2017年12月31日日曜日
日本の家電の「絶望的な使いづらさ」について
http://fum-s-tyle.com/japan-electrical-ui.html
これも古い記事なので今更なのだが、自分なりの考えをまとめておく。
記事の最初に出てくるのが洗濯機で、1台目ははっきり分からないが恐らく日立製、2台目は東芝製(写真に写っていた)だ。そして操作に関するツッコミが多数記述してある。以後、電子レンジ、エアコン、リモコン、…と同じように使い辛さが指摘されていく、また随時私案が提示されている、という内容だ。
最初に思ったのは、「自分とこの人は人種が違う」ということ。確かに使い辛さを感じることはあっても、2、3分あれば自分だったらだいたいその機械の流儀は分かる。上の写真でもそれほど困難は感じなかった。なのにこの人にとっては諦めるほど使い辛い。かくてUIとは難しいものか、と思い知らされた。
家電を設計しているのは当然家電に詳しい人だから、分からない人の気持ちが分からない。これはどんな機械やソフトウェアでも考えられることだ。だが、家電メーカーとてバカではない。自分の知る限り、大手の家電メーカーは、素人を呼んでマニュアルなしにいきなり操作させて、その戸惑う様子をビデオに録り分析する、などということは、ずっと昔からやっている。つまり、今の時点では(それでも一応だが)その操作体系には合理性はあるのだ。
この問題の本質は、実はUIではない。多機能すぎるところにある。機能が多ければ操作体系が複雑になるのは自然の理だ。洗濯機にしても電子レンジにしても、次々に新しい機能が出て、新しいボタンが増えて、それをどこに押し込もうかと奮闘した結果がそれなわけだ。
では機能を減らせば良いではないか。そうではない。機能を減らすと売値が下がる。売値が下がると利益も利益率も下がる。そうするともはや新しい開発はできない。ライバルに負ける。人を減らさなければならない。一方で消費者も新しい機能をありがたがる、つまりはカネを払ってくれる。結局、UIの使い辛さというのは、廻り回ってユーザが求めたものなのだ。
提案ではタッチパネルもあったが、既に世に存在しているものがなぜ採用されないか、合理的に考えれば分かる。効果(売上増)とパネルのコスト、UIの設計コストが見合わなければ採用されない、見合えば採用される、それだけだ。繰り返しになるがメーカーはバカではない。それが差別化要素になりコストが見合うと判断すれば、必ず採用する。
今までは合理的な解決策はなかったのだが、ここにきてUIを大幅に改善しつつも高機能にできる、という希望が見えてきている。AI、またAmazon EchoやGoogle Homeなどの音声UIの登場だ。これなら操作パネルはむしろシンプルになり、その代わり音声であれこれ聞いてくる。
何とか機能はどうしますかこうしますか、あるいは洗濯物を見て自動設定する、好みを記憶して(気を利かせて)機能を使い分ける、それが気に入らなかったらそう言えば次回から修正する、といったことが可能になる。
これなら機能をいくら増やしても複雑さを一定に押さえ、あまつさえその人のレベルに合わせて調整することも可能だろう。洗濯機なら水量や時間を細かく設定したがる人、機能を色々使いたがる人、逆にお任せの人と個性が出てきたとしても、先端機能を上手く使いつつ、UIはずっと同じ、音声のみだ。
究極のUIとは優秀な執事である、というのは、実は自分の中の格言!(^^)!なのだが、世の中はその方向に動きつつある。まずは家電で実現してほしいものだ。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
注目の投稿:
ASIの発達と決定論
世の中の話題はAGIを通り過ぎてASIに進んでいる。AGIがGeneral IntelligenceならASIはSuper Intelligence、即ち人類を遥かに超えた知性ということらしい。 2045年にシンギュラリティが起きると予測したのは、人工知能研究の世界的権威であ...

人気の投稿:
-
「生成AIはミーハーである」の回でも少し触れたのだが、生成AIの回答は一次的には誤っていることが多い。それを指摘してAIが回答を修正していく様を見て楽しむ、というのが最近のマイブームだ。 どういう指摘をしているのか、と自己分析してみると、興味深いことに陰謀論者との議論とあま...
-
日本共産党が消費税減税案についてのサンデーモーニングの批判的なコメント(財源を示せ)に対し「財源を示した上で提言している」という反論をしている。そこで同じく、Grok3に計算してもらった。 日本共産党の提言は、2025年4月16日のものの他、幾つか出ている。そのおおよその方向性...
-
以前チラっと書いた、表題の分析の結果を披露しておく。 まず全体像について生成AIと議論した。結果として、その大まかなシナリオとは、 いわゆる減反政策によって、市場におけるゆとり分が減り、ここ数年は需給バランスがタイトになっていた。 農水省は減反政策は止めたと言っているが...
-
免震技術の一つに、「エア免震」というものがある。地震が発生すると、ホバークラフトのように地面から浮き上がる、というものだ。 http://www.airdanshin.jp/ なかなかよいと思うが、普段は浮いていないわけだから、例えば故障していないかどうか確認す...
-
近年の世界的な右傾化、自国第一主義化について、その原因を生成AIと討論しながら考えた結果、そういう結論に達した、というお話。 まずトランプが未だに支持されている理由について議論したのだが、その理由はアメリカ白人低学歴層の貧困化だという。この白人貧困層は、人数的には数千万人と規...
-
色々と生成AIと議論しているが、それに関して最近気付いたことがある。 最初の応答については、あまり深く考えずに世間の評判を基に答えるのだが、それには往々にしてウソ大げさが混じっている。それに対して指摘をし、更にそれを繰り返すことによって、だんだんとそのウソ大げさを理解し、マト...
-
https://jp.techcrunch.com/2018/03/17/2018-03-14-mit-gadget-puts-multiple-artificial-organs-into-a-paperback-sized-connected-system/ 実験の...
-
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E8%AA%9E%E3%81%AE%E9%83%A8%E5%B1%8B チューリングテスト に対する反論とも言える思考実験だ。両者の概要はここでは省略する。Wikipe...
-
古くは仮面ライダースナックやビックリマンチョコ、最近では万博パビリオンの時間指定チケットやマクドナルドのちいかわグッズなど、何かと話題になっている転売の是非について考察してみた。これももちろん生成AIを使って、なかなか面白い結論が出た。 最初は万博場ビリオンについて議論したのだ...
-
生成AIに色々な疑問を聞いては楽しんでいるのだが、最近少々面白い発見をした。 景気対策として消費税減税や廃止を唱えている人は多い。素人だけでなく政治評論家や政治家自身にも多く見られる。だがそれは本当に景気の足しになるのだろうか。多くの人は施策のコストや長期的効果に言及していない...
0 件のコメント:
コメントを投稿