2018年9月8日土曜日
AIによる広告業界の崩壊
Amazonのリコメンド機能は結構有効だ、と聞いたことがある。リコメンドはあちこちでやられていて、それが広告にも効いていることは事実だが、将来的にこれが発展すると、逆に広告の首を絞めるのではないか、と思い始めている。
リコメンドはユーザの行動を基にしているが、それは必ずしも単独の店舗での行動とは限らない。ブラウザに出てくる連動広告はその一つだ。そこで考えるのが、ブラウザ以外のユーザ行動も含めて全てをリコメンドの基礎データとしようとした場合、それは単独の店舗に利するものにはならないのではないか、ということだ。
要するに、スマホに独立した常駐アプリケーションとして動作する「汎用リコメンエンジン」が登場するのではないか、と思うわけだ。そのリコメンドは必ずしも購買行動だけではなく、行動全てに渡って逐一リコメンドするものだ。例えば運動不足や食事の選択、会話の勧め方、遊びまで含めての推奨をするものだ。
特定のタイミング、例えばいつもなら食事に行くタイミングはどこに食べに行くか、そしてお勧めのメニューまで出してくれる。その背後には店のメニューや今の混雑具合、本日の日替わりまでオンラインで入手した上での比較がある、というわけだ。本日の日替わりなんてどこで入手するの、というと、監視カメラの映像だったり既に先に入った別の人のSNSからだったりする、という寸法だ。
店舗の営業時間の変更や本日の日替わりがSNSで通知されるということは、もう日常的になっている。であれば店のHPを見る必要はない。わざわざ行く必要もないし、チラシを打つ、CMを打つ、などの必要もない。
これは逆に、今まで広告で飯を食ってきた人にとっては脅威になるわけだ。機械自身が嗜好を元にキュレーションの如くSNSやネットサーフィンをすると、従来の(人に向けた)広告テクニックは使えない。単純な事実のみでしか訴えられないからだ。
もちろん、有名人を起用したCMを打てば、その有名人が好きだからという理由で買おうとする輩は居るから、AIがそれを無視しないで拾い上げる可能性はある訳だが、無理にゴールデンタイムに出すのではなくYouTubeに出しても同じ効果が出る、となれば、そうする傾向は強まるはずだ。
これは、規模の経済格差を圧縮する効果がある。つまり小さいところでも大手と渡り合える可能性が高くなる。また、規模の経済で押してきたTV業界(特に民間)を大いに圧迫する。下手をすれば潰れかねないほどのインパクトがある。
本や雑誌、新聞も同様だ。広告枠の単価は下落圧力が掛かり、それが紙面の質に影響を与えたり、多くの出版社が潰れることにもなる。市場そのものが減ってしまうのだ。
サービス業の中でも、エステやスーパーのように実業をしているところと、問屋や広告など間接で仕事をしているところとがある。AIリコメンドは間接業界そのものの規模を縮小させ、多くの失業者を出すポテンシャルがあるのではないか。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
注目の投稿:
ダイナミック租税とその指標
今の法律では、税率は一定の計算式で表されるが、そのパラメータは固定である。需要と供給のバランスによって商品の価格を変えるダイナミックプライシングというのがあるが、あれを租税にも適用してはどうかと考えてみた。 納税者の声をベースにして様々な租税や補助金を自動調節して、どこか一箇所...
人気の投稿:
-
ハクキンカイロの発熱原理を調べていて、これを防災用(キャンプ用でも良いのだが)の湯沸しに使えないかと考えた。 普通、キャンプではガスコンロを持っていく。だがあれは裸火を使うから、熱効率は悪い。これに対してハクキンカイロの仕掛けは、白金触媒を適切な場所に配することで、極...
-
科学者、医者等であっても発言が必ずしも科学的とは限らない。無自覚ならまだ可愛いが、むしろ素人を煙に巻く悪意すら感じることもある。 量的議論がそのひとつであることは言うまでもないが、もっと以前の問題として、論理が破綻していることの多さがある。 そのひとつとして、ス...
-
新型コロナウィルスへの対応で、医療機関の防護服やマスクが足りないことが話題だ。ゴーグルは違うが、その他は使い捨てであるところがネックになっている。作っても作っても、消費の方が激しい訳だ。しかし考えてみれば、そもそも何で使い捨てなんだろう。細菌兵器用の防護服は使い捨てではない...
-
ガートナーが出しているハイプサイクルによると、生成AIはまだ幻滅期の手前にいるらしい。つまり今後大きな幻滅を経て実用域に進んでいくことになる。その幻滅とは、人間なら当たり前にできることでまだ生成AIにできないことが多く分かってくることによる。そしてその幻滅期を乗り越えるのは、...
-
時代が進むことで、昔のSFが奇異に思えるようなことはよくある。抑揚のないコンピュータ音声や、わざとぎこちなく歩く人間型ロボットなどは、もはや過去の遺物である。スタートレックシリーズに出てくるトリコーダーもその一つだ。 トリコーダー本体、また医療用プローブを手に持って...
-
生成AIを使って作成されたイラストに対する極端な非難が相次いでいる。そのどれもが、ちょっと行き過ぎに思える。例えば、事前にAIであることを知らせているもの、絵を描いている本人が確認し承諾したものまでも非難されている。なぜこんなに過剰な反応をするのだろう。単にノイジーマイノリティの...
-
卓上カレンダーのようなものを机に置いておいて、必要に応じてテレビ電話やフォトフレーム、緊急通報など、家で必要とされる様々な機能を集約する機械を考えてみる。 これは、従来は電話やFAXのような位置づけだったものだ。これら以外にも一家に一台の情報機器は考えられるので、それを切り替え...
-
コロナ禍ではあまり本ブログを更新しなかったが、この間は陰謀論が跋扈した時期でもあった。コロナは存在しない、ワクチンは危険、アビガン買いだめ、マスクは意味がないなど、実に様々な陰謀論が飛び交った。 この手の人は今だに存在しており、体感としてはむしろ増えている。それも、身の危険を...
-
自分の知る限りでは、VRChatのワールドで青空文庫が読める図書館があったのと、N高の教室メタバースくらいしかマトモな例がないのが、メタバース内で本を読む方法だ。本や書類がメタバース内で苦も無く読めるようになれば、電子書籍も含めて全部メタバース内に落としてしまいたい、とすら思っ...
-
映画と言えば、今でも娯楽のジャンルの一つとして確立したものではあるが、近年では衰退の兆しがある。そのたびに3DやCGなどのテコ入れが入ってきたわけであるが、ここにきて更に新しい提案ができるようになった。それがタイトルにあるインタラクティブ性の導入である。 とは言っても、...
0 件のコメント:
コメントを投稿