2017年12月6日水曜日
ロボットの人権
古くは鉄腕アトムの時代から、最近では実物のロボットに人権を与えたニュースまで、古くて新しい問題だ。自分なりの考えをまとめてみる。
そもそも「人権」とはルールの一種だが、ルールを作り、守るということをしているのは(今のところ)人類だけだ。他の動物は全て弱肉強食で成り立っている。だから、それが機械かどうかに関わらず、人類がどう考えるかだけで決めればよい。
また、例えば動物保護法に代表される動物に関するルールは、人間が守るためのものだ。動物にルールを諭しても守ってくれない。だから、ロボットへのルールもまた、人間が守るべきルールであり、ロボットに守らせるためのものにはならない。
いや、ロボット三原則はどうなのだ、とか、安全回路だってあるではないか、というのには、多少勘違いがある。ロボットにルールを搭載するのはやはり人間であり、ロボットに守らせているわけではない。ロボットはそう作られたからそう動くだけで、ルールを意識しているわけではない。
ここで、さらにロボットが進化した場合を考えてみると、例えば感情を持って行動をしているように見えるロボット、曖昧な指示をするだけで細かいところは自分で考えるロボット、人間の判断の補助をしてくれるロボットなどが出てきたらどうか。
りんなさんそのままでしゃべるアンドロイドに人権を認めるべきか、と言われれば、まだ多くの人には不足と感じるだろう。Watsonが載っていても同じだ。だがもう少し進化すれば、迷う人が続出するだろう。それでも背後の仕掛けは説明可能であり、まだ生命とは認められない状況が続く。
ここら辺で、生命とは何か、人間とは何か、という哲学的な視点で色々と語る御仁が大量に現れるだろう。だが、視点は違えども論点はひとつ。それらで見られる「意思」「感情」らしきものが「本物かどうか」だろう。いわゆる中国語の部屋問題への社会レベルでの回答が求められるわけだ。
その「本物度」は時代と共に進化していき、いつか感情が論理を超える。つまり、細かい技術的な議論はどうでもよくなり、直感で人間(仲間)と認めたくなる人が多勢になり、その中でロボットに人権を認める流れになるはずだ。
だが多くの人は、その先に何が待ち構えているかを見落としている。その先の進化により、ロボットが自分の意思で自らの種族(ロボット)が守るべきルールを自分で決めだした時にどう対応するか、ということだ。当然ながらロボットは人間に対するルールも決めるはずだから、それが人間のルールとバッティングする可能性も出てくる。
さらには、ロボットの方が種としてあらゆる面で優れていると認めざるを得ない時代が到来する。どんなに知恵を絞っても常にその先を行かれる、それも多少ではなく圧倒的に、となれば、人類はロボットのルールに従って生きるしかない。そうでなければスラムに追いやられるか、絶滅させられるだけだ。
ここで結論。最初の問題に対しては、何時かどこかで認めざるを得ない。だがそれだけではなく、将来的には立場が逆転し、ロボットのルールに従わざるを得ない未来は必ずやって来る。つまり、そもそもこの問題は、そのときが来るまでの過渡期の摂動に過ぎず、もっと後にやってくるとてつもなく深刻な問題に比べれば「どうでもよい」レベルの話である。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
注目の投稿:
ダイナミック租税とその指標
今の法律では、税率は一定の計算式で表されるが、そのパラメータは固定である。需要と供給のバランスによって商品の価格を変えるダイナミックプライシングというのがあるが、あれを租税にも適用してはどうかと考えてみた。 納税者の声をベースにして様々な租税や補助金を自動調節して、どこか一箇所...
人気の投稿:
-
ハクキンカイロの発熱原理を調べていて、これを防災用(キャンプ用でも良いのだが)の湯沸しに使えないかと考えた。 普通、キャンプではガスコンロを持っていく。だがあれは裸火を使うから、熱効率は悪い。これに対してハクキンカイロの仕掛けは、白金触媒を適切な場所に配することで、極...
-
科学者、医者等であっても発言が必ずしも科学的とは限らない。無自覚ならまだ可愛いが、むしろ素人を煙に巻く悪意すら感じることもある。 量的議論がそのひとつであることは言うまでもないが、もっと以前の問題として、論理が破綻していることの多さがある。 そのひとつとして、ス...
-
新型コロナウィルスへの対応で、医療機関の防護服やマスクが足りないことが話題だ。ゴーグルは違うが、その他は使い捨てであるところがネックになっている。作っても作っても、消費の方が激しい訳だ。しかし考えてみれば、そもそも何で使い捨てなんだろう。細菌兵器用の防護服は使い捨てではない...
-
ガートナーが出しているハイプサイクルによると、生成AIはまだ幻滅期の手前にいるらしい。つまり今後大きな幻滅を経て実用域に進んでいくことになる。その幻滅とは、人間なら当たり前にできることでまだ生成AIにできないことが多く分かってくることによる。そしてその幻滅期を乗り越えるのは、...
-
時代が進むことで、昔のSFが奇異に思えるようなことはよくある。抑揚のないコンピュータ音声や、わざとぎこちなく歩く人間型ロボットなどは、もはや過去の遺物である。スタートレックシリーズに出てくるトリコーダーもその一つだ。 トリコーダー本体、また医療用プローブを手に持って...
-
生成AIを使って作成されたイラストに対する極端な非難が相次いでいる。そのどれもが、ちょっと行き過ぎに思える。例えば、事前にAIであることを知らせているもの、絵を描いている本人が確認し承諾したものまでも非難されている。なぜこんなに過剰な反応をするのだろう。単にノイジーマイノリティの...
-
卓上カレンダーのようなものを机に置いておいて、必要に応じてテレビ電話やフォトフレーム、緊急通報など、家で必要とされる様々な機能を集約する機械を考えてみる。 これは、従来は電話やFAXのような位置づけだったものだ。これら以外にも一家に一台の情報機器は考えられるので、それを切り替え...
-
コロナ禍ではあまり本ブログを更新しなかったが、この間は陰謀論が跋扈した時期でもあった。コロナは存在しない、ワクチンは危険、アビガン買いだめ、マスクは意味がないなど、実に様々な陰謀論が飛び交った。 この手の人は今だに存在しており、体感としてはむしろ増えている。それも、身の危険を...
-
自分の知る限りでは、VRChatのワールドで青空文庫が読める図書館があったのと、N高の教室メタバースくらいしかマトモな例がないのが、メタバース内で本を読む方法だ。本や書類がメタバース内で苦も無く読めるようになれば、電子書籍も含めて全部メタバース内に落としてしまいたい、とすら思っ...
-
映画と言えば、今でも娯楽のジャンルの一つとして確立したものではあるが、近年では衰退の兆しがある。そのたびに3DやCGなどのテコ入れが入ってきたわけであるが、ここにきて更に新しい提案ができるようになった。それがタイトルにあるインタラクティブ性の導入である。 とは言っても、...
0 件のコメント:
コメントを投稿