2017年2月13日月曜日

根が悪い


核廃棄物の処理の話だ。
現状では、ガラス固化体にした上で地層処分することになっている。だが、何せ時間軸が10万年だし、そうでなくとも30年以内に東海地震が発生する確率が何%、などの試算もある国だ。火山の噴火だってしょっちゅうある。そんな国で地層処分を考えるのは、技術的に言うと「根が悪い」と言える。
「根の良い」「根の悪い」というのは、技術屋がよく考える発想だ。プログラムで言えばコーディングルールとか言語の選択、建築で言えば難燃性仕様や耐震設計手法、フールプルーフとかバリアフリーとかいうのもこういった範疇に含めてよいだろう。要は、同じことをするにも、不具合の出やすい設計、出にくい設計というものがあって、当然ながら少々目先のコストが掛かっても後者を目指すのが無難だ、ということだ。
高レベル放射性廃棄物以外にも、原発を勉強してみると「根の悪い」設計が多く見つかる。建築など巨大なプロジェクトでは良くあることかも知れないが、「何でそう考えるの?」と首をひねってひねって、一回転してしまうようなことばかりだ。
高レベル放射性廃棄物の処理について、一つ考えてみた。まず、ガラス固化体を作る要領で、ガラスと混ぜる。次に、キャスクに入れるのではなく、ビー玉を多数作る。このビー玉を再度ガラス材料に溶かしてしっかり混ぜる。そして同じようにビー玉を作る。これを繰り返す。その結果、安全な線量のビー玉が大量にできる。
ビー玉にする理由は、その大きさ当たりの線量に上限を設けることにある。エントロピーの法則により、一度分散した放射性物質が自然に再濃縮することはない。放置しても問題ない(ように設計する)ので、十万年でも百万年でも問題ない。後は海にでも砂漠にでもばら撒けばよい。
さて、この案の現実性を検証してみる。製造直後のガラス固化体の放射能は、表面で1500Sv/hだそうだ。また、法律上管理区域としなくてよい量は0.6μSv/hである。単純に換算すると、25億倍に薄めればよいことになる。1立方ミリメートルのものを1立方メートルに薄める感覚(これで10億倍)だ。日本のガラス固化体の量は2万5千本相当で、1本500kgだそうだ。これで換算すると、ビー玉の量は31兆トン、となる。人類が今まで生み出してきた人工物の総量は30兆トン
だそうだから、これはとんでもなく非現実的だ。また、10倍や百倍程度の効率化では全然追いつかないことも分かる。
今更ながら、これ以上高レベル放射性廃棄物を作る(つまり再処理をする)のは止めて欲しいのだが、上の計算の通り、既に存在するものの処分は別に考えなければならない。
この場合の「根の良い」処理とは、埋めたり宇宙に捨てるという方向ではない。大きくは①減容、つまり放射性物質を性質毎に分離して処理方法を個々に変える、②薄める、③核変換、などが考えられる。だが、既にできてしまったガラス固化体には①は使えない。②は上の通り非現実的、③はまだ研究段階だし、既にできてしまったガラス固化体に使えるかどうか不明だ。
今更遅いが、結局、原発における値のよい設計というのは、「技術が成熟するまでは商用に使わないこと」なのだなあ、と想う。

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