2017年12月11日月曜日

手先の器用なロボット


ハウステンボスの「変なホテル」、Amazon.comの「Amazon Go」、アメリカの無人レストラン「Eatsa」など、先進的な無人サービスが増えてきている。ただ、全部を無人にするというのはやはり極端で、総コスト低減を目指すのであればあまり良い選択肢ではない。たとえばコンビニなら、商品の補充や盗難防止のためのさまざまな設備のコストまで考えたら、人を一人雇うほうが安い。

そんな中でも、少しづつ自動化、無人化の波は押し寄せてくる。その中でもレストランは格好の実験場になるだろう。大きな興味があるのは注文、レジ周辺、掃除・後片付け、皿洗い、食材準備、調理だ。各々独立に自動化が進んできたが、この中でも特に後者四つは今後伸びそうに思える。

例えば皿洗いには食器洗浄乾燥機が既にあり、業務用のものも存在する。だがまだ場所をとるし高価で、融通も利かない。それが、既存のシンクだけ使って手洗いするロボットができればどうだろうか。あるいは、文句も言わずに早く出てきて巨大なボウルいっぱいに千切りキャベツを作ってくれるロボットはどうか。そしてそれらが全て一台でできるとしたら。

汎用の「手」を使って汎用の作業をする研究というのはあまり進んでいないが、近年の画像解析や機械学習の進歩を見ていると、こういったロボットが出てくる日も近いのではないかと思えてくる。

ASIMOや産総研のロボットたちは、近年のAIブームの前に立ち上がったものばかりだ。これらにAIを適用する研究は行われているようには見えないが、「手」「腕」というハードウェアを固定した上でいろいろなことをAIにやらせる研究というのは、比較的横展開が簡単で、同時並行で一気に技術向上が可能なように思える。

そうなれば、皿洗いと仕込みは別のAIにつなげばよくて、I/Oは同じ「手」と「腕」でよいから、厨房に何台も用途が異なるロボットがひしめく事態は避けられるし、皿洗いの上手さや融通のよしあしでAIにリアルタイムの値付け(時給)を払ってもよい、という理屈になる。

いきなり皿洗いや仕込みといった衛生面や水に対するものは厳しいかもしれないが、動きの学習に関しては同じことだ。専用の機械の方が効率が高くとも、一台で多数の機能に対応するためには人型で固定した方が良い。

最初は多少機械寄りでもよい。例えば食器は全てメラミンにする(割れない)とか、食器の形は決めうちにする(同じサイズ)などだ。それでもロボットができるようになれば、その効果は大きい。ハードウェアは汎用なので量産効果が出るし、ソフトウェアは競争原理が働くので進歩も早いだろう。

そのうち足回りでも同じようなことが起こる。狭い通路で器用にすれ違うことも、そのうちできるようになるはずだ。そうなれば、厨房で、フロアで、ほとんど同じロボットが動き回る姿を見ることができるようになる。最初はちょっと不気味だろうが、見てみたいものだ。

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