2018年3月11日日曜日
レイバーの時代は来るか
「機動警察パトレイバー」の世界では、巨大ロボット「レイバー」が、主に建築などの重機の代替として活躍している。必ずしも人型ではないにしても、だいぶロボット然とした機械が多数うごめくような世界は来るのだろうか、考えてみた。
現在の建築機械の多くは、現在の技術や社会の中で最適化されている、と見るのが普通だ。例えばクレーンはクレーンの仕事をするのに最適化されていて、クレーンをレイバーで代替できるかと言えば困難だろう。それが小型のユンボなどだとしても同じだ。ましてやトラックとの代替など考えられない。
ではどんなところなら使えるのだろうかと考えてみると、主な条件は「足場固めが不要」「段取りが不要」「作業の性質が臨機応変に変わる」というところだろう。例えば穴を掘り続けるならショベルがあればよいが、穴を掘ったら直ぐに土留めを打って、次に鉄筋を這わせて・・・というのを順番に行うなら、レイバーの方が有利だ。あるいはクレーンの方が効率的でも、まず全部吊り上げてから、とするよりは、逐次作りながら手で運んだ方が安価になる場合もあるだろう。
つまり、レイバーの登場は、建築の段取りを根本的に変える可能性がある、ということだ。何か一つの作業が終わらないと次が始まらない前提ではなく、さまざまなことを同時並行で行う前提で計画を組むことができるのなら、そのようなやり方もある。
ただ、そのような場合でも、レイバーの大きさはせいぜい2mが限度で、人が乗り込むことも操縦することもできず、AIで自律制御するということになるはずだ。多くの建築は人のサイズに合わせてあるから、例えば内装をするのに4mの高さは必要ない。
それが考えられるのは、ダムや展示場、橋、トンネル、高架道路のような、人が介在しない巨大な建造物だ。ただ、そのようなところでは大量の機械がうごめくことになるので、汎用機械の出番はあまりないように思う。多くの場合は、土を掘って型枠を設置し鉄筋を配してコンクリートを流し込む、という作業の繰り返しだろう。二本腕があった方がやりやすい場面はあるかもしれないが、大部分は今の機械の延長上になるのではないか。
パトレイバーにも出てきたが、戦闘ロボットというのも考えてみたい。ここでもロボット同士のバトルというのは考え辛いと思う。移動スピードが遅く人が乗っているロボットは、攻撃されやすく守りにくい。戦車のように強固な装甲があって足だけがムカデ、というのは考えられるが、それはむしろ補助であって、メインはキャタピラだろう。建物への突撃なら、やはり2m以下のロボットかドローンということになる。
残るのは、真空の宇宙や深海、高熱、高放射線下などの過酷な状況下での汎用機械としての位置付けだ。そしてこれも、レイバーというよりはロボットの仕事になるだろう。
結論としては、レイバーがうごめく社会というのは、将来的にも望み薄だ。ロボット好きとしては少々寂しい限りである。
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