2016年11月30日水曜日

マスクとゴーグルと感染経路


インフルエンザの季節になるとマスク姿を見掛けるようになる。また、マスクの効能や使い方について、実験を伴った示唆が広まるのも恒例だ。

市販されているマスクの多くは、N90クラスとされている(定義はないが)。SARSが流行ったときはN95のマスクが飛ぶように売れた。世の中にはN100のマスクもあるが、これらは高価だ。一般的に、通販などで普通の家庭が備えられるのはN95までだろう。

だが、N100と言っても100%防げるわけではない。定義によると、0.1~0.3μmの微粒子を99.97%以上除去できる性能だそうだ。だが、一般的なウィルスの大きさはそれより遥かに大きい。一方でこれは確率論なので、母数(ウィルスや細菌の数)が多ければ、通り抜ける数は多くなる。他にも分からないことが幾つかある。技術的に考えれば、これらは全て必要な要件だ。整理すると、ウィルス(細菌)毎に、
  • 実際のウィルスの大きさでの(できれば実物を使った)マスクの透過率
  • 一旦マスクで止まったとしても、その後の呼吸の影響でマスク内に侵入する確率
  • 感染が成立するウィルスの数
  • 一回のくしゃみで飛び出す飛沫の数と大きさ、その中に含まれるウィルス数(分布)
  • 飛び出した後、(感染力を持ったまま)生き残る確率(時間経過曲線)
  • 手洗いでウィルスが流される確率
  • 正しい消毒法と効果(除去率)
などが必要だ。今分かっているのは全部相対的な危険度だけで、充分かどうか分からない。こんな基本的な数字すら一般に知られていないようでは、防ぐ側としては心許ない。

極端な話、市販のマスクだけで充分なのかも知れないし、人口密集地でなければそれすら不要かもしれない。逆に、満員電車の中ではN100でも防ぎきれないかもしれない。マスクに着かなくても手について、それで目を擦れば終わりかもしれない。口のマスクだけではダメで、ゴーグルが必要かもしれない。そんなことすら分かっていないのだ。

個人的には、感染の多くは目から来ているかもしれないと思っている。花粉防止用のメガネにはまだ隙間がある。医療用のものでも、実は飛び散る血液や粘液を想定していて、くしゃみで漂う飛沫に対しては無防備なものも多い。N95を買うよりもN90+密閉ゴーグルの方が効くのか効かないのか、ぜひそれを検証して欲しいものだ。


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2016年11月29日火曜日

Spock

言わずと知れた「スタートレック」オリジナルシリーズ(TOS)の主要キャラクターの一人だ。

感情を廃し、理性で生きることを尊ぶ点、自分の信条と通じるものがあることから、ペンネームとして頂いた。人は感情で生きる動物だが、全部感情で行動しては良くない。社会との関わり、人との関わりの中で、大人になるほど、また社会的地位が上がったり他人との関係が多くなるほど、人は理性で行動しなくてはならない。

それ自体は当たり前のことなのだが、そういう処世術を説く人があまり見当たらない。人生相談のようなところでたまに見るのだが、その回答者がスピリチュアリストだったりするのは笑えない事実だ。

スポックは、その価値観から、滅多に感情を見せることはない。だが、確かスタートレックの映画版で、異星人と精神融合を試みたスポックが笑ってしまったことがあった。その異星人は機械生命体で、スポックが求める論理と知識の究極の姿とも言えたのだが、その異星人が求めていたのが「感情」であった。その皮肉に笑ってしまったのだ。

自分は彼と違って人間だから(スポックは宇宙人と人間のハーフ)、感情そのものを無くそうとは思わないし、やろうとしてもできないだろうと思っていた。ただ最近思うのは、年を取るほど感情の起伏が減ってくることだ。理性というのは、実は膨大な経験の先には自然に身につくものなのかもしれない。

また、修行を重ねたお坊さんなどの宗教家も、やはり理性的であるように見える。これもまた、俗世間から一歩引いて考える時間を長くとることで、経験ができたのだと想像することができる。

先の映画が正しいかどうかは分からないが、人間程度の経験量の範囲では、更にその先に感情を欲するようになることにはならなそうだ。そして論理学を勉強するのでなくとも、人生経験が豊富になれば理性的になれることになる。

若いうちに理性的になりたければ、よい方法がある。本を読むことだ。それも多読乱読である。雑誌も含めてよい。本には様々な人の知識経験が詰まっているからだ。ウソや誤解も含め全て飲み込んで消化すれば、自然とそれらの区別は付いてくるから心配せずともよい。映画も音楽も同様で、自分が好きなもの以外でも意識して接するのがよい。
 
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2016年11月28日月曜日

下水の熱回収


室内の環境を良くするためには、気密断熱をしっかりする必要があるのだが、日本の家は平均的にここが極めて弱い。

これは伝統と言っても良いのかも知れない。日本の家はそもそも寿命が短いので、そういうことにカネを掛ける発想が弱いのだろう。その根本には、地震や洪水、火事などに弱い地盤や都市構造がある。

だが、日本のエネルギー消費量を調べてみて思ったのだが、電化製品の増加はともかくとして、その消費のベースは暖房と給湯で、これだけで全体の6割になる。ここの効率を上げないと、エネルギー消費は改善しない。

そこで考えてみるのだが、一つは断熱性の高い家を造ることだ。ヨーロッパには多くの先例がある。日本の場合は湿度が高いので多少のアレンジは必要だが、基本はこれだ。そしてもう一つ、世界の何処も手をつけていない技術がある。それは風呂からの熱回収だ。

原理的には簡単な話で、ヒートポンプを使って、風呂の残り湯を捨てる時にそこから熱回収をして、次の風呂用の水を温めてやるのだ。次の風呂用の水はタンクに貯めておいて、足りない分は深夜電力などで補完する。電気温水器の変形版と考えてもらえばよい。

更には、給湯には洗面所と台所がある。これら全ては下水管に繋がっている。つまり、下水管をターゲットとした熱回収システムがあれば、用を為すことになる。全部合わせて半分でも回収できれば、画期的に電気代が浮くことになる。

太陽熱温水器のように、一軒家でないと使えないシステムではない。マンションなら更に効率的なものが開発できるだろう。高気密高断熱による節約を合わせて使うことで、上手くすれば電気代を2/3程度に抑えることも、夢ではなくなるのではないか。
 

2016年11月27日日曜日

スリーブPDA


今で言うスマホの創成期には、様々な形態のデバイスが搭乗していた。中でもIBMが作っていたカードサイズのPDA、TC-100はユニークだった。当時はPCMCIAが使えるノートPCが多くあったのでこのサイズだが、今ならクレジットカードサイズに厚みが少々ある程度、電子ペーパーにタッチパネルと、ハード的な材料は揃っているから、イチから新たに作るとまた別の面白いものができるだろう。

ATMにスマホを対応させる研究もあるのだが、どうせ非接触なら形は何でもよいはずだ。クレジットカードサイズならパスケースに入るし、持ち運びもずっと楽になる。ディスプレイもそこそこ大きくできるから、スマートウォッチよりも有利だ。

袖に仕込んでおいて銃が飛び出す仕組みを「スリーブガン」というらしいのだが、この大きさなら同じ仕掛けで袖の中に隠しておき、必要に応じて出すようなことができるだろう。まあそこまで大げさでなくとも、袖に仕込むというのは新しいアイデアだ。逆に言えば、袖に仕込む前提で形態を新たに考えるのもアリだろう。

そこで考えてみたのが以下の形態だ。まず、腕時計のように左腕に装着するのだが、時計のベルトよりずっと太いベルトで巻く。イメージとしては、テニスのリストバンドよりまだ広いくらい(1.5倍)の幅にする。その甲の側に仕込む。手首をぐっと下に(手のひら側に)曲げると袖から飛び出して見えるようになる。半そでなどのときはそのまま見る。この仕掛けは筋電計やLED/フォトダイオードなどでできるだろう。脈拍計との兼用にもなる。

腕のカーブに合わせて若干円筒形のカーブが付いている。タッチパネルにはなっているが、基本的には表示用で、操作は確認など簡易なものを想定する。つまりスマホやPCなどの母艦は必要になる。単体での通信機能は、母艦スマホがある場合はそこと、ない場合は格安SIMでネットサービスと繋がる。

載せるソフトは、基本的に通知である。母艦があれば母艦の通知をそのまま出せばよいので簡単だが、単体で動かす場合はサイズや計算機容量に合わせた取捨選択が必要になるだろう。それでもスマートウォッチと同程度以上の通知はできるはずだ。他、マイクとFelicaがあると嬉しい。

表示域は広くなるので、twitterやメール程度なら全文を一覧できる。また操作面も広くなるのでフリック入力くらいはできるだろう。サイズも大きいから電池の持ちもよい。デザイン性さえ充分にあれば、スマートウォッチより普及しそうな気がする。
 

2016年11月26日土曜日

iSeeQVault

SeeQVaultというのはSDカードなどで使える著作権保護技術のことだ。細かいことはさておくとして、例えばSDカードに動画データを保存しておくと、その動画が再生できる。別のSDカードにデータをコピーしても、そちらは使えない。

Googleの新スマートフォンPixelにおいて、Googleフォトのオンライン動画容量制限がなくなるサービスが提供される、という情報が入ってきた。そこで思いついたのだが、SeeQVaultの「メディア固有ID」をGoogle IDと紐付けてやれば、つまりはそのGoogle IDでログインしている限りは、そのメディアが再生できる、というサービスを提供してやったらどうだろうか。

別にGoogleフォトでなくても良いのだが、要は大容量オンラインストレージを提供しているサービスにおいて、そのライセンスIDと紐付けた著作権保護動画データを保存できるサービスだ。そのIDで見ること、共有を許さないこと、という条件さえ守れば、自由に見ることができる。端末側に専用の再生ソフト(ないしはWebプラグイン)が必要でも構わない。そのID内でのコピーは自由で、ID間やローカルへのコピーは不可(コピー自体ができても閲覧できない)。またローカルから一度アップすると、ローカルは見れなくなる。もちろんそのリンクはSeeQVaultの範囲で行う。

SeeQVaultの大きな欠点は、専用のSDカードが必要なこと、またSDカードをやり取りする必要があること、対応機器が少なく、場合によって専用のリーダーライターをかます必要があったことだ。一度家に帰らなければ続きを見れないし、コピー自体にも時間が掛かる。

市販のチューナーやレコーダーなどをオンライン接続してGoogle IDでログインしておき、動画を直接オンラインストレージに落とすようなことをやってくれれば、この手間は省けるし、機器毎の(ハード的な)余計な対応も必要ない。

オンラインストレージベンダとしては迷惑千万かも知れないが、有料なら如何だろうか。
 
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2016年11月25日金曜日

AI時代のSF小説


SF小説の中には、コンピュータの杓子定規な判断を無視して人間的な判断が勝つ、というパターンが幾つか見受けられる。そうでなくても、小説の主軸は主人公の心理描写や独自の行動の選択などだ。だがAIが高度に発達してしまったら、いわゆるシンギュラリティ後は、「常にAIの判断が正しい」という社会になる。

気に入っている小説の一つに星新一のショートショート「はい」がある。全てが耳に付けた端末の指示に従っていれば安心、という世界を描いたものだ。あるいは、ハインラインの「月は無慈悲な夜の女王」の終盤では、シンギュラリティを超える場面がある。何をやってもAIに勝てない時代のSF小説はどんなものになるのか考えた時、これらを乗り越えて何かをしなければ始まらない。

そこで考えたのがこんな小説だ。主人公は宇宙船の船長。もちろん指揮権は持っているが、殆どの船長はAIに示された数個の判断から選ぶだけだ。そんな中でこの主人公は破天荒な判断を繰り返す。

もちろん結果はAIが示したものより悪くなる。船長の評価も悪い。ただ、船員からの評判は悪くない。その理由は、AIの判断は常に「良い」が、時として「面白くない」のだ。つまり、「良い」と「面白い」の優先順位が人間とAIでは異なる。そして致命的にまでその差があれば、AIとしては「良い」判断をせざるを得ない。

そこにきてこの主人公がその判断を破るわけだ。AIは必死に(冷静に?)フォローをするから致命的になるのは防げるが、「面白い」代わりに悪い結果になる。最後まですっきりしない結末になるが、主人公と船員はちょっとだけ自己満足して終わる。

うーん、つまらない。こんな小説ばっかりだったら世の中は暗い。

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2016年11月24日木曜日

大画面電子書籍端末


電子ペーパーが発表されたとき、大いに将来に期待したものだが、思ったほど進歩していない。当時期待したのは①大画面化、②カラー化、③高速書き換え、④高解像度化、だったのだが、何れも試作レベルではできるものの、なかなか製品が出てこなかった。

①の大画面としては、AmazonのKindle DXやよびSONYのDPT-S1くらいしかなかったのだが、最近クラウドファンディングなどで幾つか見かけるようになった。そのうち日本で企画されているものが二つある。

一つはGVIDO、もう一つはsonoだ。前者は電子ペーパー、後者は液晶と違いがあるが、A4サイズ2画面で本のように折り畳みができるのが特徴だ。そして面白いのは、どちらとも楽譜表示が念頭にあるということ。

結構、思想レベルで違いがあるのが興味深い。前者はモノクロで書き換えが遅いが軽く、電池の持ちも良い。後者はカラーで普通のAndroidとしても使えるが重く、電池の持ちは悪い(それでも9時間とのことだが)。でもどちらも画面に書き込みができるようになっている。

両者とも20万円近いようなのだが、それでも楽譜なら需要があるのだろうか。ここも興味深い。Kindle6インチ版では1万円を切るようなものもあるのに、とも思うのだが、ここら辺は価値観の違いなのだろう。

楽譜はモノクロでよいので大画面の要求が強く、6インチではとても無理である。職業ミュージシャンにしてみればこれは譲れない。一方で雑誌を読みたいだけ、という自分のような手合いにとっては、製品が出てくるまで待つ余裕がある。

だが、楽譜だけとは思えないのだ。もともと6インチは文庫本や新書からせいぜいハードカバー程度しか想定していない。これより大きく、且つ仕事に使うものとしては、学術論文やマニュアル類、業務書類などが挙げられる。なぜここから声が上がらないのだろう。

卑近な話、Linuxのmanコマンドを打ち出しただけのPDFでも、充分に需要があるように思える。他にも大型機械や業務用ソフトなどのマニュアルはB5~A4が普通だろう。役所の後ろやオフィスの書類棚に納まっている紙類の多くもこのサイズのはずだ。

近年ではどうせ書類はExcelやWordなどで作っているのだろうから、PDF化はたやすい。セキュリティにしても大きな問題にはならないと思う。一番のネックとなっているのは、今のところ端末の価格だ。

一般論として、画面サイズが2倍になると面積は4倍だから、値段も4倍になる。6インチで1万円なら12インチでは4万円だ。もし歩留まりが悪いものになると更に値段は上がるし、販売台数が見込めないものは当然割高になる。そういう意味で、13.3インチで8万円のSONYのそれは健闘している方だ。これが2画面になると16万円になるが、そうすると二つのプロジェクトの価格も納得がいくレベルだろう。

自分の感覚としては、A4見開きで5~6万円が限界であるから、その差は3倍である。6インチのKindleでも3万円台のものがあるくらいだから、その感覚が不公平であることもまた分かるのだが、20万円近くなるとノートPCが買えるから、そのくらいの機能が欲しくなる。

結局この、大画面への対価に関する感覚のギャップこそが、こういった商品の普及の妨げになっているのだ。量産効果量産効果と幾ら騒いでも限界はある。素直に諦めて(考えを切り替えて)買うか、諦めるか、どちらかしかないのだろう。

とか言っている隙に、全く新しい技術(印刷技術で作る電子ペーパーとか)が出てきて一瞬で引っくり返る、ということも技術畑ではよくあることだ。少ない望みをそこに繋ぐことにする。

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2016年11月23日水曜日

フェイントの科学


高校でのクラス対抗サッカーでの自分のポジションはスィーパーだった。フェイントに強かったからだ。自分は当時運動部にすら所属していなかったが、サッカー部のフォワード相手でも一度も抜かされたことはない。だが運動神経が人一倍凄かったわけではなく、科学的に考えた動きをしていただけだ。

ボールは生き物ではないから、自分の意志で動くことはない。動くには何らかの物理的な力が掛かる必要がある。つまりは相手の足だ。

サッカーには、足の裏でボールの上を擦るようにしてその方向に動かす技があるが、それ以外では足の位置の反対側にしか動かない。だから足の位置に合わせて動きを予測することは簡単だ。足が右にあれば左に、左にあれば右にしか動きようがない。

次は相手の動きだ。パスをするつもりでなければ、相手は必ず自分自身がどちらかに動くとともにボールもそちらに動かそうとする。そしてどちらかに動こうとするならば、必ず体の重心を動かさなければならない。

重心を動かすには、反対方向に足で地面を蹴るしかない。だから足の動きを見ていれば、相手がどちらに動こうとするのかは把握できる。その様子がないのに足だけがボールの周りを動いているだけなら、それはフェイントだ。

自分の動きにもコツがある。まず、足を内股のㇵの字にする。自分の重心の十分外側に左右の足を出し、どちらにも蹴りだせるようにするためだ。足が重心の近くにあると蹴りだしにくい。

次は、相手は蹴りだしてからも姿勢を崩せないが、自分はボールを相手から離してしまえば転んでも倒れてもよい。その積もりで足を出すことだ。そしてそのタイミングは、相手がフェイントを掛け出してから時間が経たない方がよい。その方が相手がフェイントを続けようとする確率が高いからだ。フェイントはボールの左右に足が行き来するので、その中間(右から左に移動する途中、及びその逆)を狙う。

これらは、もしかしたらサッカー雑誌などにも書いてあるかもしれない(確認したことはない)。だが何れも物理の法則から簡単に導き出せることだ。相手の目を見ろとか根性とかは関係ない。同様なことは他のスポーツでも考えられる。

2016年11月22日火曜日

放射能には安全な下限がない?


一部でそういう心配をしている人がいて、医者までも賛同していたりするが、これもトンデモの一つだ。その根拠は二つ。一つは自然放射線の問題。もう一つは他のDNA破壊要素の問題である。

まず前者だが、原発由来かどうかに関係なく、人は自然放射線を浴びている。また元々、自然放射線というのは地域によって量に大きな差がある。飛行機に乗ると多量の放射線を浴びるなど、高度でも異なる。これは、健康診断でレントゲンに何回掛かる、というレベルをはるかに超える変動量だ。

つまり、自然放射線と同程度(数倍レベル)の放射線を浴びた程度では、自然放射線の影響との区別はそもそもできない。では自然放射線の影響がどの程度あるのか、だが、地球上にそこから無縁で長期間生活できる場所はないので、事実上は分からない。分からないことを心配しても意味がない。

その二だが、放射線が生体に与える影響というのは、強い放射線による急性の影響は除くとして(下限の話なので)、弱い放射線についてはDNAの破壊、ということになる。

だが、よく考えてみてほしい。放射線が意志をもって、わざわざ特定のDNAを攻撃することなどあり得るだろうか。もちろん否である。放射線に意志などない。多数出る放射線のうちごく少数が偶然にDNAを破壊し、更にそれがたまたま上手い具合に(悪い具合だが)中途半端に生き残ることで、ガンをはじめ様々な病を引き起こす。それ以外の破壊は全て、免疫やアトポーシスの働きで排除される。

では、DNAの破壊は放射線だけが引き起こすものか。これも否だ。代表的には活性酸素が同じような働きをする。そしてこちらも、意志をもって特定のDNAを攻撃するわけではない。活性酸素も万病のもとというくらい様々な病気を引き起こすが、その本質は細胞の内部組織の破壊である点は同じだ。

であれば、それが放射線であろうが活性酸素であろうが(その他の何かであろうが)、エネルギーをもって細胞を破壊する類の影響を与えるものがどんな病気を引き起こすかは皆同じであるはずだ。つまり、放射線固有の病気など、そもそもあり得ないことになる。そしてその影響度は単純にエネルギーの強さ(密度など)によって決まる。

活性酸素は放射線があろうがなかろうが常に発生するものなので、放射線の強度が下がると共に何時かその影響度は逆転し、活性酸素が優位になる。その状況下では、(自然かどうか関係なく)放射線の影響は活性酸素に隠れて見えなくなる。

これも量的問題の議論の一つである。

2016年11月21日月曜日

定期借地権型の高層マンションを何とかする


家の近所に、定期借地権型の高層マンションがある。存続期間を50年として、延長を認めず必ず更地にして返すことを条件に、安い分譲が行われるというものだ。そのマンションがモデルルームを建てた時に冷やかしに見に行ったことがあるのだが、問題たる定期借地権周りの数字を計算してみて笑ってしまった。解体費用の積立金の金利設定がバブルの頃のままで、大幅に足りないのだ。

それを指摘された営業は口をにごらせていた。金利は今後も変動するから云々、だがそれから10年、金利は一向に回復する様子がない。今後アベノミクスが幾ら大成功したとしても、バブルの頃の金利など見込めないのは明らかだ。更に元の計算が複利計算だから、今当初の想定に戻ったとしても足りない。

この高層マンションは解体手順についても何も考えていなかったから、実際にその時を迎えたら、当初の見積りからは大幅に狂うだろう。そうでないマンションでも、積立金の不足により償還前10年程度から人が逃げ出し、ゴーストタウン化するのは目に見えている。こういうマンションは全国に多数存在するはずだ。

これは地域を荒廃させる。地主とて解体の費用は出せないし、保守する義理もない。区分所有者は雲隠れし回収も売却も不可能、不法占拠者の巣窟と化し、そのうち本当に崩れてくるかもしれない。恐らくは自治体が負担して解体するか、法改正して存続保守するかの選択を迫られることになるだろう。

前者だが、高層マンションの解体費用というのはそもそも殆ど経験がなく、幾ら掛かるか分からないものだそうだ。通常のマンションで1世帯100~200万というから、これを下ることはないだろう。500戸の場合で10億円が最小。積立金が上手く回収できたとしてもこの数分の一だろうから、例えば1棟7億円が自治体の負担となる。

解体せずに存続させられるよう法改正に動いたとする。しかし元々そのような(存続させられるという)法が存在しない時代に立てられたのだから、当然耐久性の設計は50年で見積もっているはずだ。メンテナンスしにくい構造、コンクリートのかぶり厚が薄い、スケルトン&インフィル構造を取っていない、機械室などの大きさに余裕がない、など。50年が60年になることができたとしても100年になることはまずない。つまり先送りでしかない。

そもそも存続したとしても、人口減、所得減の時代なのだから、新たな住民が入ってくる期待は薄いはずだ。仕掛けの設計時点で破綻していると見るのが妥当だろう。人口減、所得減ということは自治体も貧乏なはずで、その中での億単位の負担は相当な負荷だ。

順当に考えれば、国や自治体が主導して積立金の増額を権利者に強制する必要がある。これは遅くなるほど不利になるので、一刻も早く開始すべきだ。



2016年11月20日日曜日

自然食品礼賛批判


あるアトピー患者が、肌に塗って大丈夫かどうかを判断するのに、食べられるかどうかを基準にすると言っていた。有名な痔の薬の成分は全て食べられる成分で、考案者自らが食べて試してみたそうだ。何れも科学的に意味がない。

どぶ川の水を肌に塗っても普通の人ならまず問題ないが、一口飲めばたちまち下痢に襲われるだろう。ピザにタバスコを掛けて食べる人でも、それを肌に塗ればヒリヒリと痛くて堪らないはずだ。そもそも、医者が出す塗り薬を食べる奴などいない。食べられるかどうかと肌に塗れるかどうかは関係ないのだ。

自然食品礼賛も同じ過ちだ。自然は安全で人工は危険、などというステレオタイプ的な事実は存在しない。例えば、昔から食べられていた食品を調べてみたら実は毒性があり、その上限値は新しい人工の食品添加物より少なかったりする。農薬にしても、同じような事例はある。

一つ例を上げておくと、ワセリンと植物油だ。石油はそもそも天然のもので、それを精製するのは主に揮発温度に頼っている。植物油の方は絞って上澄みを取っている。

精製の原理と油の本質を知っている者にとっては、植物油の方がむしろ得体のしれないものに見える。原材料名ではXX油と一言しか書いていないが、植物によってその油に何が溶け込んでいるかは細かく調べられていない。肥料や農薬に何が使われているか分からないし、植物由来の毒物が入っているかもしれない。「いや、経験的に問題ないと分かっているから」というのなら、ワセリンだって十分に経験的に問題がないことが分かっている。

体によいか悪いかは、体で実際に(科学的に!)試した結果として分かるのであって、自然か人工かは関係ない。そしてそれは、ちゃんと国が調べている。むしろ人工の食品添加物の方がしっかり調べられていることが多い。そういったものを規定の量以下で正しく使う限り、何の心配もない。

もちろん、ベンダが質の悪いものを使ったりウソをついたりすることはあり得るが、それは科学というよりはむしろ社会的問題である。

2016年11月19日土曜日

NHKの未来


http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/sankeibiz/1027277.html

マンスリーマンションのNHK受信料はオーナーか運営会社が払うべきであり、入居者が払うべきではない、という判決。

なんでも、「NHKから国民を守る党」とかいうものがあるらしい。まあ勝手にやってもらえばよいが、それだけしか政策がない党に投票する気はない。

閑話休題。そもそもNHKは国営放送であるべきだと思う。そうでないのにNHKだけに国が出資したり、受信料を規定したりするのはおかしい。これは郵便も同じ構造であり、民営化するなら他の民間業者と法律で差別するようなことをすべきではない。そうでないなら初めから民営化すべきではない。

JRはほぼ対等になっているように見えるし、NTTはまだちょっと怪しいが、かなり民間に近い状態にまでなったと言えるだろう。だが、どうもNHKと郵便はおかしい。

この二つには共通点がある。インターネットの脅威にさらされている点だ。どちらかというとNHKの方が危機感があるのではないか。郵便はまだ小包など実物が動く余地があり、こちらは当分なくならないと見込まれるが、放送はもう不要な人は不要という時代に入っている。

民間業者には広告収入があるから、舞台がインターネットになってもコンテンツビジネスは継続するが、NHKの場合はもはや「(電波による)放送」ではないので受信料という大義名分は立たない。そこで「インターネットでも受信料」などという世迷言が出てきてしまうのだ。

だがまあ、電波塔やら衛星放送やらハイビジョンやらの技術をけん引してきたのはNHKであるし、もし民間に任せていたら規格争いで醜いことになっていただろうとは容易に想像がつくから、NHKの技術に対する貢献は大きいものがある。コンテンツに関してはどうかと言えば、視聴率に媚びない教育や障害者・高齢者向け番組などは評価できる。民間と全く同じ条件になってしまえば、これらは廃れてしまうだろう。

だからこその国営化提案である。ただ、組織がそのままでは批判が大きいだろう。どうすればよいのだろう。
  1. 内閣府直属とするか、独法とするのが良いか。特定の省庁下に入るのは避けるべきだ。当然予算は国からとる。
  2. 放送技術の研究と普及の主導的立場(A)、国営放送のコンテンツ作成および配信(B)の各々を別組織とする。
  3. 放送は全て無料とする。スクランブル不可、コピー制限不可。著作権は保持してよいが、国内の教育目的での使用は無料。インターネットでのサイマルも(やるなら)無料。VODは有料でも良いだろう。
  4. 国によるコンテンツに対する民放への有形無形の圧力は禁止。
最後の項目はNHKとは直接は関係ないが、NHKが国の圧力を公然と受け止める義務が発生する以上、民放への口出しを減らさないとバランスが取れないだろう。

2016年11月18日金曜日

自然エネルギーは不安定?


風力や太陽光発電は不安定で系統に負荷をかけるため使えない、という否定派の議論をよく見かける。だが、ここにも量的議論の罠がある。

太陽光の強弱は雲の有無と太陽の位置(角度)で決まるが、どちらも測定可能であり、かつ地域的にも時間的にも連続的に変化するので、ある程度予測が可能である。更には、広域で行えば平均化できる。

一方で、本当に変動するのはむしろ需要の方だ。だから系統は、需要に合わせて発電量を調整している。2015年度の発電量のうち、太陽光は3.3%、風力が0.5%しかない。これが平均量だとすると、その変動は多く見積もっても計8%程度しかないが、もともと1日の電力需要の変動は100%、つまり倍半分程度はある。

確かに従前に比べれば変動量は上がる。そのこと自体は間違いではないし、その対応にコストが掛かることも事実だろうが、そんなに目くじらを立てるほどのことでもないのではないか。

もちろん、太陽光の比率が上がればそんなことも言っていられなくなる。これには太陽光発電の量をできるだけ正確に予測することが必要だが、何のことはないこれは天気予報と同じだ。現在気象庁が進めているメッシュの細密化はこれに貢献するし、電力会社側でも需要予測をAIで行うようなことができれば、より自然エネルギーに寛容な社会が作れるだろう。

風力発電の方はこれより難しいため、バッファとなる蓄電池でのセット運用に重点が掛かる。これは高コストなので、普及速度は太陽光より遅くなることは仕方がない。

不安定と言えば、今の原子力発電の仕掛けを勉強したのだが、あれこそ不安定の極みだ。物凄い暴れ馬をあの手この手でなだめて何とか使っている、という印象を受けた。先端技術というのはそんなものなのかもしれないが、もっと本質的に安定な(根の良い)技術を使うべきではないだろうか。

これは原発を止めようというのでなくとも、原発の範囲内で可能だ。例えばナトリウムよりも安全な冷却材を使う。始めから水棺を作っておき(水は入れずに)その中に作る。溶融塩型にする。それでコストは悪くなるだろうが、安全性は高まるはずだ。そのような細かい技術の選択肢はあちこちに転がっている。それで例えば火力より高くついたとしても構わないのではないか。

2016年11月17日木曜日

ワインの技術


瓶一つにもいろいろと技術が込められていて、細かく調べていくと面白い。だが一番は、ワイン自体の味香りも進化していて、必ずしも昔からのワインが美味しいというわけではなくなってきていること。いわゆる第三世界のワインなどだ。

フランスにはインターナショナル・ワイン・スクールのようなところが多数あり、実習から理論まで総合的に学べるが、その理論からくると、世界中にフランス以外でもブドウ栽培に適したところが多数ある。

また、フランスドイツイタリアは伝統的な製法を守るところが多いが、ワイン新興国は実験的なものも多くあって、それがまた面白い。例えば、ブドウを発酵させるための酵母は、フランスなどヨーロッパ産のものが多く輸入されているのだが、酵母の違いによって味や香りがかなり変わってくることが最近分かってきている。つまり、自分の好む味香りに調整するために酵母を選んだりブレンドするようなことが可能になっている。水遣りやら日照やらのバランスについても、農業試験場のような手法で実験をしているところもある。

また、オーストラリアに特に多いのだが、通常ボトル(720ml程度)よりずっと少ない、100~350ml程度の飲み切りワインだ。小瓶、缶、珍しいところでは紙パックなどのものがある。小瓶にしても、ガラスだけでなくPETボトルのもの、プラスチックのグラスが付いているものなどがあって、ピクニックなど外で飲むのに適している。

さすがにこの手のワインは安いものが多いのだけれども、それでも近年のパッキング技術は進歩していて、劣化が抑えられている。味もだんだん良くなってきている。

更にはグラスだ。ポリカーボネイトなどの樹脂で作られた割れないグラスが登場している。ワインはグラスでも味が変わるというのは有名な話だが、形状もちゃんと産地別のものを模して作られていたりする。素人が高級ワイン用のグラスを幾つも用意するのは困難だが、これなら簡単に扱え、値段も安いので嬉しい。

もう少し進歩して欲しいのがノンアルコールワインだ。デカフェのコーヒーはかなりよいものができていると思うが、美味しいノンアルコールワイン少ない。単に知らないだけなのかもしれないが、もうちょっと豊富に選べ、且つ美味しいものが欲しい。

ノンアルコールワインには、始めからアルコール発酵をしないように制御されたものと、普通に造ってからアルコールを取り除くものがあるらしいが、発酵の過程で他の味香りも変化するものだから、後者の方が安心だ。そしてアルコールを取り除く過程で味香り成分が失われるとしても、アルコールが減る分濃くなっているはずだから、調整は可能だろう。

手間が掛かる分高いし、種類も少なくなるであろうことは分かる。だがここは一つ、我侭を聞いてもらいたいものだ。

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2016年11月16日水曜日

食品添加物の不安について


保存料を減らしてほしいと頼んでいる主婦が、一方で健康のためビタミンCを飲んでいる。食品業界でよくある笑い話だ。保存料の代表格である酸化防止剤として、ビタミンCはよく使われている。

XX料、と書くと仰々しく見えてしまうのだろうが、その実態はそんなに恐ろしいものではない。しかし、着色料保存料ゼロ、というのは売れる響きらしい。

安心安全とはよくあるフレーズだが、人間は安心を求めるのであって安全を求めるのではない。安全であることが安心だから安全を求めるのだが、ある状態が安全かどうかを判断するのは感情ではなく理性である。

食品添加物について言うなら、個々の役割や毒性を知っていて、この量なら問題ないというエビデンスまでがあり、それが安全と言えるわけだが、その知識がないと入っているという事実だけで不安になってしまう。だが理性では同時に、その添加物がないとどういう不都合があるのかまで分かる。つまり、入っていない方が安全、とは限らないし、むしろ入っている方が安全なケースの方が多いはずだ。そしてここで言う「安全」は「安心」ではない。

代表的な添加物はネット検索すればすぐ出てくる。添加物としての許容量も、国の機関が調べた結果をネットから閲覧できる。口に入るものなのだからそのくらいは調べて判断してほしい。

そうは言っても、国民全てが理系というわけではないではないか。御説御もっともだ。であれば、添加する側がその安全性についてちゃんと解説すべきである。ところが実際、それをやっているところは少ない。説明し切れなければ「ここは添加物を使っている」という不安を更に煽るし、ちゃんと読もうとする御仁は少数派だろう。つまり彼らは分かっているのだ。説明するのが無駄だということを。

小学校の算数ができない大人はいない。理系知識と言えども国民の多くが知っておくべきものは存在しており、しかもその量は時代と共にどんどん増えていく。考えるのを拒否するのではなく、時代の要請と割り切って勉強して頂きたい。全体の底上げが為されないと、結局隠す方向に倒れてしまう。

自分の場合、それより遥かに怖いのが化粧品だ。なぜならその添加物の種類が非常に多く、一つ一つの素性がよくわからないからだ。もちろん細かく調べていけば分かるだろうが、へ難しい長い単語を覚えて検索して、などとする気が起きない。もっとも、自分が使わないから興味が薄いからではあるのだけれど。

2016年11月15日火曜日

ブックエンド型タブレットスタンド


タブレットやスマホの充電スタンドは、その殆どが斜めに立てかけるタイプのものだ。過去にPCで垂直に差し込む充電スタンドがあったが、今ではない。またスマホにはあるがタブレットにはまず殆どない。

自分の場合、充電スタンドはテーブルに置いているが、使うときにだけ出す、使い終わったら仕舞う、という使い方なので、斜めにするのはスペースの無駄だ。だからブックエンドのように垂直に、また挿すだけで充電ができるようにしたい。スタンド自体もできるだけ薄い方が望ましい。

現在は満足できるスタンドがないので、自作している。だが出来が悪いことこの上なく、機器を買い換えれば作り直しだ。厚さやプラグの位置・向きが調節でき、あるいは無線給電に対応し、タブレットとスマホ1、2台づつ程度が充電できるスタンドが欲しい。

2016年11月14日月曜日

VRはPCと似ている


VRを使ってXX、という記事を多く見かけるようになった。長年技術ウォッチをしていると、過去と今の類似性を感じることもよくあるのだが、VRの初期とPCの初期に共通点を感じる。

それは、「何でも仮想化」というところだ。PCでの仮想化とは、ペンをキーボードにする、書類やノートをウィンドウにする、といったものだ。OHPがPowerPointに置き換わったのも同じ匂いがする。

これに対し、VRは主に視覚を仮想化しているが、PCでも画面にマッピングはしているわけだ。これが目に貼り付き、片目毎に見ることで立体視ができ、更に頭の動きに追随する。PCのときは書類が主な対象だったが、これがカメラに映るものなら何でも、となる。

今はまだ黎明期だと思う。VRを使ってXX、というのは、とりあえず適用してみよう、という話であって、そのうち向き不向きが分かってきたり、技術的な問題が整理されてきたりする。「VR酔い」なんてのはその一つだ。

そのうちVRは当たり前の技術になるのだろう。PCでも初期は、その性質をとことん追及して「XXには向く」「XXには向かない」という議論があったものだが、これも長年の経験知からしてそれほど当たらない、と言うか、追求しすぎることでかえって視野が狭くなってしまうものだ。技術の進歩は不具合を解消する方向に働くものだから、本質的なもの以外は楽観的に考えてよい。

一方、技術的に可能であってもなかなか製品ができないことも多々ある。そこら辺の考え方の変遷、製品の開発傾向、といったものも、類似性を感じることの一つだ。

2016年11月13日日曜日

コマンドのAI解釈


ソフトによっては機能が多すぎて、メニューの中を探すだけで一苦労、ということが増えてきた。画像編集、CADなどは特にそうだが、ワープロ程度であっても既に充分に多い。一度も使ったことのない機能も多々ある。

ソフトによってはメニューがカスタマイズできるものもあるが、その範囲は狭い。使用頻度によって並べ替えができるものも見受けられるが、こうなると常に位置が変わって使いづらいこともある。

映画の世界では、長年これを無視して見やすく見せてきた。映画の画面で出てくるコンピュータ操作のシーンは、殆どが本物ではなく、Flashなどで作ったデザイナー謹製のニセモノだ。デタラメにキーボードを叩いても正しいスペルで文字が入力できる、といったものも多いようだ。

GUIは少なく、CUI画面で「request secret data...」などと打つと、正しくこれを解釈してくれる。技術屋は「あんなコンピュータはないよ」といって酒の肴にしていた。その意味は、コマンドは定義済みのものを、パラメータ含め順番まで含めて正しくタイプしなければならない、ちょっとでも打ち間違えれば勿論、コマンド名すら間違っている、それをコンピュータが(いわば気を利かせて)正しく解釈してくれている、というものだった。だがAIが進化してくると、これも怪しくなってくる。

最終結果はともかく、CUI画面で適当に(曖昧な記憶のまま)打つだけで、インタラクティブにコンピュータが「気を利かせた」解釈をしてくれる、万一解釈できずエラーになってもリコメンドや「もしかして」をリストアップしてくれる、というのは、もう夢ではない。検索サイトがこれだけ賢くなってきた今、そのリンク先がコマンドであって悪い理由は何もない。

つまり、入力にCUIウィンドウがあって、検索対象がコマンド(例えば内部処理関数)であり、パラメータの設定も解釈して自動ではめ込み、考えられる処理の候補をリストで出す、というGoogleもどき画面を持つアプリケーションがあっても、もうおかしくない時代なのだ。更に言えば、そのリンクはダイレクトではなく、更に足りないパラメータをリクエストする画面につながり、しかもパラメータ毎のフォームをクリックするのではなく全部ベタ打ちにすると、解釈してどれがどのパラメータまで解釈してくれる、というところまで作ることは、今でも可能なはずだ。

映画やSFというのは、(自分はよく知らない)技術をネタに、こういう風に動くのだろう(動いて欲しい)ということを具現化している。技術が追いついてきたのであれば、それを推進しない手はない。

2016年11月12日土曜日

バカの壁と「不寛容」

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養老孟司氏の名書だ

いちばんキライなタイプが、以前も言った「中途半端な科学万能主義者」なのだが、この類の人の「バカの壁」が一番厚い。多くの場合説得は無駄で、諦めて黙って去るしかない。 養老氏の結論も「説得は不可能」であるので、まあ良いのだけれど。

実際に遭った経験だが、ゴミの焼却処分について、焼却ではなく冷凍で処分すべき、という主張をしている人がいた。液体窒素レベルまで冷やせば毒物は分解される、という話らしいのだが、これに対して経済性がない(高くつきすぎる)という反論をしたところ、怒ったこと怒ったこと。散々誹謗中傷を受けた挙句、「あなたとは話さない」と口を閉ざされてしまった。その間、論理的な反論は一切無し。

世の中にはこのように、「技術的には可能でも、費用が折り合わないので普及しない」ということは結構ある。だがこの人は、最初のアイデアがよほど輝いて見えたのだろう。そこで論理的に反論するのではなく、「怒る」という手段で壁を作ってしまったのだ。

技術には色々な段階がある。実験室レベルではできても量産に問題があるとか、量産はできるが価格が折り合わないとか、価格まで折り合うが慣習的・政治的に無理だとか。その全てをクリアしなければ世に出てくることはない。情熱で進めることはある程度できるにしても、ごり押しにも限度がある。ダメなものはダメだ。

技術に限らず、新興宗教や超常現象にのめり込む人なども同じ思考回路を持つように思える。以前も書いた電波恐怖症(電波アレルギーではなく)とか放射能恐怖症とか食品添加物恐怖症とかにもその匂いがする。逆に、それらを執拗に否定する人も同じだ。

最近の自分の中の仮説なのだが、そういった人に共通するのは、心理的なバランスがうまくいっていないのではないか、ということ。自分より頭が良い人が世の中には多くいることを知っている、人の批判やアドバイスを受け入れる素直さを持っている、うわべの過激な文句は無視して発言の本質を受け取る、反論のために(自分を守るために)反論するのではなく、自分の意見も含めて両者を冷静に考える、自分の意見と人の意見の違いを論理的に見つける、テクニックとしてしゃべり方への配慮を行う、ということができない。一言で言えば「不寛容な性格」だ。

不寛容な性格は、子供の「わがまま」の延長線上にある。年齢的には2才~10才くらいだろうか。この時期に、人は上に挙げたような寛容さを学ぶ。程度問題ではあるが、バカの壁が厚い人は幼児期の教育が上手くいっていなかったのではないか。

この教育は、学校ではなく、親の領分である。親が十分に親として育っていないと子供にも教えられない。また、こういう人たちは為政者のコントロールを受けやすいから、周りが気を付けてやらなければならない。そしてそのレベルは、あまり笑えない状況にまで来てしまっているように感じる。

一昔前に流行った「自己責任」はそのいい例だ。

2016年11月11日金曜日

読唇術


機械の読唇術精度が人間を遙かに上回る93.4%を達成

人間と拮抗するかどうか、というAI技術は多々あったが、人間を遥かに上回るという点では興味を引く記事だ。

これで直ぐに思いつくのは、監視カメラから会話が漏れる危険だ。例えば国会中継でこれを使われたら、議員同士のひそひそ話や、答弁における大臣と補佐の会話などが全て分かってしまう。国会中継ができなくなる可能性もある。

監視カメラがどこにあるかなど、普通は意識しないから、街中で普通に喋っていればその内容はばれてしまう。だから気にする人は、夏でもマスクをしなければならなくなる。

ただ、悪い面ばかりでもない。例えば遠くの人と話したいとき、カメラでズームできれば、マイクがなくてもお互いに会話できる。これは例えば、山の遭難者にヘリコプターで近づくときなどに応用できる。

もっと単純に、会議で議事録を起こすのに使う、というのはどうだろう。テレビ会議に限らず、あらゆる会議でカメラさえ持ち込んでおけば、誰が何を話したかを自動で記録する。国の諮問会議などでは、要約せず一字一句記録に残すような議事録がよく見かけられるが、これなら記事起こしの手間が掛からない。あるいは裁判における速記も不要になる(現状では法律で定められているので補助として使うか)。テレビで盲の人向けの字幕ボランティアがいるが、これにも使える。当然本家テレビが字幕放送をするのにも良い。

市販されているビデオカメラやケータイ・スマホのカメラにこの機能が付けば、また面白い応用が可能かもしれない。ホームパーティーや卒業式といったプライベートなイベントでもきちんと記録が残るなら、それはそれで嬉しいのではないだろうか。
 

2016年11月10日木曜日

新型たばこの三つの用途


新型たばこ、人気過熱=参入メーカー続々
電子タバコが普及しないのはなぜ?

新型たばこと呼ばれるたばこが増えてきているらしい。

調べてみると、賛否両論のようだが、賛成派の方が論理的に見える。たばこの不健康さは今のたばこに対してのものであって、新しい仕掛けには新しい目で見る必要があるが、どうも否定派は始めから色眼鏡で見ている感が強い。

個人的にはたばこ(つまりはニコチン)には興味がないのだが、この手の商品にはニコチンなしの、単なるフレーバーだけを楽しむものもあって、そちらには興味がある。

これを俯瞰してみると、「摂取するものが何か」と「摂取する手段」が分離し、その組み合わせ爆発が発生しているわけだ。嗜好品としてなら、例えばメンソールやコーヒーなど。あるいは喘息の吸入薬など、薬効を期待するもの。ニコチンのような弱麻薬性嗜好品、例えばアルコールや大麻(の特定の抽出成分)など。大きくはこの三つの用途が、新たに発生する。

喘息の吸入薬は既に存在しているのだから、カートリッジの規格を統一してこれに合わせてやってはどうか。また、今まで飲み薬として処方されてきたものでも、この方式にすれば子供でも摂取しやすいし、複数の薬を混ぜて一度に摂取することができる。

大人でも錠剤を飲むのが苦手な人はいるし、特に高齢者が大量の薬を飲むのに苦労しているのは、端で見ても大変だと思う。同時に摂取する大量の水のせいで水中毒にならないか、とすら心配になる。他にもスペースの節約になったり、機械(充電器)側にタイマーを載せて定期的な摂取を促したりと、色々な付加価値が期待できる。

また、最近話題の大麻解禁だが、これも調べてみると有効成分は複数あって、その効用や習慣性も様々だそうだ。だから本当に安全なものも中にはあるのだろうが、一緒くたにされて否定されているので研究が進まない、という側面もあるらしい。これも、大麻そのままではなく、成分分離した上で安全なもののみをカートリッジに納めることにより、たばこより害のない嗜好品が作ることはできるのではないか、と思う。

新型たばこは周りに煙を撒き散らさないから、周囲に迷惑を掛けることはない。酔って暴れられる危険のある酒の方が、むしろ規制されるべき対象になる、という未来も想像できる。

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2016年11月9日水曜日

日本版スリングショット検討


ディーン・ケーメン氏が発明した蒸留式浄水器「スリングショット」は、単に浄水と汚水を触れさせることで熱交換をしているようだが、ヒートポンプを使ってもっと積極的な熱交換ができないだろうか。

ツインバード工業が、FPSCと呼ばれるクーラーユニットを製造している。動作想定温度範囲が違うのでそのままでは使えないだろうが、これを改造して応用することを考える。

このユニットは、上部に吸熱部、そのすぐ下に排熱部がある構造だ。排熱部は空冷であり、温度想定はない。この排熱部に蒸発槽を取り付ける。

蒸発槽には液面センサがあり、下から汚水を一定の高さになるまで押し上げるポンプを持つ。汚水の水位センサは2段階あり、下のセンサ以下の水位ではヒートポンプ(クーラーユニット)は作動しない。上のセンサは汚水の押し上げ上限を示すもので、ここに達すると押し上げポンプは停止する。そしてこの中間に、蒸発で残った濃い汚水を排水する穴がある。

濃い汚水はこのままでは高温なので、吸熱部からヒートパイプで熱を誘導して冷却する。理想的には室温程度まで冷やす。一方、蒸気は上に誘導されて同じく冷却され水に戻る。

汚水及び蒸留水の加熱と冷却にはラジエーターを使いたいところだが、水に直接触れるようにしてはならない。水に濡れる部分が複雑だと、例えば汚水側ではカスがこびりついたり、蒸留水側ではカビが生えるなど、つまりメンテナンスが大変になる。

こうして作った浄水器の本家スリングショットに対する特徴は、多少構造が複雑になり、つまり故障はしやすくなる代わりに、エネルギー効率が高いだろう、ということだ。ヒーターに比べてヒートポンプの熱効率が10倍あるとして、消費電力は本家の1/10だから、だいたい同じくらいの浄水能力があることになる。この電力なら、屋台で使うような発電機1台で有り余る。バッテリーでも動かせる。

また、逆浸透膜や中空糸膜に比べると、浄水能力(スピード)は劣り、電力が必要な点も劣るが、メンテナンス性が圧倒的に勝る。故障しない限りはノーメンテナンスで、基本的に消耗品はない。分解掃除もめったに必要ない。

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2016年11月8日火曜日

なぜ指紋認証?

個人的に、指紋認証は全く信用していない。手元にあるスマホにも指紋認証機能があるが、使っていない。なのになぜ、巷では未だに指紋認証の新製品が出るほど人気なのだろうか、大いに疑問だ。

信用していない理由は、指紋はそこら辺から幾らでも採取可能だからだ。つまり鍵をあちこちにばらまいているのとかわらない。極端な話、そのモノ(例えばスマホのボディ)は指紋だらけだ。採取した指紋からロックを解除するなど、小学生でもできる。

虹彩認証は少し難しくなる。これはターゲットを高解像度カメラで撮影する必要があり、更には明暗による生体認識もある。それでも回避は可能だが、ウィルスのように手間を掛けずに解除することはできないから、犯罪者側もそれなりの覚悟と準備が必要な点で信頼できる。

網膜認証や静脈認証は理想に近い。ターゲット機器に近接しなければ測定できないからだ。網膜認証は機器が大げさだが、指静脈や手のひら静脈はもう実用化されている。

これらの認証方式はどれも既に発明されてから時間が経っており、指紋は淘汰されるものと思っていた。だが実態はこれだ。一体技術者は、あるいは世の中は、何を考えているんだろう。

指紋認証をするくらいだったらデバイス認証の方がよっぽど筋が良い。キーホルダー型のBluetoothドングルを一つ作っておけば、スマホでもPCでも対応できる。技術的な障壁は何もなく、またマイナーなベンダからはそういうソフトも出ているのに、一向にメジャーになる気配がない。

スマホでパターンロックやパスワードを掛けている人すら少数派だが、それでも例えば電車の中や街中でロックを解除すると、横から覗き見されたり、監視カメラに映っていたりしたら終わりだ。少々長くしていても使えない。

Windows 10のPINもダメだと思う。Windows Helloは良さそうだが、本体に内蔵した機器は殆どない。キャッシュカードの4桁の暗証番号など、恐ろしくて堪らない。
ここら辺の感覚は、自分と常人とはかけ離れているのかもしれない。


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2016年11月7日月曜日

ジョギングの科学

ランニング雑誌を見ていると色々と書いてあることはまあ知っているが、一冊買ってみて「見切った」と思ってからは参考にしていない。

元々競技に出るつもりはないので、細かいテクニックは必要ないし覚える気もない。一方で、フォームには気を付けている。これができていないランナーは意外に多く、近所のランニングコースでも、何年も走っているのにフォームの崩れが全然直っていない人の多いのには驚く。

ごく単純な話、ランニングというのは、重さ60kgの重りを如何に速く移動させるか、という競技だ。それを動かす原動力は筋肉であり、筋肉は部位によって方向と強度が違い、収縮という一方向の力しか出せない。ここから物理の法則で演繹をしていけば、理想のフォームは自然と明らかになる。

その基本原理は、余計なブレを出さない、ということだ。その重りをまっすぐ前に進めること。左右上下方向への移動、及び傾きをできるだけ少なくすることがその一。その二は、筋肉の収縮の方向の無駄をなくすことだ。

体の重心は丹田の付近にあるから、これが左右上下にぶれず、すーっと前に進むように走る。この方法論からいくと、ストライドよりピッチ走法の方が理にかなっている。腰をひねることで距離を稼ぐ、という方法は、進む方向に対して垂直な動きではないので、長期的にはエネルギーと酸素を浪費し、距離の割に早く疲れることになる。

また、腕を大きく振るのは無駄だ。腕の振りは前進への力とは関係ないから、重心のバランスをとる最低限の動きでよい。肩が大きく前後し、上半身をひねるような動きも同様、エネルギーの無駄になる。

前へ進む原動力は足の筋肉だが、これも左右方向の動きは無駄だ。着地にしても蹴りだしにしても、前後の方向に限定するような動きが必要で、斜めになったり捻ったりしている動きは抑えるようにする。もちろん重心は足の真下にはないから、左右のブレを防ぐために最低限の斜め方向の力は必要になる。

左右の動きが対称になっていない人も多いが、これも改めよう。もともと現代人は体の動きが少なく、例えば立っているときに均等に左右に体重をかける人は少ないなど、体が偏りがちだ。ランニングのとき位は意識して補正しよう。左右の筋肉のバランスが悪いと体に余計な負担がかかり、早く疲れることになる。

これらは結果的に、「ナンバ走り」に似てくる(腕の振りは逆だが)。甲野善紀氏の古武道の本を読んだことがあるが、結局あれも「科学的」な動きなのだろう。

また、ウォーミングアップやストレッチについても、一般論とは異なり何もしていない。体を激しく動かすサッカーやバスケットなどでは知らないが、一人でやるジョギングのような運動では必要ない、というのが自分の理論だ。

トレイルランニングならともかく、都会のアスファルトの上を走るのだし、自分でスピードを制御できるのだから、急に激しく腱が伸びる動作など考えられないし、例えばつまづいたり飛び出しに対応するような運動の程度でも体を痛めるというのなら、それは日常道を歩いていてもある可能性だ。

また、そもそもゆっくり走り始めればウォーミングアップを兼ねることができる。10分も走っていれば体は温まってくる。ウォーミングアップの目的は筋肉や腱を温めて血液やリンパ液などの流れをスムースにすることだが、これを走ることで行ってはいけないということはないはずだ。そもそもウォーミングアップ自体、運動なのだから。

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