映画「アビス」で紹介された液体呼吸は、その後も研究されているようだ。短期間なら呼吸できるが、肺を傷つけることが問題になっている。確かに、空気が入る前提の肺に水を満たし、更にガス交換のためにはその水が動く(行き来する)必要があるから、圧倒的な密度を持つ液体の移動エネルギーが、肺胞に強い負荷を掛けてしまうことは想像に難くない。
液体呼吸ができるようになると、高圧下での活動が可能になる。具体的には潜水や宇宙(高加速度)での活動などだ。だが、個人的には、映画「パシフィック・リム」のような巨大有人ロボットを候補として挙げたい。巨大ロボットに乗り込んで戦闘をすると凄まじいGが掛かるため、実現は不可能とされているのだが、液体に満たされた室内にいれば、圧力は均等に掛かるため、この問題が大きく軽減されるのだ。
さて、肺の目的はガス交換、即ち二酸化炭素を排出して酸素を補給することだが、上の通り、肺の中で液体を勢いよく動かすことは肺の損傷に繋がる。そこで、肺には液体を満たすだけにして、ガス交換は別の方法で行えないだろうか、と考えてみる。
その方法は既にある。人工心肺だ。心臓手術中の機能代用に使われる。しかし、人工心肺で長時間人間を生かすことは難しいとされている。その最大の問題は、血液の凝固だ。一旦血液が体の外に出ると、シリコンや塩ビのホースに触れることになる。これが血液凝固を引き起こすため、人工心肺を使う際には大量の凝固防止剤が使われる。これが体に悪いことは明らかだ。また、ガス交換のためには、肺の面積に匹敵する60平米のガス交換膜に触れさせる必要があるが、これにも同様の問題がある。
従来はここで技術的限界が来ていたわけだが、最近になって幾つか希望が持てるニュースが出てきた。それは、3Dプリンタによる人工血管の製造や、iPS細胞などによる臓器の組織が培養できるようになってきていることだ。もし血管の内壁の細胞、及び肺胞の細胞を大量に増殖できれば、既存の人工心肺のパイプ及びガス交換膜にこれを貼り付けることで、凝固防止剤が不要になるかもしれない。
そんなことがもし可能になれば、液体呼吸ではなくまず人工心肺に使われるだろうから、まずはそちらを目指してもらうとしても、最終的には巨大有人ロボットへの応用を考えて頂きたいものだと思う。
0 件のコメント:
コメントを投稿