もう十年経つのか、と思うと感慨深いものだが、電脳コイルの世界にまだ実社会は追いついていない。その大きな理由はデバイス開発が進んでいないところだが、なぜもっとスピード感をもって開発してくれないのだろう、と思う。
この分野は、マジックリープだけが突出している。それも開発費だけだ。他のHoloLensやEpson等はまだ研究所レベルであり、恐らく研究費も少なく、有用な応用アプリケーションが無きに等しい。
投資が進まないのは、この応用への期待感の弱さもあるのだろうと思う。ゲームでは殆ど意味がない。普段使いとしてどれだけ役に立つかをまず考える、そうすれば研究費もついてくるはずだ。
この手の製品では、①ゲーム、②コミュニケーション(アバター、会議室、サロン等)、③映像コンテンツ(インタラクティブなもの、映画、ショートムービー、スポーツ、コンサート等)、④情報表示、⑤電脳ペット、等がアプリケーションとして挙げられている。このうち①の一部、②、③は没入型である必要があり、半透過型にはそぐわない。また⑤は、現地の3D形状把握が必要であり、敷居が高い。
こう考えると、まともなアプリケーションは④しかないことになる。これはナビゲーションと映った物の検索、ということになるのだが、多分にここまでで思考停止してしまいがちだ。ここで踏ん張らないと、夢の世界にはたどり着けない。
ここから先はUIの秀逸さで勝負しなければならない、ということだ。そしてその優秀さだけで、十分に需要が出てくるはずだ。それを考えてみよう。
まず、メガネやスカウターのように常時着けっぱなしにする用途はあるのか、という疑問。もちろんゼロではないだろうが、映像コンテンツを見る用途でもない限り、必要に応じて取り出して使うのが筋だろう。これが必要なのは業務用や、警察軍隊などだ。今のデバイスはまずここで転んでいる。
電脳コイルに出てくるような、片目に掛けてちょっと使うというような小型デバイスは、当分は出てこないだろう。もっと現実的な解として、オペラグラス型を提案する。胸ポケットに入れておける大きさで、覗き穴があり、周りをざっと見回して、またサッと胸ポケットに入れる、という動作だ。
この場合は、必ずしも半透過型でなくとも良く、カメラ映像との合成で構わない。相手から瞳が見えなくても良い。せいぜい数秒から二十~三十秒程度の使用だ。スマホ兼用でも良いが、スマホと接続するBluetoothデバイスの方がスマートだ。形状は色々考えられ、単眼鏡型、昔の婦人用オペラグラス(取っ手があるもの)風、遮眼子(視力検査で目を覆う道具)型、スカウター型など色々だ。電池の持ちも悪くて良いし、重くとも構わない。
ボタンを押して覗き穴から覗き、対象が中央になるように映すと、その形状を把握してネット検索し、情報を出してくれる。ナビゲーションの途中だったら、映像に矢印を重ねて出してくれる。その情報は即座にスマホに転送され、詳しく知りたくなったり更に複雑な検索をしたくなったら、スマホを操作するようにする。
問題は、何を映して何を調べるか、である。
- 景色や風景、建物等の場合
- ランドマークの情報(建物名、定休日、開館時間、混雑度、高さ、築年、耐震基準、防火基準)
- 物件の情報(家賃・販売価格、条件(ピアノ可否、ペット可否等)、付帯情報(事故物件など)
- 計測(長さ幅高さ、コンセントの位置、天井ソケット形状、等)
- 植物・動物の名称、生息地、季節の特徴など
- ナビゲーション(目的地までの方向・距離・時間、乗り口の位置推奨等)
- その場所の気象(温度湿度風向風速、ガス濃度、PM2.5、予報注意報警報、天気予報、災害情報等)
- 緊急行動支援(公衆電話の場所、AEDの場所、勤休避難場所等とそこへの誘導、津波の予想高さをリアルに表示する、等)
- 店舗のセール情報、クーポン、買い物リスト、会員証の有無
- モノの場合
- 店などで
- 品名、価格、成分・材料、産地、温度、消費期限等
- 外で
- 品名等の他に近くで売っている店、通販の欲しいものリスト登録等
- 同じもの、似たようなものの購入暦
- 手持ちの品
- 使用期限、購入からの経過年数、修理暦、使用頻度
- 店などで
- 人の場合
- 氏名、以前会った場所時間用件、SNSやメールでのコンタクト履歴、借金や貸し借りの有無、住所、職業等
- 感情分析
0 件のコメント:
コメントを投稿