2018年9月22日土曜日
刺青と温泉の妥協点
タレントのりゅうちぇる氏が、子供の名前の刺青を彫ったことに対する批判に、芸能人が反論している。刺青には、プールや温泉での入場禁止問題もあり、根は同じだ。ここは少し論理的に整理してみたい。
批判する側の論理は、概ね分かる。①反社会的勢力(いわゆるヤクザ)あるいは反社会的人格を想起させる、②気持ち悪い・不快・怖い、③親から貰った体を傷つける行為、④一度入れたら消すのは困難(将来消したくなっても消せない)、⑤感染症やアレルギー等の危険、⑥MRIなど一部の医療機器に掛かれない、等だ。
これに対する反論は①全てがヤクザではないし海外では一般的、②個人の感情を一般化(押し付け)しようとしている、③④⑤⑥(承知しているなら)本人の自由(且つ入場禁止や批判の理由にはならない)、(以上、一対一対応)となるだろう。
③④⑤⑥の反論に関しては異論はないが、①②には量的視点が抜けている。日本には実態としてヤクザはまだ存在しているし、刺青をしている人の割合は多い。全てがそうでなくとも確率として高いのなら、刺青を警戒する、不快に思うというのが多くの(個人の、ではない)人の感情だ、というのは立派に理由になる。それによって風評被害が出たり客が減ったり、という実害が考えられるからだ。
つまり、量的視点を考えれば、①②への反論は成り立たない。そして感情を相手にした反論に感情で返しても水掛け論にしかならない。何せ相手は多数派なのだ。ここは論理的に反論すべきである。つまり、「外見から明らかにヤクザでないと分かる場合は、(多少であれば不快を我慢して)理性的に理解を示すべき」、つまり半解禁を落としどころ(妥協点)にすべきなのだ。
この妥協点としては、模様、面積、場所から総合的に判断して、ヤクザを想起させないこと、著しく不快になるものでないこと、を満たせば許す、というものになる。そしてこの基準は、ある程度強制すべきである。
基準が曖昧なところは妥協点のポイントだ。恐らくハートマークやバーコード、名前などは割とすぐ認められるだろうが、じゃあドクロマークは、顔に施すのは、などと細かくルール付けすることは困難だし、時代が進めば緩くなっていくはずだからだ。
こうしなければヤクザへの便宜も払ったことになってしまう。そのために一般の日本人が恐怖に耐えるのが日常、というのはおかしな話だ。しかし妥協案が受け入れられれば、少しづつ刺青に対する抵抗感も薄れ、十年後には笑い話になるかもしれない。
国民感情というものはそう簡単には変わらないものだ。一律に反論しても問題は解決しない。妥協点を見出し時間を掛けることこそが必要なことだ。
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