2016年11月21日月曜日

定期借地権型の高層マンションを何とかする


Image by Mike Birdy via Attribution Engine. Licensed under CC0.
家の近所に、定期借地権型の高層マンションがある。存続期間を50年として、延長を認めず必ず更地にして返すことを条件に、安い分譲が行われるというものだ。そのマンションがモデルルームを建てた時に冷やかしに見に行ったことがあるのだが、問題たる定期借地権周りの数字を計算してみて笑ってしまった。解体費用の積立金の金利設定がバブルの頃のままで、大幅に足りないのだ。

それを指摘された営業は口をにごらせていた。金利は今後も変動するから云々、だがそれから10年、金利は一向に回復する様子がない。今後アベノミクスが幾ら大成功したとしても、バブルの頃の金利など見込めないのは明らかだ。更に元の計算が複利計算だから、今当初の想定に戻ったとしても足りない。

この高層マンションは解体手順についても何も考えていなかったから、実際にその時を迎えたら、当初の見積りからは大幅に狂うだろう。そうでないマンションでも、積立金の不足により償還前10年程度から人が逃げ出し、ゴーストタウン化するのは目に見えている。こういうマンションは全国に多数存在するはずだ。

これは地域を荒廃させる。地主とて解体の費用は出せないし、保守する義理もない。区分所有者は雲隠れし回収も売却も不可能、不法占拠者の巣窟と化し、そのうち本当に崩れてくるかもしれない。恐らくは自治体が負担して解体するか、法改正して存続保守するかの選択を迫られることになるだろう。

前者だが、高層マンションの解体費用というのはそもそも殆ど経験がなく、幾ら掛かるか分からないものだそうだ。通常のマンションで1世帯100~200万というから、これを下ることはないだろう。500戸の場合で10億円が最小。積立金が上手く回収できたとしてもこの数分の一だろうから、例えば1棟7億円が自治体の負担となる。

解体せずに存続させられるよう法改正に動いたとする。しかし元々そのような(存続させられるという)法が存在しない時代に立てられたのだから、当然耐久性の設計は50年で見積もっているはずだ。メンテナンスしにくい構造、コンクリートのかぶり厚が薄い、スケルトン&インフィル構造を取っていない、機械室などの大きさに余裕がない、など。50年が60年になることができたとしても100年になることはまずない。つまり先送りでしかない。

そもそも存続したとしても、人口減、所得減の時代なのだから、新たな住民が入ってくる期待は薄いはずだ。仕掛けの設計時点で破綻していると見るのが妥当だろう。人口減、所得減ということは自治体も貧乏なはずで、その中での億単位の負担は相当な負荷だ。

順当に考えれば、国や自治体が主導して積立金の増額を権利者に強制する必要がある。これは遅くなるほど不利になるので、一刻も早く開始すべきだ。

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