2019年1月25日金曜日
法律記述言語
以前提案した「法のプログラム化」を推進するためには、自然言語に良く似た「法律記述言語」が必要だ。これを考えてみる。
そもそも、なぜ今の法が分かりづらいのかと言えば、用語定義や論理構造が曖昧なところだ。だから法学者が複数いれば解釈が全部違ったりする。これは自然言語のみに頼ってきた近代の法の根本的な欠点だ。今の時代はコンピュータという便利なものがあるのだから、これを使わない手はない。
まず、法とはルールだから、①誰が②何をしたら(どんな状態になったら)③何をする、という構造を持っている。全ての法をこの状態に書き換えると、次のようなことが起きる。
②何をしたら(どんな状態になったら)は、パラメータとその値の組み合わせだ。例えば、平成何年の何月何日何時何分の時点で、①(誰)がどんな行為をして、その行為の動機がこうで、目的がこうだったとしたら、懲役何年に処する。
従来は、目的別に法が纏まって書いてあった。しかしこの書き方では、ルールは全部個別バラバラになる。ルールはいちいち個人向けには書かれないから、自分はそのルールの①に相当するのかということは、判断が必要である。
また、②何をしたら(どんな状態になったら)、の部分は膨大になる。法律の用語定義や上下関係・前提(適用期間など)が全て展開され、フラットになるからだ。これは、一見当たり前のことが長々と記述される、という形になる。例えば「今生きている日本国民」「日本在住」「在住の定義はXX」「事象当時に正常な判断能力を有するとみなせる」「正常な判断能力を有する条件はXX」などだ。しかし、これは元の法制定時に決まり、展開は自動で厳密に行われるので、人手が掛かるわけではない。
また、裁判で行われる「情状酌量」も、ルールに組み込まれるべきだ。更に、ルールの適用可否である「XXをしたとみなせる」の部分についても、よく争われるところだ。例えば目撃証言のみの痴漢冤罪などがそうだ。裁判では「XXとXXとXXを鑑み総合的に判断」などと言うが、これもルールに組み込むべきだ。
ルールは、パラメーターと値、その組み合わせだ。従って、パラメータが何かが分かれば値は調べられる。中には不明のものも出てくるだろうが、それこそが裁判の争点だ。つまり判断が分かれる「値」が決まれば、ルールの適用可否は自動的に決まる。
こうして決めたルールに従って分析をすると、恐らく従来の裁判の問題点が抽出できるだろう。それはすなわち、適用すべき/すべきでないルール、条件適用、用語の定義、に対してのばらつきや恣意である。そういったものを集め、またルールを強化するなどしてばらつきをなくしていく。
この結果として、世の中がどう変わっていくか。訴訟は、相手が何をやったか(=適用条件)の認定が主たる争点になり、ルールが厳格になればなるほど認定は簡単になる。それこそAI裁判所のようなものができて、あっというまに判決が出る。三審制は暫く残るだろうが、それは事実認定の曖昧さが減るに従って減っていくし、民間の判定サービスも出てくるだろうから、訴訟そのものが減っていくだろう。迅速で公平な裁判は、世の中を幸せにするはずだ。
ここでの懸念は、権力者側に有利なルールが増えていかないか、というものになる。当然それを完全に防ぐことは不可能だが、情報公開があれば恣意的な判断は機械的に集計できるので、それを抑止力にできる。
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