2018年7月18日水曜日
仮想通貨が奪うもの
ベンチャーがICOで資金調達をする例が増えてきているそうだ。ICOとは、要は新規の仮想通貨を発行して、それを買ってもらうことにより現金を得る手法である。買った仮想通貨はそのベンチャーのサービスの使用権や製品の購入に使用することができる。
仮想通貨を買う輩の顔は見えないし、株のように経営に口出しをすることはできない。クラウドファンディングよりも更に緩い(ベンチャーにとってはカネは得られるし口は出されない都合の良い)資金調達法と言える。志も低くなるだろうし、詐欺も増えるだろう。それでも有志の調達法としては有効だ。
ベンチャーキャピタルやクラウドファンディングよりもこちらが主流になることは明白だ。そしてカネの流れが変わると、他にも変わるものが出てくる。
というのは、従来は一部の投資家にしか流れなかった情報が広く流れ、ICO通貨も誰でも買えるようになるタイミングが早くなる、ということだ。
今の時代、特許でがんじがらめにして権力ビジネスをするのではなく、素早く立ち上げて世界中に広める方が早く楽に儲かる。多くのサービスは画期的なアイデアではなく使い勝手に依存するから、開発スピードが速い方が重視される。そこには短期に多くの資金調達が必要であり、エンジェルへの説明資料の作成やら訪問やらの時間も惜しいはずだ。
その点、ICOならあっという間に世界中から調達できる。煩いことを言う奴もいない。そして相手も見えないから、万一(殆どだが)潰れても後処理楽だ。
一方で買う側としては、多数に少しづつ投資して、どれか一つでも化ければ大儲け、という感覚で買うだろう。エンジェルのように詳しく吟味したりはしない。このため利益率は悪くなるが、市場全体としてみればベンチャーに流れる額は大きくなる。
エンジェルはこれに混じることになるので、平均的ICO投資家たちよりは利益率は高いものの、あまり重視されなくなる、という結果になる。つまり、従来よりエンジェルは儲けにくくなる、ということだ。
エンジェルは例外なく大金持ちだ。ピケティに倣うまでもなく、金持ちと貧乏人の格差は放っておけば広がるばかりだが、その理由の一つはこのような「投資」の効率にある。それが立ち行かなくなるのであれば、貧富の差が広がりにくくなる、ということに繋がるのではないだろうか。
従来は銀行や証券会社経由で中間搾取されていたものが、素人でも少額でも直接投資できるようになるのなら、これは結構明るい未来かもしれない。
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