2016年11月20日日曜日

自然食品礼賛批判


あるアトピー患者が、肌に塗って大丈夫かどうかを判断するのに、食べられるかどうかを基準にすると言っていた。有名な痔の薬の成分は全て食べられる成分で、考案者自らが食べて試してみたそうだ。何れも科学的に意味がない。

どぶ川の水を肌に塗っても普通の人ならまず問題ないが、一口飲めばたちまち下痢に襲われるだろう。ピザにタバスコを掛けて食べる人でも、それを肌に塗ればヒリヒリと痛くて堪らないはずだ。そもそも、医者が出す塗り薬を食べる奴などいない。食べられるかどうかと肌に塗れるかどうかは関係ないのだ。

自然食品礼賛も同じ過ちだ。自然は安全で人工は危険、などというステレオタイプ的な事実は存在しない。例えば、昔から食べられていた食品を調べてみたら実は毒性があり、その上限値は新しい人工の食品添加物より少なかったりする。農薬にしても、同じような事例はある。

一つ例を上げておくと、ワセリンと植物油だ。石油はそもそも天然のもので、それを精製するのは主に揮発温度に頼っている。植物油の方は絞って上澄みを取っている。

精製の原理と油の本質を知っている者にとっては、植物油の方がむしろ得体のしれないものに見える。原材料名ではXX油と一言しか書いていないが、植物によってその油に何が溶け込んでいるかは細かく調べられていない。肥料や農薬に何が使われているか分からないし、植物由来の毒物が入っているかもしれない。「いや、経験的に問題ないと分かっているから」というのなら、ワセリンだって十分に経験的に問題がないことが分かっている。

体によいか悪いかは、体で実際に(科学的に!)試した結果として分かるのであって、自然か人工かは関係ない。そしてそれは、ちゃんと国が調べている。むしろ人工の食品添加物の方がしっかり調べられていることが多い。そういったものを規定の量以下で正しく使う限り、何の心配もない。

もちろん、ベンダが質の悪いものを使ったりウソをついたりすることはあり得るが、それは科学というよりはむしろ社会的問題である。

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