ときどき自治体が大々的に取り上げて失敗をしているのを見掛けるのが、このEM菌だ。川の汚れを軽減するのに使われる、というのをよく聞く。科学的に見ればトンデモというほどではないが、費用対効果や持続性の面ではほぼ意味がないと考える者が大勢だろう。
納豆菌の一種には確かに汚れを分解する能力があるから、培養して大量に投入すれば一時的な効果は望める。但し、EM菌の実体は必ずしも納豆菌ではなく、多様な菌の集合体、要は雑菌だ。その中に納豆菌の仲間もいるかもしれないので、効果はあることも考えられなくはない。だがもし効果があったとしてもあくまでも一時的であって、継続的に投入する必要がある。このため、費用と手間が掛かり過ぎることが次第に分かって尻すぼみ的に撤退する。
これを見極めるのは極めて簡単だ。EM菌を培養するのには糖蜜が使われる。また暖かいところで培養するとされている。この二つの事実は、ちょっとWebを検索すればすぐ出てくる、EM菌には初歩的な情報である。これを知っていれば、これ以上考える必要はないほど簡単な判断になる。
つまり、もし種菌の中身が判別できないとしても、常温で、川の汚水で培養できないのなら、何れは死に絶えて元に戻る、ということになる。効果があったとしても一時的であり、多分冬は越せないだろう。結論を出すのに10秒と掛からないだろう。
この程度の想像すらできないのはなぜか、と考える。必ずしも利権だ、とは言い切れない。それも少しはあるだろうが、EM菌を推す勢力にそんなに政治的な力があるとは思えないからだ。
では何なのか想像するに、これは(初期の)成功体験+バカの壁+権威主義なのではないか、と思うわけだ。これは結構強力で、代表的には投資で負けを認めない、損切りができないというのがある。民間療法の多くも当てはまる。この場合の成功体験というのは、多くの場合プラセボだ。知らない人でも、どこぞの大学の先生の言うことなら無条件に信用する、というのもこれだ。
このこと自体は心理学的にも自然なことであり、単純にバカにするのは間違いだ。そして、それは論理的思考で回避できること、自分ですらそうなりがちであること、相手がそうなっていると判断しても単純に突っ込んではいけないこと、などは心しておきたいものだ。
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