2017年3月17日金曜日

教育の無償化とタブレットの使用


自分が何か新しいことを勉強しようとするときは、本を読む。1冊ではなく何冊も買う。それこそ毎月十冊を何年、という時期もあった。そして読む。ひたすら読む。理科数学では少し手を動かす必要があるが、基本的には本を読むだけで済む。
だが、本のコストは膨大だ。1冊数千円を何冊も買えば軽く万を超える。新しいことならしょうがないが、今なら無料でWebで見られるものがあるし、YouTubeなどで学習コンテンツを無料公開しているところもある。だが、問題はそれが散逸していることだ。英語なら比較的簡単に手に入るのだが、他の教科となると探すのにばかり時間を取られてしまう。
人は、疑問と興味さえあれば、自分で学習しようと思う生き物だ。それができないのは、
  1. 学習に至るコストが高いこと
  2. 学習方法が効率的でないこと(教え方が悪く理解が進まない)
のどちらかだろう。1.には、教材への到達、教材の価格、教材の良否の見極めなどが含まれる。時代は後戻りしないから、人が生まれてから一人前になるまでに必要となる知識の量は、時代と共に増えていく。これはつまり、より速いスピードで学習していかなければならない、ということを意味している。効率的な学習法をどんどん開発しないと、社会人になるまでの時間が長く掛かってしまい、ひいては社会的コストが増大することになる。
タブレットとデジタルコンテンツは、そのための有効な手段であることは疑いない。だが、ただあるだけではダメで、無料か安価、また一定以上の質を保ち、体系的で網羅性も持っていて欲しいし、解説だけでなく到達度テストや再テスト(忘れ防止)まで含んだ学習システムであって欲しい。解説にしても複数の視点で用意し、つまづいたら別の視点でリカバーできるようなものにしてほしい。
一通りの説明で理解できない子供に対して、その子供にどう分からないか聞いて、別の説明方法を提供する、ということは、教師の力量に頼る部分が大きく、従来の(紙含め)学習コンテンツでもあまりできていないところだと思う。デジタルならそこを補強できる。これが、特に低学年の子供の理解を促進する。
例えば算数。図形の認識において、積み木の隠れたところまでの数を数えるとか、さいころの展開図を当てる、などというものにおいて、子供は実に様々な解釈をしては間違えるものだ。この場合、異なった膨大な例題を与えてやることで、理解ができるようになる。だが紙面でやるとスペースが限られているから、大した数の例題を揃えられない。デジタルならそれができる。だから一度正解を示してやった後で、直ぐに別の問題を出して理解度を確認できる。
人によって引っ掛かるポイントは違うから、こういった学習コンテンツの総量は、年間授業時間の何十倍にもなる可能性がある。だが、デジタルの場合はアダプティブテストの手法があるから、理解できるところはどんどん進んでいくことで、トータルでの学習時間は大幅に抑えられる。
学校や教師の役割がこれで大きく変わるわけではない。学校は座学だけの場ではないからだ。体育、美術といった手や体を動かすこと、協調やリーダーシップ(遊びやクラスルーム、友達との関係、イベント(体育祭文化祭など)、部活、・・・)といった要素はそのままで、また座学とて全てタブレットで済むわけではない。これは座学の「単純労働部分」を減らし、教師をサポートするものとして位置付ければよい。
無論、教育そのものがビジネスであることは否定しない。だが少なくとも義務教育に関しては、自己学習が無料でできる環境が整っているべきだと思う。その間、学習塾などはコンテンツの質で勝負すればよい。
ベースとなる教育コンテンツは、ネットに幾らでも転がっているし、有償のものを含めればより取り見取りだろう。だが、①無償公開を前提とする、②学習指導要領の改訂に合わせて期限までに修正する、③膨大な「引っ掛かりポイント」の推定と補完コンテンツの充実、④再学習や③への対応を含めた教育管理システムまで準備する、⑤全国規模の人数のアクセスに耐える性能を保持する、となると、単独の学校や学習塾、地域の教育委員会、といった規模では無理で、国レベルでの予算化と運営が必要になる。

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