2017年11月15日水曜日

ロボット化と貧困層の富裕化


AI化、ロボット化によって奪われる職の代わりになるものは何だろうと考えていて、それは貧困層が豊かになることかもしれない、と思った。ちょっと矛盾するようだが、そう思える根拠もある。

今の日本は、世界的水準で言えば「ものすごく」便利な国だ。コンビニはあちこちにあり、街中にタダで飲める水道も多数ある。気候は温暖であり、寒い冬でも公共の場には暖房が入っているところが多い。治安も良い。東日本大震災の時に作られた仮設住宅を見て、「自分の家より良い」とつぶやいた外国人は多かった。生活保護の仕掛けもある。

そんな中で、中下位の職業がAI化、ロボット化されたとする。その結果、例えば1食200円でカレーが食べられるようになれば、給料が安くなっても食べていけるだろう。携帯電話を格安のものに変えれば、固定電話がなくても職探しができるし、ある程度の娯楽にもなる。ネットカフェにシャワーがあれば、何日も風呂ナシで臭くなって敬遠されることもない。リサイクルショップやネットフリマも充実してきている。LED電球は安くなり、数年で元手が回収できるレベルになった。

つまり、収入は減るが支出も減る、ということだ。このうち幾つかはテクノロジーの進歩とは一見関係ないものも含まれているが、間接的には恩恵を受けているし、何れも最近富に発展してきたものだ。

AIやロボットが増えることで失われる職業はどの層を直撃するのか、色々と意見はあるけれども、比較的簡単な判断をしているホワイトカラーの下位層、年収で200万~400万円程度の層が危ないように思える。一方で、そういう層の成果物は外食やクリーニングなどのコンシューマー向けサービスが主力だろうから、そこの値段も下がる。

意思決定層が減っても実務層はそう簡単には減らないから、ユーザーから見れば単に安くなっただけに見える。そうすれば年収下位層にとっては給料が上がらずとも生活は楽になる。一方で生活保護層の収入は変わらないから、その間はいわば圧縮されることになる。

つまり、個々人で見れば確かに失業や派遣社員化で年収が落ちる場面はあるが、同じ年収層で新旧を比較すると、物価が下がる分楽になる。一方で生活保護層の人数は増えるにせよ、生活保護に入った時点でそれ以上年収は下がらなくなるからやはり楽になる、という構図だ。

これの究極の姿がベーシックインカムである、と言えるかもしれない。もちろん生活保護を受けていない世代にそれを支払うかどうかというところは違うが、その層がほとんどいなくなれば、実効としてはあまり変わらないからだ。

生活保護を受けているのは最貧困層であるはずだが、それでもまともな家には住め、医療費はタダ、食べ物も(拾ったり自分で育てる必要なく)なんとか買ってこれる、コンビニも当然使用可能、ちょっと節約すればギャンブルも可能。こんな国を新興国はやはり羨ましいと思うのではないか。

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