2017年1月26日木曜日

超音波トランスデューサアレイの応用


SFでよく描写される牽引光線(トラクタービーム)だが、この記事は超音波によるものだ。また、数mm程度の大きさのものにしか適用できないとのこと。それでもこれは興味深い。
例えば、プリント基板におけるチップ部品の実装だ。量産ではテープ供給があるが、これはスペース効率が極めて悪いし、少量多品種生産には向いていない。画像解析と合わせてごちゃまぜになった部品箱から一つ取り出して所定の位置に置く、などというのは、ロボットアームよりこちらの方が向いているだろう。薬品の調合や医療・微生物関係の実験などでも、手を触れずにしかもコンピュータ制御でできるというのは大きいはずだ。
研究ではもっと大きなものへ挑戦するらしいが、今のままでも活用法はある。例えば直径2mmのビーズを針金の先につけたものを多数、物体の上部に設置しておけばよい。この一つ一つを摘み上げることで全体が浮く、ということは考えられるだろう。数を増やすことで耐荷重も増える。
超音波トランスデューサアレイは、トラクタービームだけでなく、音響放射圧を応用した擬似触覚を作り出すことができる。3D映像と合わせて触れる物体(実際には「行き過ぎ」を許容してしまうのだが)を作ることも可能だ。トラクタービームの機能が更に付くのなら、押される感覚と引っ張られる感覚の両方を、3D映像に付加することができるだろう。
更には、壁や天井、床に超音波トランスデューサアレイを多数仕込むことで、ドローンを使わずに軽いものを運ぶ、例えば食べ物を口に運ぶ、郵便物や新聞を取ってくる、洗濯物を洗濯機から取り出してタンスに仕舞う、ということに夢が広がる。それは傍から見ると正に魔法に見えるはずだ。
超音波アレイの応用としてもう一つ、超指向性スピーカを作ることができる。部屋の中の特定の所でだけ聞こえるスピーカだ。場所を自由に設定できるので、例えば同じソファに座って映画を見ていて、子供は日本語で、大人は英語で聞く、ということも可能だ。これらを合わせて考えると、(遠い)将来のリビングには、これを仕込むことが流行るのではないか、と思う。

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