2018年4月22日日曜日

詳細規則から総合評価へ


AIの潮流は止まることなく、IoTやビッグデータもAIに飲み込まれているように思う。その方向性とは、どんなものか。
  1. 従来は機械可読でなかった情報が機械可読になる。
  2. これを用いて大量の暗黙知が生まれる。
  3. これらを活用し、確率的な判断が機械化される。
音声、画像、感情といった情報が機械可読になる。大量のスマホデータ、Suicaの使用、電子カルテ、気象データ、交通データといった大量のデータが使えるようになる。それらをAIにブチ込むことで、人間が制御不可能なほど大量の暗黙知が生まれる。

従来のシステムは確定的で、人間の指示に従って間違いなく処理をすることが求められた。これに対し、AIの主な役割はその前段階、即ちその操作をすべきか、そのパラメータでよいのかを検証するところになる。これを、業務システムと対比する言葉で語るとするならば、判断システムとでも言えるのだろう。

例えば、電子カルテは確定的なシステムだが、診断は人間の判断だ。ここにAIが「XXである確率何%、根拠は何と何」と表示することができるようになる。また、旅券の発行に対して、定量的な条件(犯罪歴、国籍など)を確認するのは従来のシステムだが、それが怪しいかどうか(怪しさ加減)を表示できるようになる。

これらの判断基準は明文化されていないから、従来の業務システムそのものとは少し違う位置付けになる。業務システムは厳密だが、こちらは少々間違えても許されるし、常に進化するものでもある。そして判断システムの優秀さの評価基準も、従来とは異なる。

判断システムの出現は、恐らく今までは表に出てこなかった、人間の細やかな対応を表に出し、且つ評価することになる。これは一方で、そのような明文化されていない対応の均質化をもたらす。

よくある例に、オリンピックの代表を選考する基準がある。「総合的に判断」と言うが、それが恣意でないことは確認しようがなかった。AIはこれに公平性をもたらすことができる。「XX大会で優勝したら合格」というよりも確実性が高いことが証明されれば、誰もが納得するはずだ。

これは「オリンピックで好成績を出す」という目標があるわけだが、他にも「予測の精度を上げる」という視点で考えれば、色々な応用ができるはずだ。例えば天気予報、選挙での立候補の要否(当落予測)、新曲のヒット予測、広告の効果予測、施策・政策の影響予測。極端に言えば戦争をして勝てる確率などもそうだ。

また同時に、「恣意の程度推定」も可能だろう。もし先に代表が決定され、後からAI分析での結果と違っていたとする。一回二回なら偶然もあるにしても、これが続けばそのこと自体も含めて恣意とみなすことができる。

更に、「評判」を算出することが可能だ。これは例えば、ある政策を実行した時に、SNSでの批判や賛辞、及びその規模(施策自体への関心度)を計測することができる。他には新製品の評判、裁判の判決への納得度、政治家の疑惑釈明への満足度などがある。それを元に適宜修正していくことで、最適化を図ることができる。

そのようなことが一般的になってくると、細かい規定や規則は逆に不要になっていくのではないか。つまり、例えば税金の控除が設定されていたとしても、実態に合っていなければ不満が出る。その「不満度」に合わせて税額を曖昧に決めるようにすれば、細かいルールがなくても国民は満足してくれる。

「何でも総合評価」時代になるとルールはシンプルになり、そのルールは抽象的なものばかりになる。「みんなで幸せになる」が最初にあって、その下は「最少不幸社会」か「平均値の最大化」のどちらかがあって、…などという憲法が制定される時代も、来るのかもしれない。

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