2017年7月26日水曜日
ケース・バイ・ケース
この言葉は思考停止を生むので、極力使ってはいけない。似たような言葉に「人によって(全く)違う」「時と場合による」「柔軟な対応」「臨機応変」などがある。
なぜそう思うのか。例えば、米国の「おむつを買った人はビールを買う傾向がある」という有名なマーケティングの事例がある。それまでそのような分析を行った例は当然なかった(あるいはマイナーだった)と思われるが、従来気付かなかった傾向分析ができて、それに一定の論理的根拠が見出せたわけだが、これを見出さなかった理由は単純に「知らなかった」「分析をしていなかった」というだけだ。
頭をいきなり殴られて平気な人はいるまい。怒るか、戸惑うか、防御しようとするか、きょとんとするか、くらいには分類できるはずだ。その比率まで直ぐには分からずとも、「人によって(全く)違う」などということはあり得ない。つまり、この手の言葉を発する人というのは、それ以上の分析をすることを「(暗に)拒否している」あるいは「想像できない」のだ。ここが思考停止という所以である。
もちろんそこにはとんでもない反応をする人もいるだろう。本当に無反応だったり、嬉しがったり。でもそれは統計的に処理すべき問題であって、十分に少ないなら無視すればよいし、ある程度いるなら「場合の数」が増えるだけのことだ。しっかり場合分けをして、その場合分けが充分実用的範囲に収まるか検証し、不足なら追加して調べ、各々の場合にどう対処するかを事前に考えておく。これが正しいやり方だ。
システムを設計するとき、エラーリカバリを考えるとき、ルールを作るとき、防犯や防災の対策をするとき。その想像力の欠如が悲惨な結果を迎えることになるし、不都合を拡大することもある。しっかり場合分けして考えることは重要だ。
この話にはもう一つ裏がある。不都合を隠すためにこう言う、というケースもあるのだ。不幸なことに、こう言われることで黙ってしまう人も多い。それは質問する側の思考停止だ。だからこそ、こういう言い方をされたときには質問をする側も諦めてはいけない。
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