2016年11月24日木曜日

大画面電子書籍端末


電子ペーパーが発表されたとき、大いに将来に期待したものだが、思ったほど進歩していない。当時期待したのは①大画面化、②カラー化、③高速書き換え、④高解像度化、だったのだが、何れも試作レベルではできるものの、なかなか製品が出てこなかった。

①の大画面としては、AmazonのKindle DXやよびSONYのDPT-S1くらいしかなかったのだが、最近クラウドファンディングなどで幾つか見かけるようになった。そのうち日本で企画されているものが二つある。

一つはGVIDO、もう一つはsonoだ。前者は電子ペーパー、後者は液晶と違いがあるが、A4サイズ2画面で本のように折り畳みができるのが特徴だ。そして面白いのは、どちらとも楽譜表示が念頭にあるということ。

結構、思想レベルで違いがあるのが興味深い。前者はモノクロで書き換えが遅いが軽く、電池の持ちも良い。後者はカラーで普通のAndroidとしても使えるが重く、電池の持ちは悪い(それでも9時間とのことだが)。でもどちらも画面に書き込みができるようになっている。

両者とも20万円近いようなのだが、それでも楽譜なら需要があるのだろうか。ここも興味深い。Kindle6インチ版では1万円を切るようなものもあるのに、とも思うのだが、ここら辺は価値観の違いなのだろう。

楽譜はモノクロでよいので大画面の要求が強く、6インチではとても無理である。職業ミュージシャンにしてみればこれは譲れない。一方で雑誌を読みたいだけ、という自分のような手合いにとっては、製品が出てくるまで待つ余裕がある。

だが、楽譜だけとは思えないのだ。もともと6インチは文庫本や新書からせいぜいハードカバー程度しか想定していない。これより大きく、且つ仕事に使うものとしては、学術論文やマニュアル類、業務書類などが挙げられる。なぜここから声が上がらないのだろう。

卑近な話、Linuxのmanコマンドを打ち出しただけのPDFでも、充分に需要があるように思える。他にも大型機械や業務用ソフトなどのマニュアルはB5~A4が普通だろう。役所の後ろやオフィスの書類棚に納まっている紙類の多くもこのサイズのはずだ。

近年ではどうせ書類はExcelやWordなどで作っているのだろうから、PDF化はたやすい。セキュリティにしても大きな問題にはならないと思う。一番のネックとなっているのは、今のところ端末の価格だ。

一般論として、画面サイズが2倍になると面積は4倍だから、値段も4倍になる。6インチで1万円なら12インチでは4万円だ。もし歩留まりが悪いものになると更に値段は上がるし、販売台数が見込めないものは当然割高になる。そういう意味で、13.3インチで8万円のSONYのそれは健闘している方だ。これが2画面になると16万円になるが、そうすると二つのプロジェクトの価格も納得がいくレベルだろう。

自分の感覚としては、A4見開きで5~6万円が限界であるから、その差は3倍である。6インチのKindleでも3万円台のものがあるくらいだから、その感覚が不公平であることもまた分かるのだが、20万円近くなるとノートPCが買えるから、そのくらいの機能が欲しくなる。

結局この、大画面への対価に関する感覚のギャップこそが、こういった商品の普及の妨げになっているのだ。量産効果量産効果と幾ら騒いでも限界はある。素直に諦めて(考えを切り替えて)買うか、諦めるか、どちらかしかないのだろう。

とか言っている隙に、全く新しい技術(印刷技術で作る電子ペーパーとか)が出てきて一瞬で引っくり返る、ということも技術畑ではよくあることだ。少ない望みをそこに繋ぐことにする。

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