2017年4月11日火曜日

ホロデッキの実現


周囲を全てホログラムで囲い、あたかも別の場所にいるかのような錯覚を起こすことができる空間。SFではよく出てくる設定だが、技術的にはまだ困難だ。
だが、ホログラム(立体映像)でなく単なる映像でよいなら、あるいは偏光メガネによる3Dでもよいなら、今でも可能である。周囲を全てスクリーンで覆い、プロジェクターを多方向に向けて投射すればよい。カネはかかるが、べらぼうというほどではない。実際のところ、ゲーム開発ベンダなどでは自前で持っていたりする。最近は短焦点距離プロジェクタも多数登場しており、広い部屋も必要ない。例えば四畳半程度の部屋であっても、相応のことは可能である。
技術的には可能という前提で、どんな使い方が考えられるのだろうか、想像してみた。
  1. 現状、HMD向けに開発されているVRコンテンツの多くは、ここに転用できるだろう。即ち観光、ゲーム、体感シミュレーションなどだ。HMDが不要なので視野角は更に広がり、臨場感は増すはずだ。ただ、基本的に近景は苦手であるので、クローズアップを多用するコンテンツ(サマーレッスンなど)は向かない。
  2. 多人数でも使えるので、それを前提としたコンテンツは伸びるだろう。スポーツの試合の中継やコンサート映像を流して仲間うちで盛り上がる、などが考えられる。
  3. 逆に、リラクゼーション関連のコンテンツは、HMD向けにも開発されてはいるが、こちらの方が向いている。海岸や草原などの自然、燃える薪などを延々と流すものがそれで、簡易ベッドを持ち込んで寝転んだり、ヨガをしたり、といった類のものだ。
  4. カラオケルームの部屋のうち幾つかが、これに改造されるかも知れない。
  5. 防音室のように、部屋の中にまた部屋を作るキットが発売されるかもしれない。ただ防音室と違って壁との距離はある程度必要である。焦点距離が壁に固定されるためだ。
  6. 部屋の中央に一人だけ座るという前提で、偏光フィルタ付きの度付きメガネをかけることにより、壁の距離を無限遠に騙すような仕掛けは考えられる。この場合、壁面は球状になる。その効果は部屋が狭くてもよいことで、例えば頭の位置から壁までの距離が1~2m程度の商品もあり得る。
  7. 映画でも実験的なものが作られる可能性はあるが、現状でもプラネタリウムで上映されているようなものはあるので、映画館として新たに作られる可能性は低く、あまり伸びないのではないか。
  8. テレビ会議に取り入れられると、臨場感が増して効果が高い。但し帯域は多く使うのと設備費が掛かるため、少なくとも初期には一部の高級品に留まるだろう。
  9. 同じく、遠隔授業や遠隔医療に応用されるだろう。これも現状ではテレビ会議で行われているものを、臨場感を増す目的で強化するものだ。
  10. 本物を見れないところ、CGを駆使して映像化するようなものが考えられる。例えば原発の内部に入って放射線量の動きを可視化したり、体内に入って病巣を色々な方向から見たり、太陽に接近してフレアの動きを体感するようなものが一つ、また実物がないものの実体化、例えばネットワーク上のカネの動きを可視化するようなものも考えられる。何れもシミュレーションの一種と言えるが、エンタテイメントだけでなく、教育・研究・分析などに使える。
  11. 海外のマニアが、TNGの劇中で登場したコンテンツを再現する。国内のマニアが、銀英伝の帝国軍の艦橋を再現する。
技術的な困難さはそれほどないはずなのでさっさと作って欲しいのだが、難しいのはコンテンツの方だろうか。何れにしてもはやいとこ体験したいものだ。

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