2017年8月13日日曜日
都会税
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/platform/index.html
何もしないよりはマシ、だがかえって「やってます、成果でません、またやってます、(以下略)」というのも困る。
「「動かない生活」推進の鍵」でも述べたことだが、地方創生のカギとは、都会から地方に人が移動するところにある。これには大きく分けて三つの方法がある。一つは強制的に人を減らすこと。人口密度を規定した上であぶれたものを抽選にする、子供が生まれたら郊外に引っ越す、などだ。だがこれは人権上あまり現実的でない。二つ目は、都市の便利さを阻害することだ。例えば病院や学校の数を減らしたり、物流や電車の本数に制限を掛けたりする。これも無理だろう。三つ目は、都会で生活することが高コストになるようにすることだ。これは端的には「都会税」の導入、ということになる。一番簡単なのはこれだろう。
これはある意味「地方交付税」と同じだ。それで不足だというのなら、もっと税率を上げてやればよいし、別の視点で新たな税を掛けてもよい。目的税として、目的と連動する指標に比例した税率を掛ける、などとすれば是正そのものはできる。
ここには、大きな二つの問題が隠れている。第一は、「日本全国どこでも最低限クリアしていなければならない公共のインフラ」が何で、どの程度であるべきか。第二は、その実現のための財源や予算は今の体系で良いのか。
第一の問題を今の程度で良しとするならば、全てを第二の問題として解決すべき、となる。今の問題は、それが地方自治体の予算で賄われているところにある。上の「都会税」は国税として国が税率を決定し、地方交付税は大幅に縮小ないしは廃止として、第一の問題については全て国が直接財源となり、地方自治体はその事務作業と、地方の裁量については自らの予算で補足するのみとすれば、問題は解決する。
これなら原理的に自治体は赤字にならないし、もしなったとしても自治体民に迷惑が掛かることはない。インフラ整備、選挙、学校、病院数などに影響がなければ、自治体が潰れても誰も気にしないだろう。
それでも都心税に文句が出るなら、第一の問題に手を染めなければならない。だがその結論は、定性的には既に出ている。コンパクトシティ化がそれだ。つまり、第二の問題を二つに分離し、現状の基準はコンパクトシティにのみ適用することとして、それ以外の地域には更に低い基準を適用する、というものだ。
地方からは相当に反発が出るだろうから、都会と地方の喧嘩になることは必至だが、そのまま殴り合えば圧倒的に地方が不利だ。直接利害を言い合うのではなく、客観的な視点での議論が必要になる。
そもそも人が都会に集まるのは世界的な傾向であり、それなりの魅力があるからこそ集まっているのであって、わざわざそれを阻害するのには理由が必要だ。今の地方創生の発端は、限界集落の増加や財政再建団体の発生などであろうと思われる。しかしそれだけでは、都会に集まって地方は絶滅した方が良いのでは?という問いに答えられない。地方で苦しむよりも都会で楽した方が、その人は幸せなのではないか、ということだ。
ここでは二つの視点を提案する。その一つ目は、都市への資源供給能力、即ち農林水産物の生産能力だ。東京の食料自給率は1%だそうだが、これを健全と見るべきかどうか。地方の食料総生産力は、都会への人口集中と共に減っていく。これには輸入と言う逃げ道があるが、国策で国としての食料自給率向上が挙がっている。これは主に地方が貢献すべきものだ。国策で目標何%と指定してやって、それに必要な人数を都会税で調整する、という名目で推進すれば、一定の納得感は出る。
もう一つは、都会の不健全さである。これは、人口が密集しすぎることによってかえって効率が悪くなる限界点、と言える。例えば空気の汚さ、騒音の多さ、暗さ(人工照明が必要)、臭気、近所のトラブル、犯罪の増加、ヒートアイランド、渋滞、学校保育所病院など公共施設の不足、海外不法滞在者の過多、などだ。他にも、インフラ老朽化、災害対策の困難さ(住宅密集による延焼など)なども考えられるだろう。但しこちらは、単体での定量化はできても総合評価になるので、少々難しい。
都心税の掛け方だが、自治体の人口推移を見ていると、政令市では概ね増加、中核市では拮抗している。中核市の定義は20万人以上なので、20~100万の間に拮抗点があるように思える。つまり、例えば30万人を境にして、これより小さいところは放っておくと自然に減り、大きいところは自然に増える、と推定できる。その限界点を境に都会税が急に大きくなるようにしてやれば、人口の均衡を調整できる。(まあもっとも、人口が増加傾向のところに増加度合いに応じて掛ければよいのだが)
そうすると、まず政令市から中核市に人口が流出し、中核市からそれ以外の自治体に人口が流出する。政令市はそれでも一定の規模を保つが、流出の規模は都市のサイズに比例して大きいため、中核市以下も大きな恩恵を受ける。結果、中核市未満の自治体に人が増える結果となる。
人は、環境が良くとも悪くとも、(悪い意味で)慣れてしまうものだ。だから満足度アンケートのような形ではなく、こういった客観的な評価を元に、結果をフィードバックすることも忘れずに誘導し続けるようなことをしなければ、安易なほうに流れてしまう。今の位置が正しいといえるのか、常に問い続ける姿勢が必要だ。
以上、考えてみて、ピケティの「富裕税」となんとなく似てきてしまったことに気づく次第だ。
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