2019年1月1日火曜日
組織はAIなり
無論、「組織は人なり」へのアンチテーゼである。
組織における「人」とは、労働者としての意味と、経営者としての意味がある。何をすべきかを考える人、すべきことをする人、だ。その各々にノウハウや知見があり、その優劣が組織の行く末を決める。
悲しいかな、人は未熟で生まれ、育ち、そして組織を離れていく運命にある。このためこの知見は育成や伝承、更には時代に合わせた修正や追加が必要だ。また、人一人の育成コスト、時間、総量には限界があるから、数も配置も見極めも必要で、それはそれでまた知見が要る。
今までこれは当たり前だったのだが、将来的にAIが知見を保存できるようになると、状況が変わってくる。人が本当に要らなくなるのだ。
例えば、伝統工芸である漆塗り職人が減ってきているとする。そこにWebカメラと温度湿度センサを仕込んで職人を観察すると、漆の練り方や塗り方等のノウハウがAIに溜まってくる。これをロボットで正確に再現すれば、ある程度の品質をもった製品を作ることができる。
これでも職人には直ぐには届かないだろうが、今度はロボットが自分で学習する。すると何れは職人に追いつき、追い越すことも可能となるだろう。しかも今度は、そのノウハウは簡単にコピーできるので、一気に職人不足が解消する。個々のロボットが学習してノウハウを交換すれば、更に高みに行くことができる。
更に、このロボットに摂動機能を付けておいて、ときどき突然変異を生み出すことにする。この大部分は失敗に終わるが、中には新しい芸術を生み出すことができるだろう。その摂動パターンを更に学習(メタ学習)することで、高みの追求の速度は更に速くなる。
この時点で、必要な人間は最低で一人(社長)だ。まあ機械のメンテやら掃除やら経理やらの雑用はあるだろうが、それらも代行させたりロボットやクラウドサービスに任せたりできるだろう。もっと言えば、社長も人である必要はない。こういった会社を百個束ねて「AI社長」が運営する、なんてことも考えられる。
組織の大部分で人が必要なくなることのメリットは大きい。不良在庫(若輩や高齢者)を抱えることによる無駄なコストはないし、福利厚生も必要ない。保険も不要。雇用義務も発生しない。少々サービスが悪くなっても、人がいない方が利益率は上がる。
会社や組織が人を尊重する理由は、将来的には全て無くなってしまうかもしれない。悲しいことなのか、好ましいことなのか、よく分からない。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
注目の投稿:
ダイナミック租税とその指標
今の法律では、税率は一定の計算式で表されるが、そのパラメータは固定である。需要と供給のバランスによって商品の価格を変えるダイナミックプライシングというのがあるが、あれを租税にも適用してはどうかと考えてみた。 納税者の声をベースにして様々な租税や補助金を自動調節して、どこか一箇所...
人気の投稿:
-
ハクキンカイロの発熱原理を調べていて、これを防災用(キャンプ用でも良いのだが)の湯沸しに使えないかと考えた。 普通、キャンプではガスコンロを持っていく。だがあれは裸火を使うから、熱効率は悪い。これに対してハクキンカイロの仕掛けは、白金触媒を適切な場所に配することで、極...
-
科学者、医者等であっても発言が必ずしも科学的とは限らない。無自覚ならまだ可愛いが、むしろ素人を煙に巻く悪意すら感じることもある。 量的議論がそのひとつであることは言うまでもないが、もっと以前の問題として、論理が破綻していることの多さがある。 そのひとつとして、ス...
-
新型コロナウィルスへの対応で、医療機関の防護服やマスクが足りないことが話題だ。ゴーグルは違うが、その他は使い捨てであるところがネックになっている。作っても作っても、消費の方が激しい訳だ。しかし考えてみれば、そもそも何で使い捨てなんだろう。細菌兵器用の防護服は使い捨てではない...
-
ガートナーが出しているハイプサイクルによると、生成AIはまだ幻滅期の手前にいるらしい。つまり今後大きな幻滅を経て実用域に進んでいくことになる。その幻滅とは、人間なら当たり前にできることでまだ生成AIにできないことが多く分かってくることによる。そしてその幻滅期を乗り越えるのは、...
-
時代が進むことで、昔のSFが奇異に思えるようなことはよくある。抑揚のないコンピュータ音声や、わざとぎこちなく歩く人間型ロボットなどは、もはや過去の遺物である。スタートレックシリーズに出てくるトリコーダーもその一つだ。 トリコーダー本体、また医療用プローブを手に持って...
-
生成AIを使って作成されたイラストに対する極端な非難が相次いでいる。そのどれもが、ちょっと行き過ぎに思える。例えば、事前にAIであることを知らせているもの、絵を描いている本人が確認し承諾したものまでも非難されている。なぜこんなに過剰な反応をするのだろう。単にノイジーマイノリティの...
-
卓上カレンダーのようなものを机に置いておいて、必要に応じてテレビ電話やフォトフレーム、緊急通報など、家で必要とされる様々な機能を集約する機械を考えてみる。 これは、従来は電話やFAXのような位置づけだったものだ。これら以外にも一家に一台の情報機器は考えられるので、それを切り替え...
-
コロナ禍ではあまり本ブログを更新しなかったが、この間は陰謀論が跋扈した時期でもあった。コロナは存在しない、ワクチンは危険、アビガン買いだめ、マスクは意味がないなど、実に様々な陰謀論が飛び交った。 この手の人は今だに存在しており、体感としてはむしろ増えている。それも、身の危険を...
-
自分の知る限りでは、VRChatのワールドで青空文庫が読める図書館があったのと、N高の教室メタバースくらいしかマトモな例がないのが、メタバース内で本を読む方法だ。本や書類がメタバース内で苦も無く読めるようになれば、電子書籍も含めて全部メタバース内に落としてしまいたい、とすら思っ...
-
映画と言えば、今でも娯楽のジャンルの一つとして確立したものではあるが、近年では衰退の兆しがある。そのたびに3DやCGなどのテコ入れが入ってきたわけであるが、ここにきて更に新しい提案ができるようになった。それがタイトルにあるインタラクティブ性の導入である。 とは言っても、...
0 件のコメント:
コメントを投稿