2017年10月16日月曜日

外骨格給電機構と緊急アドホックネット


http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1081748.html

この手の製品は幾つかあって、最も有名なのはサイバーダイン社のものだろう。米国でも軍事用の開発があったはずだ。だが何れも実用にまでは至っていない。その大きな障壁の一つは、まちがいなくバッテリーだ。

本来なら、必要な使用時間は18時間程度、つまり寝るときには外して充電し、起きている間ずっと着けていられることだ。だが実際には1、2時間しか動かない。バッテリを十倍付ける、という解決策はナシだ。あまりに大げさで気後れする。バッテリの性能向上やモーターの性能向上はそう簡単には行かないから、このままでは普及できない。

この方法を解決する手段は二通り考えられる。一つは、補給が簡単になるようにすること。もう一つはマメに充電できるようにすることだ。

サイバーダイン社の場合、バッテリ容量は65Whで1時間程度とのこと。巷で2、3千円程度で売っている1万mAhのバッテリは36Whだから、これ二つ分だ。だから、1時間あたり2本の予備電池を持って歩けばよい、ということになる。例えば18時間のうち活動している時間を1/4と仮定して4.5時間、本数にして9本持ち歩けばよいことになる。大きさ重さは
不満だが、今すぐに実現できる手法ではある。

燃料電池や発電機と燃料、という視点で考えると、例えば

http://ttc-fuelcell.com/sfc/efoy/

この燃料電池は45Wで8kg、燃料消費量が1L/kWhとなっている。65Wで18時間だと1kWh程度が必要であり、燃料消費率・発電量としてはそこそこ及第点だが、燃料電池自体の重量が重く、サイズも大きすぎる。

マメに給電する方法としては、椅子の背もたれにワイヤレス給電機構を設ける、というものがある。自宅の椅子、自動車の座席、事務所の椅子に各々仕込んでおけば、自然に充電が可能だ。生活圏や地域で一定以上の普及があれば、これも可能だろう。

だが、どちらかと言えば燃料電池の方が有望と言えるだろう。充電椅子の普及を待ってい
る間に燃料電池が小型化され、燃料もコンビニで買えばよい。そうなれば、健常者にも普及し、走って通勤したり、生活圏が広がったり、という世界も夢ではない。

燃料電池と短距離ワイヤレス給電は両立できるから、外骨格を装着した人の腰の周囲にスマホをぶら下げておけば何時でも充電可能、ということもできる。すると外骨格は別の意味を持つようになる。身の回りの電気製品を全てこれで給電可能になるからだ。

これで最も有望なのは、アイウェアだと思われる。Google GlassやHolo Lensの大きな弱点はバッテリだが、常時無線給電可能ならもっと小さく作れる。また、Bluetoothイヤホンなどもこの恩恵に与れる。スマホは勿論だが、タブレットやノートPCも完全無線で長時間動作可能だ。

もう一つ面白い応用があって、この外骨格サポーターにはモーターが入っているが、実はモーターと発電機はほぼ同じものだ。何を言いたいかというと、このサポーターは、そう設計することにより、モード切替で発電機になれるのだ。

切り替えて足を動かしてやれば発電する。歩く必要はなく、膝を曲げ伸ばしするだけでよい。もちろん65Wも出るとは思わないが、例えば10Wであったとしても、スマホの充電には充分である。従って、緊急避難的な充電には充分に役に立つ。無線給電は理想だが、最悪USBポートが一つあればよい。

ネットワークには、アドホックネットワークと呼ばれる形態がある。これは、携帯電話のように基地局があるのではなく、個々のノードが相互に通信しあうことで遠くのノードと接続する、という機構だ。震災などでネットワークにダメージができたときに、携帯電話にアドホックの機能を付けておいて切り替えることで通信を維持する、というアイデアが昔からあるのだが、これをするとバッテリの消費が激しく、また激しくなくても何れはバッテリが減って切れてしまう。だから実証実験の域を超えることはなかった。

しかしこの方法では、発電機を常時持っているようなものなので、携帯電話のバッテリが切れずに継続的な通信が確保できる。当事者としても通信は切りたくないから積極的に充電するだろうからだ。

震災時でも通信の確保が保証される前提では、様々な追加の防災策をとることができる。災害状況が的確に把握できることは、対策の前提として非常にありがたい。

他の利点として、今までの感覚で言う帰宅困難者の数はぐっと減るだろう、ということも考えられる。燃料さえあれば歩いて帰る人が大多数になると見込まれるからだ。燃料の備蓄は、水や食料の備蓄よりずっと簡単だから、企業の負担も減る。

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