2018年9月11日火曜日
電子エスクロー
ブロックチェーンの応用技術の一つに、スマートコントラクトがある。仕事(コードの実行)と課金(コード実行に対する対価)が同時に交換される、というもので、言わば踏み倒しの心配がなくなるための仕掛けだ。
従来のソフトウェアにも、ライセンスという考え方はある。ライセンス回避防止のため、各社は様々な仕掛けを考案しているが、これを簡単に実現する仕掛けとも言えるだろう。
ただ、ブロックチェーンの場合はもう少し事情が複雑で、コードを実行して欲しい人は当然カネを払うわけだが、実際にコードを実行して対価を受け取る人は、コードベンダではない。ブロックチェーン上にいる匿名の誰かだ。
つまり、本質的に、スマートコントラクトとは、実行コードは大したものではなく、その数(実行回数)が膨大であって、実行そのものに価値を置き、不特定第三者が地道に儲けるための仕掛けである。
これは、逆に言えば、高度なプログラミングを付加価値とするような既存のSaaS業者には馴染まない、ということを意味している。そういう業者がSaaSをどう進化させるかに関してスマートコントラクトから何を見い出すか、と考えると、その根本たる「信頼性調査不要」(実行=課金)というところだろう。
従来でも、課金しなければ実行しない、とすることはできたのだが、これはSaaS側に一方的に有利な仕様だ。つまり課金後仕事をせずにバックレることが可能な訳だ。自分を信用してもらうためにあれこれ手を尽くすのが面倒だと思えば、この考えを取り入れてしまえば話が早い。
つまり、プログラムの実行(結果引渡し)と課金の両方が成立するか、両方とも成立しないかのどちらかしかステータスが存在しない、という状態を作り出せればよいことになる。
通販ではエスクローという制度があるが、これと同様、信頼できる第三者(認証期間のようなもの)があれば、この実現は簡単である。それを国や自治体(ないしはそこからの委託期間)が運営し、ベンダはそこにIDとコード(スマートコントラクト)を登録するだけでよい。
認証機関の背後には、登録した多数のベンダと繋がるチェック機構がある。ベンダが実行したコードが確かにユーザの指定したコードなのか、実行が正しくできたのかを監視し、正しくできればベンダに支払いを行う。ベンダとの間は仮想通貨を使うが、その発行元は認証機関であり、新規通貨の発行権を持っている。また、現金(法定通貨)との換金もここが行う。
ベンダは、コードの実行毎に課金で仮想通貨を得るが、それを現金に戻すには認証機関に頼むしかない。これによってネットワーク内の仮想通貨量は調節される。
もう少し詰めていけば、実用に耐えるようになるだろう。
さて、これを作る目的だが、従来のスマートコントラクトでは、コードの価値はゼロだ。実行にのみ対価が発生する。しかしこの仕掛けでは、コードにも価値が発生する。
そうすれば、従来は躊躇したであろう高度な(大容量の)コードや、特許など知的所有権のある(価値のある)コードがこのプラットフォームに乗る。これはある意味公平性があるわけだ。小さい企業、技術力はあるが営業力が弱い企業なども、ここで勝負ができるようになる。
これは、業界の活性化に繋がるものと信じる。
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