2018年10月15日月曜日
雨水だけで生活できるか
オール電化にして蓄電池と太陽電池を組み合わせれば、エネルギーは自給可能だ。だが水はどうだろうか。上下水道から完全に切り離された生活は可能だろうか。
人は一日当たり300リットルの水を使っている。その内訳はトイレ(約28%)、風呂(約24%)、炊事(約23%)、洗濯(約16%)、残り(洗面など)で9%となっている。家族4人で1年間に使う水の量は、438キロリットル(kL)ということになる。
水道に頼らずに水を得るとなると、まず思いつくのが雨水だ。東京の年間降水量を1500mmとして、1平米で溜めるとすると、その量は1.5立方メートルになる。1立方メートル=1000リットル(1kL)であるから、1平米当たり1.5kL。家族4人で年間に使う水の量から逆算すると、292平米が必要、となる計算だ。
この広さは、都会では到底望めない広さである。マンションならほぼゼロと言っていい。田舎なら何とか可能な広さではあるが、それをくまなく集めるには相当の苦労が見込まれる。屋根だけではなく庭全部に降り注ぐ水を集めなければならないし、雨は毎日少しづつ降るわけではない。年間降水量の季節差は5倍程度はあるから、半年分を溜めるなら200kLのタンクが必要となる。小学校のプールで360kL程度であるから、これまた非現実的だ。
つまり、雨水を浄水するだけで何も我慢せず再利用もせずに水道の代わりをまかなうことは不可能ということになる。ではどうするのかと言うと、節水と再利用(浄水)だ。もし再利用が完璧なら、そもそも節水は不要となるのだが、その計算はどうなるのだろう。
一家4人で一日に使う水の量は300L×4=1.2kLである。一方、家庭用の合併浄化槽の容量は1~3kL程度だ。3kLの浄化槽の先に1.5kLの浄水タンクを設けておけば済む、という計算になる。しかしこれはトイレの排水も再利用することになり、心理的抵抗が大きいし、万一浄水器が故障すれば、その汚水を飲む羽目になる。蒸発したり飲んだ後に外部で排泄するなどによって減る分もあるはずだ。やはりこの案は悪手である。雨水を使い、節水だけで乗り切る、というのが良いのだろう。これをベースに考えてみる。
合併浄化槽3kLと、同量の雨水タンクを併設(距離は離す)ものとしよう。雨水は屋根から取って誘導するものとする。合併浄化槽からの排水は、そのまま下水に繋ぐものとする。
まずは、3kLの雨水をどの程度の日数で溜められるのかを計算してみる。無降水継続日数の記録を見ると、東京で21日とある。これを基に、余裕を持って30日を目標として考えてみる。東京の降水量が最も少ないのは12月で、51mmだそうだ。1平米では51 × 1000 × 1000(mm3) = 51kLとなる。つまり、0.06平米の取水面積があれば十分となり、これなら問題ない。
次に、一人一日300Lであれば、一月では300×4×30=36000L=36kL使うことになる。これを3kLにするわけだから、8.3%にまで使用量を減らさなければならない、ということになる。一日当たり一人25L、4人家族で100Lとなる。最初の比率で計算すれば、トイレは336Lから28Lに、風呂は288Lから24Lに、炊事は276Lから23Lに、洗濯は192Lから16Lに、残り(洗面など)は108Lから9Lとなる。
まずトイレだが、これは浄化槽の排水が使えるはずだ。またコンポストトイレなら通常は水の使用量をゼロにできる。残り100L。
風呂はこの時点で不可能、シャワーでも無理、となる。風呂の容量は200~300Lあるからだ。つまり、風呂に関してはどうしても再利用前提にせざるを得ない。循環風呂にするものとして、定期的な入れ替えを考慮し、使用量を1/10にするとなると、29L。残り71L。
洗い物だが、食器洗い機を使うと8割は減らせるそうだ。ただ、炊事は洗い物だけではないので、トータルで5割削減として、276÷2=138L。ここで破綻となる。
洗濯に風呂の残り湯を使うのは、循環風呂前提では困難だ。ここでは浄水器を通して洗いとすすぎ1回目をその水で行い、最後のすすぎ1回だけを新しい水で行うことにする。すると水の使用量は1/3になるので、92L。
最後の洗面は、一人一日当たり27(L)使っている計算になるのだが、洗面と歯磨きだけでこれだけというのはちょっと驚きだ。恐らく洗面台に水を流しっぱなしで想定しているのではないか。洗面器に溜めてやれば2Lもあれば充分だから、合わせて3Lとしてやると、4人分で12L。
全部合わせると、0+29+138+92+12=271Lとなる。全然足りないが、意外にも風呂は大きく節約でき、炊事洗濯で困ることになった。
炊事は口に入るものなので清潔な水を使いたい。しかし今のままでは既に破綻しているので、炊事に必要な水を1/4にした上で、風呂と洗濯の浄水再利用をもっと徹底して、例えば1/10とか1/20とかにしないと追いつかない。という計算になる。
被災時でもないのにこんな節約をするのは割に合わない。雨水をこの3倍、9kL/月まで使用できるようになれば、今の計算のままで普通に生活できる、ということになる。水の採取は屋根だけで十分で、問題はタンクのサイズだけだ。
庭がある家なら、この程度の貯水をすることは不可能ではない。例えばクロスウェーブのような貯水槽なら、庭いっぱいに貯水できるから、9kL程度であれば簡単だ。3平米×3m掘るだけでよい。あとは9kL/日の十分な浄水能力を持つ浄水器が必要だ。これは雨水が前提なので、それほど汚れることはない。プレフィルタに加え、市販されている逆浸透膜浄水器で十分だろう。循環風呂は市販のものがある。洗濯向けの水循環が必要だが、これは逆浸透膜でなく中空糸フィルタの安価なもので十分である。
初期投資はそれなりに掛かるが、水道料無料であるし、停電になってもポンプで汲み上げればほぼ使い放題、というのは大きい。一軒家を持つ人なら、検討するのは悪くない。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
注目の投稿:
ASIの発達と決定論
世の中の話題はAGIを通り過ぎてASIに進んでいる。AGIがGeneral IntelligenceならASIはSuper Intelligence、即ち人類を遥かに超えた知性ということらしい。 2045年にシンギュラリティが起きると予測したのは、人工知能研究の世界的権威であ...

人気の投稿:
-
「生成AIはミーハーである」の回でも少し触れたのだが、生成AIの回答は一次的には誤っていることが多い。それを指摘してAIが回答を修正していく様を見て楽しむ、というのが最近のマイブームだ。 どういう指摘をしているのか、と自己分析してみると、興味深いことに陰謀論者との議論とあま...
-
日本共産党が消費税減税案についてのサンデーモーニングの批判的なコメント(財源を示せ)に対し「財源を示した上で提言している」という反論をしている。そこで同じく、Grok3に計算してもらった。 日本共産党の提言は、2025年4月16日のものの他、幾つか出ている。そのおおよその方向性...
-
近年の世界的な右傾化、自国第一主義化について、その原因を生成AIと討論しながら考えた結果、そういう結論に達した、というお話。 まずトランプが未だに支持されている理由について議論したのだが、その理由はアメリカ白人低学歴層の貧困化だという。この白人貧困層は、人数的には数千万人と規...
-
以前チラっと書いた、表題の分析の結果を披露しておく。 まず全体像について生成AIと議論した。結果として、その大まかなシナリオとは、 いわゆる減反政策によって、市場におけるゆとり分が減り、ここ数年は需給バランスがタイトになっていた。 農水省は減反政策は止めたと言っているが...
-
免震技術の一つに、「エア免震」というものがある。地震が発生すると、ホバークラフトのように地面から浮き上がる、というものだ。 http://www.airdanshin.jp/ なかなかよいと思うが、普段は浮いていないわけだから、例えば故障していないかどうか確認す...
-
色々と生成AIと議論しているが、それに関して最近気付いたことがある。 最初の応答については、あまり深く考えずに世間の評判を基に答えるのだが、それには往々にしてウソ大げさが混じっている。それに対して指摘をし、更にそれを繰り返すことによって、だんだんとそのウソ大げさを理解し、マト...
-
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E8%AA%9E%E3%81%AE%E9%83%A8%E5%B1%8B チューリングテスト に対する反論とも言える思考実験だ。両者の概要はここでは省略する。Wikipe...
-
性善説と性悪説、どちらを取るかと言えば、やや性善説、だろうか。 子供の成長を見ていると分かるのだが、基本的に子供は善だ。だが、同時に自分勝手なところもある。人の持っているものを欲しがり、場合によっては喧嘩してでも奪おうとする。だがこれは「悪」と言えるほどのものではない。 ...
-
https://jp.techcrunch.com/2018/03/17/2018-03-14-mit-gadget-puts-multiple-artificial-organs-into-a-paperback-sized-connected-system/ 実験の...
-
古くは仮面ライダースナックやビックリマンチョコ、最近では万博パビリオンの時間指定チケットやマクドナルドのちいかわグッズなど、何かと話題になっている転売の是非について考察してみた。これももちろん生成AIを使って、なかなか面白い結論が出た。 最初は万博場ビリオンについて議論したのだ...
0 件のコメント:
コメントを投稿