2017年12月24日日曜日
野菜の個別AI評価
スーパーの売り場で気にすることはあまりないけれども、そのバックグラウンドたる市場流通では、野菜は細かく規格が分かれている。店頭での商品補充で見かける、箱に書いてある記号がそれだ。大きさ重さだけでなく、品位基準(腐敗、病虫害の有無など)がある。また、モノによっては形や味(糖度)などの観点でも基準がある。例えばきゅうりでは曲がり具合に基準がある。果物なら糖度が表示されていることもよくある。
こういったものは、仕入れの値付けには影響するものの、消費者にはあまり知らされていない。ネットスーパーで特売で買ったキャベツの玉が小さくてスカスカで軽くてがっかりした、なんてことがよく起こるのは、このせいだ。
また、上の基準でも、品位基準はかなり官能的なもので、機械的に振り分けられるほどではないし、味の基準は無きに等しいと言えるだろう。生鮮品を完全にネットスーパーに頼れない人達の心配は、正にここにあるのだ。
では、消費者には隠されているそれらの規格がオープンになれば良いかと言えば、それも違う。上の「官能的」というところ、また人によって重視する視点が違うからだ。例えば安売りのバナナを選ぶ際、長さと本数、おし、斑点、割れ、などのどれを優先して選ぶかは、人によって違う。
また、選ぶ理由は「同じ値段の中で最良のものを買う」という意識が働くからだが、もし値段が一つ一つ違えばどうだろう。値段との兼ね合いになるから、悪いものでも安ければ買うのではないだろうか。だがその度合いも、やはり人によって違う。
これこそが「暗黙知」なのであって、満足できるネット購入ができるためには、この暗黙知を持ったAIが存在している必要がある。その上で、そのAIがネットスーパーの倉庫まで(仮想的に)行って、モノを一つ一つ評価し、良いものを選んで買ってくれればよいのだ。
一方で、この方法では売れ残りがますます売れ残ってしまうから、基本的に値付けもフレキシブルにする。AIエージェントは値段も判断材料とするから、悪いものでも安くすれば買ってくれる人は出てくる。その値付け自体も(店側の)AIに任せてリアルタイムに修正すれば、売れ残り問題も解決する。
これは、野菜の相場がリアルタイムできめ細かく変化することも意味している。スーパーの特売のような、心理的に購買意欲をそそるイベントがやり難くなり、結果としては余計なものは買わず、それを理由に店を選ぶこともなくなり、総じて公平化、平均化が為されるようになる。
問題は、そんなAIが作れるのか、また野菜を一つ一つ評価することなんて可能なのかどうか、だ。前者に関しては、ネットスーパーでの買い物の際、到着した野菜を見て人が点数(例えば五段階評価)をする、ということを繰り返すことで学習が可能だと考える。後者については、近場のスーパーなどでは無理だが、自動計測(6面写真と重量)して個包装して自動倉庫と連動するような仕掛けにすれば可能だろう。
膨大な計算量と個別計測によるコスト高の問題はあるが、生鮮品のネット購入市場が飛躍的に拡大するチャンスが出るし、これはtoB(レストランなど)ともシステムを共用できる。大きな店舗を地価の高い駅前などに設置する必要がない、デリバリーをAmazonなどに委ねる、宅配ボックスの活用などと合わせ、条件が揃えば採算が合う可能性は十分にある。
更には入荷(農家から倉庫へ)にも同じシステムを活用できれば、最初から個包装で納入し、売れた額の何割で利益を得る、ということも可能になる。農家の利益率は向上し、中間マージンや鮮度低下につながるタイムラグの問題も軽減される。これは野菜の購買価格の低下も意味しているから、どちらにとっても望ましいことになる。
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