2017年12月30日土曜日
エアコン設計にみる昭和的発想
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20110521
ずいぶん昔の記事だし、ひところ流行ったらしいから、これに関するコメントや独自見解などは多数出ているものと思うが、そういうのを一切調べずに(・・;)自分なりに思っていることを描いてみる。
記事の概要は、分解掃除しにくいエアコンに対する不満だ。そして今のエアコンも、やっぱり分岐掃除はしにくい。記事にあったような、掃除ロボット付きエアコンの流れは今も健在だ。ただ残念なことに、それに対して海外の家電はシンプルで良い、という主張の中に、肝心のエアコンが入っていなかった。
では実態はどうかというと、海外のエアコンでもやはり分解掃除はしにくいものと思う。というのは、エアコンには巨大なフィンが不可欠だからだ。
エアコンで最も汚れやすいのはフィン、つまり熱交換器だ。熱交換器は、空気に触れる面積が大きいほど効率が高いから、薄い金属の板を何層にも重ね、隙間に風が通るようになっている。その形状の複雑さが、同時にホコリも溜まりやすい原因にもなっている。ホコリがたまれば湿気を呼び、湿気がカビを呼び、臭くなる。掃除したいのはこのフィンの間だ。
分解掃除をするには、このフィンを取り外す、ということになる。だがこのフィンは、エアコンの熱交換のためのものなので、当然冷媒が流れている。金属パイプがフィンを縦横に這っているため、このパイプをフィンから外すことは非常に困難だし、もし外せるように作ると熱効率が悪くなってしまう。
パイプごとフィンを外すということも考えられるが、その場合はパイプから冷媒を抜き取る必要がある。これにはエアコン取付工事と同等の資格と作業が必要だ。ここを機械化することも考えられるが、当然そのためのタンクや残ガス検知、弁、ポンプなどが追加で必要になり、価格を押し上げると共に、完全に抜き取るのは原理的に不可能だから、冷媒の補充も必要になる。
つまり、技術的な視点で見ると、「不可能ではないが高額ないしは低効率になる」という結論になる。ちなみに、事前にフィルターをかませばよいではないか、ホコリのつきにくい素材にすればよいではないか、などというものは、もう全てやっている。そんな中でも、先日日立が発表した凍結洗浄は、なかなかぶっ飛んだ技術として評価したい。
もしこの先があるのなら、自分なりに考えがあって、それは「全てを室外機でやってしまう」というものだ。屋内には空気の出入り口だけを作っておき、熱交換を室外機の中だけで行う。フィンは室外機の一番下に置き、洗浄したらその液はそのまま下に流れ出すような構造にする。多くの場合はベランダなどに置くだろうから、フィンを高圧洗浄しても問題ないし、腐食性の洗剤(例えば塩素剤)でドブ漬けするのも可能だ。
他にも、掃除の外注もやりやすくなる(素人でも可能で料金も下がる)、室外機一台で複数の部屋に対応できる、あるいは吹き出し口を一部屋の中でも多数に設置することで温度を平均化できる、などのメリットも出る。価格もそう変わらないものと思う。ひとつ検討してみてはどうだろうか。
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