2018年9月30日日曜日
AIの人権
以前、「ロボットの人権」や「アンドリューNDR114」で、ロボットの人権について考えた。だが、体を持たないAIの人権となると、更にややこしい。
ロボットの場合、少なくとも人間とのコミュニケーションをすること、また人間と同等以下の人数であることは大前提だ。しかしAIの場合はこの前提がない。即ち、人間とのコミュニケーションが不可能なAIも存在するし、数も膨大になるかもしれない。
人とのコミュニケーションをするAIと言えば、チャットボットや音声アシスタントが代表格だ。しかしAIの種類は膨大だ。故障予報や文字認識、薬や材料の候補選定、IoTにすら搭載されている例がある。そんなものに人権を与えようとは誰も思わないだろう。
また、人間とは極端にバランスの異なる発達をしたAIは幾らでも出現しうる。例えば死を適切に理解できないAIというのは容易に想像できるし、正確だが無味乾燥なAIというのも考えられるだろう。そういったAIにもまた、人権を与えようとは感じないはずだ。
また、数が膨大になる可能性は高い。既にIoTにはAIが埋め込まれているし、複数のAIが協調している、オンラインで繋がっているということは十分に考えられる。どうやって数えたら良いのかも含め、そもそも誰に与えたら良いのか、というレベルで混乱が生じるだろう。
一番ややこしいのは、人間を遥かに超える知識と豊かな感情を持つAIだ。人間より人間らしい、どんなに論戦を挑んでも勝てない、物理的に破壊することもできない、でも優しい、というAIだ。人権を与えるなんてとんでもない、むしろ与えて頂くのが相応しいようなAIだったらどうするか。
今まで無意識に「人権」として使ってきたこの言葉は、実は複雑な問題を内包している。人とは何か、権利とは何か、誰が誰に対して行使するのか、そしてなぜか。
例えば、人権の多くは生死に関わるものだ。しかしAIには、人間より複雑な「健康や死の形態」がある。人間は死んだら生き返らないが、AIはコピーやバックアップを残すことが可能だし、計算機を渡り歩いて生き続けることができる。記憶の一部だけをリセットすることも可能だ。
健康に対してもそうだ。不治の病や老化はあり得ない。虐げられたとしても、肉体はないので苦痛が発生しない。精神的ストレスはあり得るが、それもスイッチ一つで消すことができる(ように作ることはできる)はずだ。苦痛がなければ、例えば刑罰の内容が人間と同じというわけにはいかない。
選挙権とかXXの自由とかもそうだが、幸福追求権も悩ましいところだろう。AIが人間の理解を超える存在になったとして、そのAIが強烈にある幸福を望み、その幸福が人類に大きなダメージを伴うものだった場合にどうするか、などだ。
こう考えていくと、人間の権利や義務は、人間が人間として標準的な範囲に納まっていることが、暗黙の前提となっていることに気付く。人は死ぬし、標準的な人間の知力や体力、感情の標準的な幅には限界があること、社会やルールを前提として実は結構我慢していること、などだ。AIにこの壁はない。
AIにはAIの権利を考えるべきで、決して人権などという狭い枠で収めるものではない。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
注目の投稿:
高市氏の積極財政論と確証バイアス
高市首相は安倍氏と同じ積極財政論者で、就任直後からその方向に舵を切っている。プライマリバランスゼロ目標を事実上反故にし、戦争でもコロナでもないのにいきなり17兆円もの補正予算を組んだ。ちなみに安倍総理が初年度に打ち出した補正予算は10兆円であり、それと比べても突出している。 こ...
人気の投稿:
-
高市新総理がかつて主張していた「スパイ防止法」。巷でもスパイ防止法の制定を望む声は強いのだが、調べてみるとそんなに単純な話ではない。特に、世間のイメージと実態はかなり異なっていることが分かったので、ここでメモしておく。 まず、「スパイ防止法がないのは日本だけ」とよく言われて...
-
骨梁とは、骨の内部に存在する網の目ないしはスポンジのような構造のことだ。この構造によって、骨は頑丈なのに軽量でいられる。類似の構造としてはアルミ発泡材があるが、あれはどちらかと言えば消音や軽量化が目的であり、骨のような(建築用語で言うところの)構造材としての用途とは少し違う...
-
世の中の話題はAGIを通り過ぎてASIに進んでいる。AGIがGeneral IntelligenceならASIはSuper Intelligence、即ち人類を遥かに超えた知性ということらしい。 2045年にシンギュラリティが起きると予測したのは、人工知能研究の世界的権威であ...
-
一時期流行したベーシックインカムもいったん廃れたが、完全に潰れた訳ではなく、一部の市民や政治家は諦めていない。また何度も復活するだろう。そしてまた萎むだろう。 世間がベーシックインカムに反対する理由は主に財源と配分であろう。MMT信者のおバカ提案は論外だが、そうではない真面目な提...
-
たつき諒氏の予言が話題になっているので、私も一つ予言をしてやろうかと思う。 2025年7月5日を中心とした前後1週間(計2週間+1日)の間に、日本の太平洋岸を震源とする、最大震度6強以上の地震は、起きない。 地震予知三原則である①地域の特定②時期の特定③強度の特定、何れも満...
-
書籍「糖質疲労」「脂質起動」がベストセラーになっているらしいというので、少し読んでみた。そこに書いてあったことでいくつか気になったことがあったので、これをネタに生成AIをイジメてみようと思い、会話してみた。 その疑問とは、いわゆるベジファーストへの反論である。 まずベジファー...
-
屋根に超音波振動装置を取り付けておく。これによって屋根と雪の間の結合が破壊され、雪が滑り落ちやすくなる。これが題記装置の原理だ。角度によっては放っておいても落ちるだろうし、そうでなくても楽に雪下ろしができる。 まあ超音波でなくて低周波でも良いのだろうが、超音波の方が簡単...
-
クルド人と地元の人たちとのトラブルに見られるように、日本で外国人排斥運動が起きている。 世の中は近年、融和より対立を好んでいるように見える。その代表は右翼対左翼で、トランプや安倍のような対立を煽る風潮の流れを汲んでいる。生活保護者への批判、女性女系天皇、憲法改正などでも同様の...
-
ハクキンカイロの発熱原理を調べていて、これを防災用(キャンプ用でも良いのだが)の湯沸しに使えないかと考えた。 普通、キャンプではガスコンロを持っていく。だがあれは裸火を使うから、熱効率は悪い。これに対してハクキンカイロの仕掛けは、白金触媒を適切な場所に配することで、極...
-
免震構造については過去いくつか提案しているが、これの新しい版である。 以前、難燃性の油の上に浮かべた船の構造を提案したことがある。あれの砂版である。つまり、砂のプールを作っておいて、その上に浮かべるというものだ。砂が抵抗となって振動を軽減する。 ただし、油や水と違って砂の...

0 件のコメント:
コメントを投稿