先日の展示会で発見した、DataRobotという会社がある。ここの会社の機械学習プラットフォームは、データを読み込んだ後、たくさんある機械学習アルゴリズムのどれを使ったらよいかを経験から選別し、更にはそれを実際に適用した結果を基にPDCAを廻す、ということを行う。
AIと言えば深層学習、と短絡的に思われがちだが、実際には多数のアルゴリズムがあり、更には各々にパラメータがある。そのどれをどのように使うか、更にはそれを組み合わせる、というのは、AIエンジニアとかデータサイエンティストと言われる人たちの力量によっていたわけだが、そこが自動化される。
勿論、このシステムを作った人たちは一流のデータサイエンティストな訳で、その意味でデータサイエンティストが居なくなるわけではないが、これを使うことでAIがブラックボックス化され、更にはそこら辺のショボいデータサイエンティストは不要となる。これを使ってビジネスをしようとしている、AIに疎い一般企業にとっては朗報だ。
従来、これに近かったのが、Amazon Machine Learningだったが、こちらはアルゴリズムが固定で、どちらかと言えば初心者向け、お試しの色が強かったが、こちらは実用に耐えうる。これで本格的にAIの普及に弾みがつく。
中レベルのデータサイエンティストが全く不要になるというわけではない。このシステムに食わせるデータの質、量をどのようにするかはまだ考える余地があるからだ。既存のシステムのログをクレンジングしたり、不要なデータを消して課金を節約したり、精度を上げるためには何が必要かを考えたり、という仕事はまだ残されている。
一般企業が考えるべきは、この機能を使って何をするかだ。単純には売上げを伸ばすために何をすべきかを導き出すことだが、これは広く言えば最適化である。従業員の配置や労働時間の調整、店舗のレイアウトや新製品を出すタイミング、営業の訪問期間やプレゼンなど、機械化されていない最適化の問題はごまんとある。
スポーツが個人でなくチームのスポーツになってしまい、突出した天才が現れなくなったのと同じように、ビジネスもAIによるバランス調整が不可欠になる。しかもその項目は多岐詳細に渡り、そうとうがんじがらめになるだろう。そうすることで数倍の効率化を行うことは可能と見る。
先進的な企業がそういったアクティブな遣い方をする一方、通常の企業においては、標準的に導入している情報システム、例えばグループウェア、メール、勤怠管理、給与、税、財務会計、資材管理、調達、Web、CRM、などと言ったもののログをこのシステムに投入して、出力に複数のKPI(売上げ、利益、残業時間、顧客アンケート満足度など)を併せて設定して、後は全自動で廻すような一括プランが登場することになるだろう。
これは、いわゆるブラック企業の撲滅にも繋がる。従業員の健康や満足度を配慮しないのがブラック企業の特徴だが、システムにAIを繋いで分析すればたちまち実態が分かってしまうからだ。残業をごまかしたとしても、私物携帯やSuicaの記録、オフィスの電力消費記録などはごまかせない。また、不景気のときに研究費を落とすとか採用を減らすとかいったことの是非も、次第に明らかになるだろう。
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