2019年1月4日金曜日
8K劇場型映画
4K8K放送が始まったが、全く見る気がしない。値段が届かない、アンテナが対応しない、というのは勿論なのだが、やはり問題はコンテンツだ。従来のような「映画を高精細にリマスタリングしました」「美術館やベルサイユ宮殿、サッカーの試合やコンサートを引きで撮りました」「美しい景色を画面固定でどうぞ」くらいで、本当に普及するのだろうか。
そもそも、ハイビジョンの企画が決まった経緯は人間工学から来ている。すなわち、従来は遠くから見ていたものを、近くから見ることで画角(視野)が広がり臨場感が出る。近くから見ると粗が目立つので解像度を上げる。そういう理論だったはずだ。
一方で4K8Kにはそういう議論がない。これ以上近くから見るのは困難で、画角を更に上げるのなら大画面にするしかない。事実、今市販されている4K8Kモニタは皆、大画面だ。当然値段も高くなる。
そこまでして何が見たいのか。好きなアーティストがいて、コンサートで5千円、1万円と出す人でも、年間幾つも行く訳ではなかろう。映画にしても博物館にしても、せいぜい数千円、年に数回が限度だろう。毎日見たいとは思わない。朝のニュースや占いを大画面で見ても、何が嬉しいだろうか。むしろスマホで見たいのではないか。
プラネタリウムで映画を見たことのある人もいると思う。主要部分はスクリーンの、ごく狭いところでしか上映されない。必要のあるところだけがフルスクリーンで投影される。これは技術的問題というよりは、余計な(見せたくない、どうでもよい)ところの絵作りを省略するためだ。画角が広がることは、必ずこの問題を生む。
余計なところがどうしても見えてしまうのが、演劇やミュージカル、スポーツ、コンサート、パフォーマンスなどの一連のコンテンツだ。だから、これをベースにするのが良かろう。つまり、映る範囲は固定してしまい、その中で人は好きなところに注目して見る、というものだ。コンサートなら推しメンだけを見続けるのも良いし、演劇で端の方でうろちょろしている端役に注目するのも、一つの楽しみ方だ。
これと同様のことを映画でやる、というのは、新しい試みと言えるだろう。つまり、できるだけカットインやズーム、アップなどを使わず、引いた画面固定で、画面のあちこちでいろいろなことが同時進行で起こる、注目するポイントが人によって違ってよい、というものだ。劇場と違って当然フルCGは使えるし演技もタイミングも細かく作り込めるので、監督の意図は詳細に入れ込めるが、その製作の負荷は映画の何倍、何十倍だ。そして見ている方も1回ではなく、何回も見ることになる。
大団円を演出するようなことが難しくなる、話ははるかに複雑になる、探偵ものなど作り辛いジャンルが出てくる、などは予想されるものの、映画の新しい形態として、表現者の制作意欲を引き立てるものになるのではないだろうか。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
注目の投稿:
富士山噴火への備え・再考
以前にも https://spockshightech.blogspot.com/2017/10/blog-post_2.html という投稿をしたことがあるのだが、もう少し状況を詳しく知ることができないか、調べてみた。 首都圏の対策としては、『首都圏における広域降灰対策...
.jpg)
人気の投稿:
-
「人はなぜ悪に憧れるのか」と「人はなぜ正義に憧れるのか」をGoogle検索してみたところ、前者は素直にヒットするのに後者はひねくれたサイトしかヒットしなかった。どうやら人は悪に憧れているようだ。 前者のサイトを読んでいると、様々な解釈が出てきて面白い。だが、検索前に自分...
-
3.11で原発の危険を甘く見ていたように、次は噴火を甘く見ていたと後悔するかもしれない。今の知識を振り返ってみる。 過去の富士山噴火の規模を見ると、溶岩や噴石などの被害はもちろん近隣で発生するとして、広範囲に火山灰が積もる。予測によれば、関東でも数cmは積もる。この量で...
-
一国における貧富の差が余りにも拡大して手が付けられなくなった時に、第二の通貨を発動する、という手が考えられる。お互いの使い方や交換に制限を掛けてやることで、第二通貨が貧乏人の間で主に廻るようにして、独立した(仮想的な)経済圏を作ってやるのがこの目的だ。 低所得層は第二通...
-
年金の制度を調べていて、なんと複雑で面倒なことかと辟易した。今ちょうど年金改革がされているけれども、現行のシステムを複雑にしているだけだ。年金に限らず、様々な社会保障制度が別の名前で呼ばれ、申請方法も異なり、審査も給付も別。ファイナンシャルプランナーや税理士、公認会計士などが必要...
-
ディーン・ケーメン氏が発明した浄水器「 スリングショット 」の原理は、いわゆる蒸留である。つまり水を沸騰させて水蒸気にした後、冷やして水に戻す。汚水と蒸留水の間で熱交換を行うことで効率を上げている。 日本では、防災用の浄水器としては中空糸膜や逆浸透膜が殆どだ。これと蒸留式には...
-
Googleがローカルニュース記事を作成するソフトウェア開発に資金を提供した 記事を見ていると窮余の策にも見えるのだが、考えてみるとむしろ好ましいのかもしれない。今まで、ローカルニュースは地方紙の領分であり、全国紙ではローカルニュースは1ページとか、ごく少数しかなかった...
-
FacebookのAIが、英語を使いながらも人間に理解できない文法でしゃべりだし、そのAIが停止された、と言う話が話題になった。その会話を実際に見てみたが、確かに気持ち悪い。この気持ち悪さ、どこかで感じたことがある、と思って思い出してみたら、眉村卓の小説に度々出てくる「産業...
-
以前にも https://spockshightech.blogspot.com/2017/10/blog-post_2.html という投稿をしたことがあるのだが、もう少し状況を詳しく知ることができないか、調べてみた。 首都圏の対策としては、『首都圏における広域降灰対策...
-
世の中の話題はAGIを通り過ぎてASIに進んでいる。AGIがGeneral IntelligenceならASIはSuper Intelligence、即ち人類を遥かに超えた知性ということらしい。 2045年にシンギュラリティが起きると予測したのは、人工知能研究の世界的権威であ...
-
2025年7月30日、ロシアのカムチャツカ半島沖で地震が発生し、日本の太平洋側の広い範囲で津波警報、津波注意報が発令された。最大予測は警報地域で3m、注意報地域で1mだった。 電車は止まったところもそうでなかったところもあったが、都心で避難した人は皆無だった。警報が出てから半...
0 件のコメント:
コメントを投稿