2017年7月4日火曜日

官民データ活用社会


「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」が閣議決定された。
美辞麗句はいつもの通りだが、官が本当にこの意味を理解しているのかが気になる。その大きな理由は以下の通りだ。
  1. 情報には、単独では意味がなくともその組み合わせによって意味が出てくるものがある。ビッグデータ活用とかAIによる解析とかいうものは正にそのようなものだ。だから、単独では問題でなくとも、組み合わせによって国家機密が結果的に漏洩してしまうようなことは十分に考えられることだ。
  2. それが国家機密というほどのことはなくとも、官(自治体まで含め)の不作為、怠慢、思想的偏り、忖度といったことまでも明らかになってしまう。それも過去に遡って調べられるから、自分の首を絞めてしまうことになる。
  3. 言ってしまった以上、情報公開は加速する必要があるはずだが、今の国会に出ているような、黒塗りだらけの情報公開の印象は、更に悪くなるだろう。
国家機密に関して言うと、自衛隊周りの調達が代表的だろう。そこから推測して、今年度の自衛隊の航空機の部品調達がどの程度か、などが漏れる危険がある。自治体の怠慢当たりだと、まだ「効率化の糸口が見つかった」などといって誤魔化すこともできようが、特定の企業への肩入れなどは統計的にバレてしまう。つまり、無駄が漏れるのはまだ良し、恣意が漏れてしまうことが問題だ。その中には無意識のものもあるだろうが、政治家たるもの、意識している恣意は、漏れて欲しくない代表格だろう。それも数字でバッチリ出てしまう。もっと言えば、内閣への忠誠心まで%で出てしまうかもしれない。

AIは結構恐ろしいものだ。先日の記事では、世界中に感染したウィルスの画面表示から、その文章が元々どの国で書かれたものかが推測されていた。ある程度長い文章であれば、句読点のつけ方やかな漢字の選択、改行の癖、章立てなどから、文章を書いた個人を特定できるようになってきている。情報公開法で請求すれば途中過程も分かるから、誰がどこを修正しようとしたかまでバレるだろう。役所として、省としてならともかく、それを基に個人攻撃を受ける可能性が出てくれば、また色々と不都合が出るだろう。

例えば、個人情報保護関連で有名な高木浩光氏が、個人のブログで個人情報保護法改正の顛末について情報公開法を駆使して調べている。誰がどう法律を捻じ曲げていったかが分かる、なかなかの力作だと思うが、このレベルでの解析がどの法律でもAIで簡単にできるとなったらどうなるか、更にそれが個人別に蓄積されていったらどうなるか、ということだ。

この方法で、AIを駆使して公のアラを探すネトサヨは増えるはずだ。公やネトウヨがこれに対抗することは困難で、なぜなら非効率や恣意がある程度あるのは行政の常だからだ。そういった情報は、新聞雑誌よりもむしろソーシャルメディアで広がる。これらは自分が知りたい情報が広まる原理になっているから、情報操作は困難で、特に若者の支持を失うことは今の与党にとって不利なはずだ。

情報の分析能力が格段に上がった時、従来通り黒塗り文書を出していれば良いと高をくくっていると足元をすくわれる、そういう時代が来ているのだ。だがまあ、対抗というよりは、そういう時代になりつつある今、公はそのままでよいのか、変わるならどう変わるべきか、を考える時期に来ている、と言えるのだろう。

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