2017年8月3日木曜日
介護が普通
介護用品と言えば、デパートの片隅にひっそりと売られているのが定番だったが、最近ではスーパーにも介護用品コーナーが進出して、他のコーナーとの仕切りも目立たなくなってきた。介護が一般的なものになってきた証拠だ。
車椅子一つとっても、おしゃれなもの、便利なものが続々と出てきている。介護をもっと広く捉え、「単に使いやすい」ものとしてデザインし直していけば、新たな市場ができると考える。これは、バリアフリーがユニバーサルデザインに転化したのと同じ経緯を辿るだろう。新しい大型のショッピングモールは通路が広く、段差が少なく、車椅子トイレがあちこちに設置されているのが普通になってきているが、それと同じだ。
狙いは、「介護前、日常困難」、要は介護予備軍だ。要介護認定を受けていないため、人数も多く、プライドも残っており、デザインと値段にはこだわりがある層だ。今まで専用然としていた介護用品を、もっと日常寄りに持ってくるのである。
介護を大きく分けると、①食事、②移動、③排泄、④風呂、⑤就寝、⑥リハビリ、⑦医療措置・健康チェック、⑧娯楽・情報交換、⑨痴呆・徘徊対策、などとなるのだろうが、各々にその兆候が出てきている。例えば③は、普通のパンツと変わらないデザインのオムツが多数出てきている。
この中で最大の市場たりうるものが食事だ。食事をもっと掘り下げてみると、①介護対応の外食、②柔らかい食材の提供、③食材を柔らかくする技術的手段の提供(調理器など)、となるが、従来は②ばかりで、レトルトや冷凍食として出されてきた。これは単価が高く、毎日使えるようなものではない。もちろん①も同様で、レストラン自体が増えたとしてもたまの娯楽であり、毎日はそう行けない。
Panasonicの内部ベンチャーで開発しているDeliSofterというのがあるが、これは③に相当する。原理の説明がないが、恐らく圧力鍋のようなものと推測する。まだ製品化されていないようだが、個人的にはヒット間違いなしと思う。
上の延長で行くなら、レストランや家庭にこれが設置され、既存の料理に対して(むろん刺身などできないものもあるだろうが)これでチンしてやるだけ、であるなら、負担も少ないから大いに受け入れられるはずだ。
また、移動や風呂の補助にはロボットの活用が期待されるが、特にサイバーダインのようなパワーアシストをもっと充実させて欲しい。ここには大きく改良して欲しいポイントがある。
今のものはベルクロで締める仕様で、またパーツ毎に装着が必要なので、着けるにも外すにも時間が掛かる。これが使い勝手を大きく損なっている。
ベルクロでなく、時計のバンドやスキー靴のような治具で止める。また、ハンディ掃除機のように充電スタンドに立てておき、使うときにはそこに行って立つだけでその治具が締まり、30秒以内で装着できるようにする。そういった一見SFチックな仕掛けが、使い勝手を大きく改善する。
また、要介護者自身が(介護者の助けがあったとしてもごく簡単に)装着できれば、自分でトイレに行ったり軽作業をこなしたりと、随分楽になるはずだ。(防水でも風呂は無理か?)
スタンドと言ったが、椅子型に置けるなら、車に積むのも簡単だ。外出もできるようになるだろう。そのためにはデザインも充分に考えなければならない。
とりあえずこの2つ(食事と運動補助)は早急にやって欲しいものだ。
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