2018年10月6日土曜日
DApps考
中央サーバがない分散アプリケーションというのは、あるようでなかなか無かったのだが、DAppsはそういうものなのだそうだ。一時期流行ったWinnyのようなファイル共有ソフトは中央サーバがないから似たようなものだが、DAppsの場合はブロックチェーンを使用していて、暗号通貨(暗号トークン)による報酬のやり取りが発生する。仕掛けとしては複雑だが、なかなか面白い。
Winnyは非合法的匂いが漂っていたが、アプリはファイル共有だけではなく合法で有益なものもある。例えばSNSなら、世界中どの国に行っても封鎖されることなく使えるし、サーバダウンで使えなくなることもない。送金なら銀行より速く確実にできる。ただ、中央による監視がないことは、例えばSNSならアカウント封鎖ができないとか、送金なら誤送金しても返してもらえない、というリスクもあるので注意は必要だ。
さて、そんなDAppsは、まだ企業内で大々的に使おうという雰囲気にまではなっていない。DAppsでは中央サーバが無いため、ノードのデータ領域と計算能力の負荷が大きくなる。中央サーバの全能力と、各ノードの全能力の合計は、後者の方が圧倒的に膨大となる。つまり、総額としてみれば、企業の負担はかえって重くなってしまう。
この問題を解決しないと、DAppsは企業に普及しない。すなわち、サーバに、しかも複数のサーバに分散した上で何とか動くような巨大なプログラムとデータを、如何にして非中央集権の各ノードに置くか、である。
多重化を目指す以上は、一つのアプリケーションやデータを複数に配置することは避けられない。だが、単純なブロックチェーンのように全ノードに配置するのはやり過ぎだ。だとすればこの中間、すなわち全部ではないが十分に有意な分散をする、しかもそれで信頼できるようにする、ということになる。
このためには、従来とは違ったノード情報が必要になる。分散が十分であるかどうかを確認するための指標だ。例えば地理的に分散しているかどうか、同じないしは類似の組織に所属していたり似たようなソフトをインストールしていないか、通信の相手先が偏っていたり、同じ人と通信していないか、など。要するにお互いが独立しているかどうかだ。
アプリやデータは、この指標を基に分散しなければならない。独立度が高ければ分散数は少なくてよいし、低ければ多数のコピーが必要、ということになる。また、アプリに関しては当然計算機負荷の軽重が問題になる。貧弱なアプリは貧弱なノードに、重いアプリは重いノードに、というわけだ。
このアプリは単独で閉じるものとは限らないから、例えばミドルとUIで各々グループを作るような動きになる。そして、そのグループ間が通信をする。負荷が増えればグループ内でノードを複製し負荷分散する。そういったバックグラウンドが必要だ。
これら、すなわち個々のアプリ(モジュール、ミドル、ブロックと言っても良い)の分散度やリアルタイム負荷分散、当然故障検知や代替などが全て自動で行え、そのためのパラメータはアプリ作者が調節できるような仕掛けが必要である。
ここまで来ると、従来のDAppsやWinnyレベルではなく、業務用の監視ツールにも匹敵するソフトが必要になる。それがアプリにとってはバックグラウンドソフトになるわけだが、ここまででも相当に高度であり、計算機負荷も高く、容量も必要だ。
そんな仕掛けが開発可能なものなのかどうか、合理的な計算機負荷で納まるものなのかどうか、分からない。だがもしこれが出てくれば、従来のサーバビジネスが吹っ飛ぶような重要な可能性を秘めている。ここまで考えて作ってくれる人がいるものなのかどうか、注目している。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
注目の投稿:
ベジファーストと三角食べ
書籍「糖質疲労」「脂質起動」がベストセラーになっているらしいというので、少し読んでみた。そこに書いてあったことでいくつか気になったことがあったので、これをネタに生成AIをイジメてみようと思い、会話してみた。 その疑問とは、いわゆるベジファーストへの反論である。 まずベジファー...
人気の投稿:
-
骨梁とは、骨の内部に存在する網の目ないしはスポンジのような構造のことだ。この構造によって、骨は頑丈なのに軽量でいられる。類似の構造としてはアルミ発泡材があるが、あれはどちらかと言えば消音や軽量化が目的であり、骨のような(建築用語で言うところの)構造材としての用途とは少し違う...
-
屋根に超音波振動装置を取り付けておく。これによって屋根と雪の間の結合が破壊され、雪が滑り落ちやすくなる。これが題記装置の原理だ。角度によっては放っておいても落ちるだろうし、そうでなくても楽に雪下ろしができる。 まあ超音波でなくて低周波でも良いのだろうが、超音波の方が簡単...
-
ハクキンカイロの発熱原理を調べていて、これを防災用(キャンプ用でも良いのだが)の湯沸しに使えないかと考えた。 普通、キャンプではガスコンロを持っていく。だがあれは裸火を使うから、熱効率は悪い。これに対してハクキンカイロの仕掛けは、白金触媒を適切な場所に配することで、極...
-
ディーン・ケーメン氏が発明した浄水器「 スリングショット 」の原理は、いわゆる蒸留である。つまり水を沸騰させて水蒸気にした後、冷やして水に戻す。汚水と蒸留水の間で熱交換を行うことで効率を上げている。 日本では、防災用の浄水器としては中空糸膜や逆浸透膜が殆どだ。これと蒸留式には...
-
あるいは家庭用自販機、とでも言おうか。自宅のすぐ脇にあって、品揃えが少数多種、単に飲み物だけでなく、生鮮品や惣菜などもラインナップに加え、複数台並べて簡易コンビニ的に使用する。 自販機コンビニと似ているが、大きく違うのは次の通りだ。 品揃えはカスタマイズできる。 ...
-
生成AIを使って作成されたイラストに対する極端な非難が相次いでいる。そのどれもが、ちょっと行き過ぎに思える。例えば、事前にAIであることを知らせているもの、絵を描いている本人が確認し承諾したものまでも非難されている。なぜこんなに過剰な反応をするのだろう。単にノイジーマイノリティの...
-
コンクリート住宅を3Dプリンタで作る、という試みは、世界中で行われている。しかし日本では、鉄筋なしのコンクリートだけの住宅は認可されない。地震が多い日本では、揺れで簡単に壊れてしまうからだ。コンクリートは圧縮に強いが引っ張りに弱い。鉄筋はその逆だ。鉄筋コンクリートが使われる...
-
不気味の谷というのは人間に似せようとするから起こるのであって、Pepperやaiboには存在しない概念だ。日本にはアニメキャラという秀逸な文化があるのだから、顔にしても動きにしても、そういった一つのカテゴリとして「抽象化ヒューマノイド」(言葉が適切かどうかは分からないが)と...
-
バカの壁 [ 養老孟司 ] 価格: 734円 (2016/10/26 18:15時点) 感想(72件) 養老孟司 氏の名書だ 。 いちばんキライなタイプが、以前も言った「中途半端な科学万能主義者」なのだが、この類の人の「バカの壁」が一番厚い。多くの場合...
-
書籍「糖質疲労」「脂質起動」がベストセラーになっているらしいというので、少し読んでみた。そこに書いてあったことでいくつか気になったことがあったので、これをネタに生成AIをイジメてみようと思い、会話してみた。 その疑問とは、いわゆるベジファーストへの反論である。 まずベジファー...

0 件のコメント:
コメントを投稿