2017年12月17日日曜日
遠隔検診に向けたスマホの機能
将来的に、スマホで遠隔医療が受けられるという期待は高いと思う。だが今は、症状が安定している慢性病に限られ、定期的検診がなくなるわけではなく、間隔が伸びる程度だ。本格的な遠隔医療を考えるなら、校正された機器を正しく使った検査がされることが必要だが、こうなると通常のスマホではダメだ。
今のように、民生しか考えられていないような作りが続くのなら当面はダメだが、スマホは通信機器として使い、校正された機器を貸し出すようなサービスがあればOKだろう。だが一方で、ある程度精度の高い検診ができるスマホがあれば、初期診断用として使うことも考えられるだろう。
では具体的に何がどう正しいことが必要なのかというと、視診と聴診ができることが必要になる。つまりカメラとマイクの機能性能に対して基準を設け校正することだ。カメラで言うなら色補正、また3Dや測距ができるのならその精度。音に関しては音質、音量の規定だ。
写真を撮る場合は美しさのために画像補正をしたりするが、医療用の場合は正確性が必要だ。具体的にはどのスマホで撮っても同じものは同じ色に見えなければならない。音も同様である。このためにはセンサ(画なら撮像素子、音ならマイク)の特性を規定し、場合によってはソフトウェアで補正する。
カメラに関しては照明の色も加味されてしまうので、カラーチャートを撮影して自動補正する方法が使える。カラーチャートは今でも簡単に手に入るが、専用のものを配布することは比較的安価にできるだろう。
音に関してはホワイトノイズ発生器が適していると思うが、こちらは結構難しく、価格も高くなるものと思われる。校正機関で校正したものをリースし、定期的に校正し直すような仕掛けが必要だろう。そのためユーザ一人ひとりが持つのではなく、例えば薬局に設置しておいて適宜スマホを持ち込んで校正するなどのシステムが必要になる。
だが、逆に言えばこの程度で済むので、現在の市販のスマホでもソフトだけ入れれば適用可能だ。後は医療機関の意欲の問題である。例えば、実際の診察にも(専用の)スマホを使うようにして、電子カルテに直接データを投入できるようにすると、遠隔問診でも同じようなデータが入るため、遠隔かどうかがあまり関係なくなる。そのデータをAI問診システムに投入して診断補助をすることも簡単にできる。
医者が直接指導せずとも、定期的に遠隔診察データを投入してもらっておいて、診察は週1回としてそのときにデータをまとめて見るとか、遠隔診察をAIが自動判断してアラートを出すとか、更なる応用も考えられる。
他にも、赤外線フィルタをカメラにかぶせて撮影すると体温が分かるとか、手に持って片足バランスをさせて秒数を計るとか、カメラに指先を当てて脈拍を測るとか、もちろん持ち歩くことで運動量を推定することもできる。これらは全て、診断の材料になりうるものだ。
この仕掛け、まじめに検討する価値はあると思う。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
注目の投稿:
超音波モーターの原理によるVR用トレッドミル
VRにおけるリアリティ問題の一つに、その場で動くのではなく移動する場合、つまり歩いたり走ったりすることが挙げられる。実際にはその場にいるので、歩いたかのように足場を調節してやる必要がある。 これを実現する方法として、すり鉢状の滑りやすい足場を作っておく方法と、トレッドミルを使...
人気の投稿:
-
性善説と性悪説、どちらを取るかと言えば、やや性善説、だろうか。 子供の成長を見ていると分かるのだが、基本的に子供は善だ。だが、同時に自分勝手なところもある。人の持っているものを欲しがり、場合によっては喧嘩してでも奪おうとする。だがこれは「悪」と言えるほどのものではない。 ...
-
http://techon.nikkeibp.co.jp/real/project/025.html 水と混ぜるだけでできるセラミックスで、圧縮強度、曲げ強度、引っ張り強度、接着強度、耐食性、とあらゆる面で優れているのだそうだ。また、混ぜ物ができるので、その特性をさらに...
-
CAS冷凍 については何回か書いているのだが、いわゆる冷凍睡眠にこれを使えないだろうか、と考えた。 不治の病を未来の医療に託すとして冷凍睡眠(実際には死んでから凍っているのだが)している人は居るし、火星程度より遠くに行くとなると冷凍睡眠の実用化は必要になるだろう。「20...
-
骨梁とは、骨の内部に存在する網の目ないしはスポンジのような構造のことだ。この構造によって、骨は頑丈なのに軽量でいられる。類似の構造としてはアルミ発泡材があるが、あれはどちらかと言えば消音や軽量化が目的であり、骨のような(建築用語で言うところの)構造材としての用途とは少し違う...
-
ハクキンカイロの発熱原理を調べていて、これを防災用(キャンプ用でも良いのだが)の湯沸しに使えないかと考えた。 普通、キャンプではガスコンロを持っていく。だがあれは裸火を使うから、熱効率は悪い。これに対してハクキンカイロの仕掛けは、白金触媒を適切な場所に配することで、極...
-
フリーズドライには、戻したときに食材の食感が変わってしまう欠点があった。代表的には、豆腐が高野豆腐になってしまう。じゃがいもがスカスカになってしまう。葉物野菜はしなしなになってしまう。これらの欠点を、「 CAS冷凍 」によって補うことはできないか、と考えた。つまり、冷凍には...
-
http://www.reconstruction.go.jp/topics/m18/04/20180409160607.html 復興庁が出した、東日本大震災における復興支援の報告書だ。 ざっと読んだが、よくある役所の成果報告書という感じで、タイトルからして「事例...
-
http://japanese.engadget.com/2017/03/28/ai/ これは、上の記事への反論である。 記事の流れについては先のリンクを読んで頂ければと思うが、大きくはその結論として①AIには想像力がない(苦手)、②日本人には世界に稀に見る想像力...
-
ソフトによっては機能が多すぎて、メニューの中を探すだけで一苦労、ということが増えてきた。画像編集、CADなどは特にそうだが、ワープロ程度であっても既に充分に多い。一度も使ったことのない機能も多々ある。 ソフトによってはメニューがカスタマイズできるものもあるが、その範囲は...
-
電線の地中化が遅々として進まないそうだ。 電線を地中化できない最大の要因はコストだろう。よく「予算が無い」などと言われるが、その本質は「それだけの予算を掛ける価値が見出せない」ということだ。地中化の主目的は防災だが、普段のメリットがせいぜい景観くらいしかないことが、...
0 件のコメント:
コメントを投稿