2016年11月25日金曜日

AI時代のSF小説


SF小説の中には、コンピュータの杓子定規な判断を無視して人間的な判断が勝つ、というパターンが幾つか見受けられる。そうでなくても、小説の主軸は主人公の心理描写や独自の行動の選択などだ。だがAIが高度に発達してしまったら、いわゆるシンギュラリティ後は、「常にAIの判断が正しい」という社会になる。

気に入っている小説の一つに星新一のショートショート「はい」がある。全てが耳に付けた端末の指示に従っていれば安心、という世界を描いたものだ。あるいは、ハインラインの「月は無慈悲な夜の女王」の終盤では、シンギュラリティを超える場面がある。何をやってもAIに勝てない時代のSF小説はどんなものになるのか考えた時、これらを乗り越えて何かをしなければ始まらない。

そこで考えたのがこんな小説だ。主人公は宇宙船の船長。もちろん指揮権は持っているが、殆どの船長はAIに示された数個の判断から選ぶだけだ。そんな中でこの主人公は破天荒な判断を繰り返す。

もちろん結果はAIが示したものより悪くなる。船長の評価も悪い。ただ、船員からの評判は悪くない。その理由は、AIの判断は常に「良い」が、時として「面白くない」のだ。つまり、「良い」と「面白い」の優先順位が人間とAIでは異なる。そして致命的にまでその差があれば、AIとしては「良い」判断をせざるを得ない。

そこにきてこの主人公がその判断を破るわけだ。AIは必死に(冷静に?)フォローをするから致命的になるのは防げるが、「面白い」代わりに悪い結果になる。最後まですっきりしない結末になるが、主人公と船員はちょっとだけ自己満足して終わる。

うーん、つまらない。こんな小説ばっかりだったら世の中は暗い。

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