2016年11月30日水曜日

マスクとゴーグルと感染経路


インフルエンザの季節になるとマスク姿を見掛けるようになる。また、マスクの効能や使い方について、実験を伴った示唆が広まるのも恒例だ。

市販されているマスクの多くは、N90クラスとされている(定義はないが)。SARSが流行ったときはN95のマスクが飛ぶように売れた。世の中にはN100のマスクもあるが、これらは高価だ。一般的に、通販などで普通の家庭が備えられるのはN95までだろう。

だが、N100と言っても100%防げるわけではない。定義によると、0.1~0.3μmの微粒子を99.97%以上除去できる性能だそうだ。だが、一般的なウィルスの大きさはそれより遥かに大きい。一方でこれは確率論なので、母数(ウィルスや細菌の数)が多ければ、通り抜ける数は多くなる。他にも分からないことが幾つかある。技術的に考えれば、これらは全て必要な要件だ。整理すると、ウィルス(細菌)毎に、
  • 実際のウィルスの大きさでの(できれば実物を使った)マスクの透過率
  • 一旦マスクで止まったとしても、その後の呼吸の影響でマスク内に侵入する確率
  • 感染が成立するウィルスの数
  • 一回のくしゃみで飛び出す飛沫の数と大きさ、その中に含まれるウィルス数(分布)
  • 飛び出した後、(感染力を持ったまま)生き残る確率(時間経過曲線)
  • 手洗いでウィルスが流される確率
  • 正しい消毒法と効果(除去率)
などが必要だ。今分かっているのは全部相対的な危険度だけで、充分かどうか分からない。こんな基本的な数字すら一般に知られていないようでは、防ぐ側としては心許ない。

極端な話、市販のマスクだけで充分なのかも知れないし、人口密集地でなければそれすら不要かもしれない。逆に、満員電車の中ではN100でも防ぎきれないかもしれない。マスクに着かなくても手について、それで目を擦れば終わりかもしれない。口のマスクだけではダメで、ゴーグルが必要かもしれない。そんなことすら分かっていないのだ。

個人的には、感染の多くは目から来ているかもしれないと思っている。花粉防止用のメガネにはまだ隙間がある。医療用のものでも、実は飛び散る血液や粘液を想定していて、くしゃみで漂う飛沫に対しては無防備なものも多い。N95を買うよりもN90+密閉ゴーグルの方が効くのか効かないのか、ぜひそれを検証して欲しいものだ。


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