオーダー
はあるのだ。数倍難しいのか、数億倍難しいのかを区別せずに論じてはいけない。これも一種の量的議論と言える。

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