2017年6月6日火曜日

ソーラールーフは普及するだろう


「ソーラールーフ」の発表から注目してきたが、いよいよその時が来た。
ここから、三つの自説を展開する。第一は、これは普及するだろう、ということ。第二は、そこから起こる、主に電力会社への影響。第三は、使う側(ユーザ)における変化だ。これを三つに分けて各々考える。本稿は第一だ。
太陽光発電は、当然ながら電力会社から見ると「普及してほしくないもの」だろうから、系統への接続制限などで抵抗してきた。その主張は、系統電力が不安定になる、という一点しかない。事実、従来の太陽電池システムにはその欠点があった。しかし今回は少し事情が異なる。
テスラが国内のベンダと画期的に違うところが幾つかある。まずはデザイン。ソーラールーフは瓦サイズで一般の瓦と区別できないため、あからさまに「太陽電池で御座います」といった顔をしておらず、自然に溶け込むことができる。また、きめ細かく屋根の形状に合わせられるために面積効率も高い。保証期間も長い。費用も革新的に安い。特にバッテリーが安い。
一軒家で太陽電池を設置する場合、バッテリなし、また系統電力への接続と売電を前提とするのが今の一般的なモデルだ。その理由は、まずバッテリが高いこと、売電への補助(価格保証制度)があったことだった。特に売電価格は非常識なほど高く、これは確かに太陽電池の普及には貢献したが、電力会社にとっては不安定な電力が大量に流入することになるため、接続数制限や、必要以上の売電(売電目的の売電)を制限するために太陽電池の設置量を制限する、といった、良く分からない状態になっていた。
だが、バッテリが安ければ、系統電力との接続を完全に絶って、充分な太陽電池を設置することができる。電力系統はシンプルになり、価格も下がる。元々、一般的な一軒家の屋根の面積は充分広いのだが、上の制限のために、3kW~4kW程度に抑えられていたのが現状だ。テスラならその2、3倍の面積に設置可能である。
テスラ方式では、まだ公になっていないもう一つの使用モデルがある。それは、形だけの太陽電池を設置し(あるいは全く設置せず)、事実上は買電だけとして、その買電は深夜電力を使う、というモデルだ。これなら系統電力への影響はゼロであるため、申請の必要はなく、ただ設置して、契約を深夜電力が有利なタイプに変更するだけで済む。
こちらのモデルは、初期費用を抑えられるため、将来的に太陽電池を増やす原資をここで稼ぎ徐々に増やす、といったモデルにもなるし、マンションなど太陽電池設置が無理な所で、ひたすら深夜電力だけで生活する、という人にも合う。
ここから、マンションでも使えそうだ(極端な話賃貸でも)、コンサルや見積もりを細かくせずともカンタンに設置できそうだ、費用や施工の技術の差が出にくそうだ(騙されにくそうだ)、系統電力との接続がなくとも独立して動かせそうだ(接続制限について悩まなくて良さそうだ)、太陽光発電だけで十分になりそうだ(完全電化を太陽光発電だけで賄えそうだ)、速く元が取れそうだ、故障も少なく修理も簡単そうだ、あわよくば電気自動車の充電までできそうだ、となる。最後の一節を除けば、何れも太陽光発電を導入するに当たっての心理的抵抗が大きかったところである。
どちらのモデルであっても、系統電力へ売電はないわけだから、それに関連する制限は掛けられない。各自勝手にやればよい話なので、普及するかどうかは単に保証や費用等、市場原理のみに基づくようになる。
また、自治体としても、補助金を既存のものに限定する理屈は立たないので、現状では勿論市販前だけれども、何れは他と同じく対象になるはずだ。また、補助金が出ない場合でも、民間の保険会社などが低金利のローン商品を開発する可能性もある。
初期費用の問題を補助金やローンでクリアできるのなら、従来の太陽電池よりも面倒がない分速く普及するはずだ。特に電力会社との決別ができる点、震災に強い点などを評価する一部の層には強くアピールするだろう。デザインが目立たない分、気がついたら相当普及していた、なんてことも考えられる。

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