2017年12月20日水曜日
人類が進化しない理由
以前の投稿「人はなぜ悪に憧れるのか」などで何回か書いたことだが、人間が繁栄している理由のひとつは、間違いなく「ルール」の存在にある。これは動物の世界における弱肉強食の法則を緩和し、弱いものでも死なずに生き延びることに繋がっている。
そしてこれは同時に、弱いものが淘汰されないことも意味している。生物学的に弱い個体が淘汰されずに生き残り、子孫を設けると、その弱い遺伝子がまた増え、その間文明が進歩して、更に弱い個体も生き残る。これを繰り返していくと、本来の他の動物よりもずっと弱い集団が形成される。
この「弱い」は、多分に生物学的に弱いことを意味しているのだが、近年の文明では知恵知識や性格、精神疾患などに対しても当てはまってきている。人類が発明した文明文化のおかげで、また社会のルールによって、そういう人は保護され、死なずに済んでいる。
弱くても死なずに済むことは結構なことだ。自分とて生物学的に強い自覚はない。だが近年の傾向として、自国第一主義、排他的思想が世界中に蔓延している。生物学的に(まあ口先だけだが)威勢のいい政治主導者が好まれ、支持される傾向にあり、他国との協調や交流、助け合いを目指す人達は元気がない。
これらの直接的原因は大きく二つあり、まず世界的に先進国の成長速度が鈍ってきたこと。人口やその年齢構成比の点も含めて、伸び代が減ってきたと言えるだろう。もうひとつは主に西アジアにおける紛争と、その結果として難民が急増したことにある。
文明を引っ張ってきた人達に弱者を助ける余裕がなくなってきたところに、弱者そのものが大量に増えた、という構図が見てとれる。日本の場合は難民はいないが、その代わりに高齢者が急増している。
これから、二つの側面が見てとれる。ひとつは、技術的には可能な「救える弱者」を、その量や質などで差別して事実上救わなくする、つまり弱肉強食が復活している、と言える時代になってきているのではないだろうか、ということ。もうひとつは、それでも弱者を救おうと思えばできるのにしない、むしろ憎む、「意識低い系」の割合が増えてきているのではないか、ということだ。
ここでは多少蔑称気味に書いているが、もちろん彼らを非難する意図はなく、社会全体がそういう風潮になってきている、という考察をしているだけだ。だからダメとかもっとこうあるべきとかを言うつもりはない。社会全体としてみれば、正しい動きだと思う。
先進国が成長してきたのは、新天地を常に開拓してきたからだと言える。だが既に地球の隅々まで人類は制覇してしまい、住みやすい土地にはどこも人が溢れている。地球自体のキャパシティが、もう限界に達していると考えられる。ここから先は、先進国から順に元気がなくなるしか道がなく、その先進国に支えられてきた難民たちにとばっちりが来るのも、また必然と言える。
地球の人口は70億人を超え、これから数十年掛けてピークに達する。その後は緩やかに減少すると言われている。この中で、先進国の人口は既に減り始めている。これは拡大に限界がきたから、オーバーシュートの状態になっているから、自然と減ろうとしているまでのことであって、決して政策がダメだとか意識低いとかいう話ではない。
人口がピークを超えて暫く経つまでの間、意識低い系の割合は増加するが、何十年かのタイムラグを経て減少に向かい、そこで初めて地球は高い文明の状態で安定する、と考える。その間も文明は進歩するだろうが、ここにきて初めて途上国、新興国というものがなくなり、地球全体が同程度の文明社会を築いた上で、改めて人類は大きく進化していくのだろうと思う。
ただ、この時代において、弱い「弱肉強食」あるいは優生学のようなものが社会ルールに組み込まれてしまっている可能性はあると思う。その社会では、特定の遺伝病や極端に凶暴な性格など、一定の資格を満たす者が、強制的な不妊手術を受けたり、子供を作る際に遺伝子治療を強制されるようなことが当たり前になる。そうしないと生物学的、精神的な進歩ができないばかりか、むしろ社会全体として退化してしまうからだ。
もっとも、その時代までにそういった病気を克服できるならば、そうならない可能性も否定できない。
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